「松野町夫氏の『「権利」→「権理」』論
- 2011年 2月 2日
- 交流の広場
松野町夫氏の「権利」→「権理」論を興味深く読みました。
「権」の第一義は、はかりのおもり、つまり重さの基準であり、「権度」といえば、はかりとものさし、のり、規則を意味しますから、rightの訳語の一部としてこの字が選ばれたのかもしれません。「利」が選ばれたのは、利が人々の間の争いの要であって、諸利の争いを法的におさめるには、基準となる利、正当性のある利という観念が不可欠である、とrightの最初の訳者は、考えたのかもしれません。
「利」を「理」に変更すれば、「理科」や「理系」というように、あらかじめ筋道や道理に乱れがない、まっすぐな世界をイメージさせます。rightの直訳としてはこの方が正しいでしょう。しかし、ヨーロッパの実利世界でright概念が果たしている役割は、意訳の「権利」によってよく表現されているかもしれません。
ところで、日本常民社会が生み出したユニークな社会思想家村岡到氏は、長年、自己の諸著書の中で「権理」という訳語・用語を自覚的に用い続けております。『連帯社会主義への政治理論』(五月書房、pp.165-178、2001年)を参照。
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