9条改定反対派が多数派に - 新聞・テレビの世論調査で -
- 2016年 5月 10日
- 時代をみる
- 岩垂 弘改憲
今や憲法に関する民意の大勢は明白である。一言でいえば、改憲については「反対」「賛成」が拮抗しているものの、日本国憲法の眼目である第9条(戦争の放棄、軍備及び交戦権の否認)については、改定反対派が多数を占めるということだ。5月3日の憲法記念日にちなんでマスメディアが行った憲法に関する全国世論調査の結果から、そうした民意の全体像が浮かび上がった。
今年に入ってから行われた新聞社、テレビ局の憲法に関する世論調査結果を見てみよう。
まず、朝日新聞の「憲法に関する全国世論調査」(3月16日~4月25日、郵送)の結果から。
「いまの憲法を変える必要があると思いますか。変える必要はないと思いますか」との質問に対しては、「変える必要がない」55%、「変える必要がある」37%。
「憲法第9条を変えるほうがよいと思いますか。変えないほうがよいと思いますか」との質問に対しては、「変えないほうがよい」68%、「変えるほうがよい」27%。
次は、日本経済新聞社とテレビ東京による世論調査(4月29日~5月1日、18歳以上が対象、電話)の結果。
憲法について「現在のままでよい」50%。「改正すべきだ」40%。
NHKの世論調査(4月15日~17日、18歳以上が対象、電話)の結果はこうだ。
「今の憲法を改正する必要があると思うか」との質問に対し、「改正する必要はないと思う」31%、「改正する必要があると思う」27%、「どちらともいえない」38%。
読売新聞が行った「憲法に関する全国世論調査」(1月下旬~2月下旬、郵送)の結果はこうだった。
憲法を「改正しないほうがよい」50%、「改正する方がよい」49%。
憲法第9条については、「これまで通り、解釈や運用で対応する」38%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、第9条を改正する」35%、「第9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない」23%。
毎日新聞の全国世論調査(4月16~17日、18歳以上が対象、電話)の結果は以下の通り。
「憲法を改正すべきだと思いますか、思いませんか」との質問に対しては、「思わない」42%、「思う」42%。
「憲法9条を改正すべきだと思いますか、思いませんか」との質問に対しては、「思わない」52%、「思う」27%。
最後に、産経新聞とFNNによる「政治に関する世論調査」(4月23日~24日、18歳以上が対象、電話)の結果を紹介しよう。
「あなたは憲法改正に賛成ですか、反対ですか」との質問に対しては、「賛成」45・5%、「反対」45・5%、「わからない・どちらともいえない」9・0%。
「あなたは今の憲法で、日本の平和と安全が今後もずっと守れると思いますか、思いませんか」との質問には、「思わない」52・1%、「思う」37・8%、「わからない・どちらともいえない」10・1%
要するに、朝日、日経・東京テレビの調査では、改憲反対派ないし現状維持派が国民の過半数を占め、NHK調査では改憲反対派が改憲賛成派を上回る。読売、毎日、産経、・FNNの各調査では、改憲反対派と改憲賛成派が拮抗してということだろう。賛成派が反対派を上回ったところは一つもない。こうした調査結果を見ると、国民は、早急な改憲など望んでいないことがよく分かる。
一方、9条改定について聞いているのは3社だが、朝日調査では、「9条改定反対」が68%という高率を示し、毎日調査は52%。読売調査も「解釈や運用で対応するのは限界なので、第9条を改正する」は35%に止まり、「これまで通り、解釈や運用で対応する」が38% で第1位である。これらの数字から見て、「9条堅持」が国民の多数派であると見て間違いない。
それから、世論調査結果を伝える各紙の報道は、注目すべき事実を伝えている。
5月3日付の朝日新聞には、こんなくだりがある。「憲法を『変える必要はない』が昨年の調査の48%から55%に増え、『変える必要がある』は昨年の43%から37%に減った」「憲法改正については、2014年の郵送調査から『必要はない』が『必要がある』を上回っており、その差は今回さらに開いた」
同日付の日経新聞は、こう書く。「憲法について『現在のままでよい』との回答が50%となった」「15年4月に『現在のままでよい』(44%)が『改正すべきだ』(42%)を逆転。今回、現状維持が初めて5割に達した」
読売新聞も3月17日付紙面でこう書いていた。「憲法を『改正する方がよい』との回答は49%で、『改正しない方がよい』の50%をわずかに下回って拮抗した。昨年調査(郵送方式)では『する方がよい』は51%、『しない方がよい』は46%だった」。逆転である。
つまり、2014年あたりから、改憲反対派や現状維持派が年ごとに増えているのだ。これは、まさに注目すべき変化と言える。
こうした変化をもたらしつつある原因は果たして何か。それは、これまでの自民党政権が堅持してきた方針を覆すために集団的自衛権行使を容認する閣議決定をしたり、集団的自衛権行使を可能にする安保関連法を強行採決で成立させたり、果ては、来る参院選で改憲勢力で改憲発議に必要な3分の2を確保したいと公言するなど、改憲路線を邁進する安倍首相の前のめり姿勢が、国民の間に不安感や警戒感を醸成しつつあるからだと思われる。
これを裏付けるような世論調査結果もある。共同通信が4月29、30両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍首相の下での憲法改正に「反対」が56・5%、「賛成」が33・4%で、反対が賛成を大きく上回った。
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