本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(116)
- 2016年 3月 22日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
激減した「政府短期証券」の残高
「2月10日」に発表された「日本政府の国債残高」では、「政府証券(FB)の残高」が、「約30兆円」も減少し、「約87兆円」となっているが、このことも、「マイナス金利の弊害」とも考えられるようである。つまり、「短期資金の出し手」が少なくなった結果として、残高が急減したようにも思われるが、かりに、この傾向が続くようだと、今後は、「外為特会」に、思わぬ影響が出る可能性もあるようだ。
つまり、「外為特会」については、基本的に、「財務省が政府短期証券を発行し、その資金で、為替の介入を行うための特別会計」であり、「平成27年3月31日」においては、「有価証券の残高」が「約128兆円」の規模にまで膨らんでいるのである。つまり、数年前まで実施された「円売り、ドル買いの為替介入」により、「米国債」を中心にして、有価証券の残高が膨らんだものと思われるが、現在では、この点に、問題が起こる可能性が高まっているのである。
具体的には、「政府短期証券の残高」が急減すると、「保有中の米国債」を売却せざるを得なくなる可能性のことだが、かりに、この方法が実施されると、「世界の債券市場に、大きな影響を与える状況」も予想されるのである。つまり、「日本政府が、米国債を売却する」というようなニュースが流れると、世界的な「国債価格の暴落」が起こる可能性が存在するからだが、このことを防ぐためには、「外為特会」が、何らかの方法で、資金の調達に迫られる状況も考えられるのである。
そして、このような「資金調達の問題」については、「日銀」も、同様に悩まされているようだが、今回の「マイナス金利」については、結局のところ、「自殺的な行為」だった可能性が存在するようだ。つまり、「北朝鮮のミサイル実験」と同様に、「自分の首を絞めただけだった可能性」のことだが、実際には、今までの「問題の先送り」に関して、限界点が近付いていることを証明するような出来事だったようにも思われるのである。
より具体的には、「日銀のバランスシート」を大膨張させながら、「国債の買い支え」を実施することには、現在、大きな「矛盾」が存在するものと考えているが、基本的に、「日銀のバランスシート膨張」は、「通貨の堕落」を意味し、「円安要因」とも言えるからである。また、「国債の買い支え」に関しては、「超低金利状態」を維持する目的があるようだが、この時の問題点は、「円安による輸入物価の上昇」であり、今回は、この点に関して、「外為特会」から問題が発生したようにも感じられるのである。(2016.2.22)
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北朝鮮の苦境
「北朝鮮に対する経済制裁」が、着々と実施されているが、具体的には、「ケソン工業団地の業務停止」に加えて、「中国が、北朝鮮からの石炭輸入を停止する」との報道のことである。また、「日本独自の経済制裁」が実施され、「米国」が「国連安保理に、前例のない厳しい制裁決議案を提出した」とも報道されているが、今回の制裁については、さすがに、「金正恩体制」に対して、極めて大きな打撃になるようである。
その結果として、「三代続いてきた、国家の世襲」が崩壊する可能性もあるようだが、この点については、典型的な「売り家と唐様で書く三代目」の状況ともいえるようである。つまり、「創業者」は、概ね、「苦労と努力の末に、新たな企業や組織を立ち上げる場合」が多いのだが、「二代目」になると、「半分が努力、半分が既得権」というような状況になることが考えられるのである。
そして、「三代目」については、現在の北朝鮮からも明らかなように、「全てが既得権」であり、また、その上に、「国民のことを考えずに、自分のやりたい放題の政策を実施している状況」とも考えられるのである。その結果として、冒頭の、「世界各国からの経済制裁」が実施されることとなったのだが、この時に、最も苦しむと思われるのは、やはり、「一般大衆」とも考えられるのである。
具体的には、「物資の枯渇」による「物価の暴騰」や、あるいは、「食糧難」なども予想されるのだが、同時に考えなければいけない点は、「国民の不満」が、「今後、どのような高まりを見せるのか?」という点でもあるようだ。つまり、今までは、「恐怖政治」に怯えて、「表面的な従順性」が表に出てきた可能性があるようだが、今後は、反対に、「今までの欝憤(うっぷん)」が、一挙に表面化する可能性も存在するからだ。
具体的には、「1989年のルーマニア」のように、「当時のチャウシェスク大統領夫妻が、公開銃殺された」というような事件が起こる可能性のことだが、基本的には、「権力者」が、「自分勝手の行動」をとった場合に、ほぼ例外なく、「民衆からの反発が起こる」ということが、「歴史の教訓」とも言えるのである。そして、この点については、「日本」も、決して、例外ではないものと考えているが、特に、「国債価格の暴落」が始まった時には、「国家財政」のみならず、「年金」や「健康保険」も破たんする可能性が存在するのである。つまり、そのような状況下で、「現代の日本人」が、どれほどの「不満」を持ち、どのような行動に出るのかが、大変気にかかるのである。(2016.2.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5986:160322〕
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