自民党の参院選公約、本当のところを語りましょう。
- 2016年 6月 6日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
自民党を代表いたしまして、2016年参院選(第24回)公約のエッセンスをかいつまんで解説申し上げます。
申し遅れましたが、わたくしアベ・シンゾーと申します。恥ずかしながら、自民党の総裁であり、日本のソーリ大臣でもあります(「そのとおり。全く恥ずかしい」と不規則発言する者あり。)。総裁はともかく、大臣って天皇の筆頭格の家来という意味。わたくし、陛下の臣であることを身に余る光栄と存じております。「ダイジン」、あるいは「おとど」って、とてもすばらしい響きではありませんか。誰がなんと言おうと、天皇あっての日本、天皇のための日本というのが私の信念。臣民一億総員が火の玉となって御稜威を輝やかせる、これが神武以来の我が国の国柄にほかなりません。今は、戦争に負けて、心ならずもGHQに押しつけられた「日本国憲法」によって、個人主義だの、自由主義だのがはびこる世になっていますが、これに終止符を打つための憲法改正が私の使命。そうして、本来の国柄とそれにふさわしい日本を取り戻すことができれば、私の本望とするところ。今回の参院選の公約の眼目は、実はこの点にあるのです。
私が使命とする憲法改正は、容易な企てではありません。GHQの陰謀に洗脳された一億総平和惚け国民の目を覚まして、日本人としての自覚を呼び起こすことなのですから、言わば国民の精神革命が不可欠なのです(「革命ではなく、反革命だろう」と不規則発言する者あり。)。
上ご一人に率いられた万邦無比の國体は金甌無欠、過去に間違ったことをしたはずはありません。特に、過ぐる大東亜戦争を、侵略戦争だの帝国主義戦争だなどとことさらに神州日本を貶めることは許せません。さらには、こともあろうに靖国に鎮まる護国の神々が皇軍の兵として活躍していた時代に、従軍慰安婦を辱めたなどと濡れ衣を着せるような、自虐史観を払拭しなければなりません。
皇国の富国強兵の必要を忘れて、平和主義などとうつつを抜かす輩に国防の精神を叩き込まねばなりません。精強なる国家を再興するためには、月々火水木金々の精神で文句を言わない勤労の精神を注入しなければなりません。個人の権利だとか、自由などを口にする前に、滅私奉公を行動で示すことを叩き込まねばなりません。
天皇を中心として一億国民が総結集することで、国は強くなり、国が栄えます。国防の武威あって初めて国民の安全が確保されます。国富が充実して初めて国民の経済も潤います。国が強く栄えずして、個人の幸せはあり得ません。「まずなによりもお国のため」「個人の利益は後回し」を徹底する国柄を作らねばならないのです。この精神は、自民党が下野していた時代に作った「自民党・日本国憲法改正草案」にしっかりと書き込んであります。
しかし、今述べたような私の本心を赤裸々に語っては、今の国民に受け容れてもらえないことは、よく承知しています。ですからどうするか。そりゃ決まっています。欺すのです。
世の中では、「嘘はいけないこと」とされていますが、政治は違います。なんのために政治はあるのか、立派な国を作り、そのことによって国民を幸せにすることなのですから、国民を幸せにするための嘘は許される。これがわたくしの強固な信念です。普通の人は、なかなかウソをつけない。それでは政治家失格です。私のように、政治家稼業三代目ともなれば、嘘をつく能力は生得のものとなっています。DNAに組み込まれているのです。
だから、「アンダーコントロール」で、「完全にブロックされています」と、平気で大ウソをついて、東京オリンピック誘致を成功させたではありませんか。もちろんあれは嘘です。でも、それでみんながハッピーになったのだから、なんの問題がありましょうか。
今回の参議院選公約もまったく同様なのです。本当の狙いは、憲法改正にあります。でも、そうあからさまには言わないのです。まずは、国民を欺して改憲に必要な議席をとること。議席をとってしまえば、しめたもの。そのあとに、国民の信任を受けたと言って、憲法改正に踏み切るのです。これが、作戦なのです(「ずるいぞアベ」と不規則発言する者多数あり)。
だから、マスコミ向けの記者会見では、「アベノミクスを加速するか、後戻りするか。これが最大の争点だ」と言っているのです。でも、ご存じのとおり、アベノミクスは、議席獲得のための手段、本当の目的は改憲の実現です。そんなことはお分かりでしょう。改憲が將、経済は馬。改憲を射んとして、まずはアベノミクスの矢を放っているのです。
もう、公然の秘密ですが、改憲を訴えれば票が逃げます。「改憲は自民党の党是。隠しているわけではないが、今は声を潜めた方がいい。参院で3分の2が取れたら改憲に動き出す。それが政治の世界」なのです。
良賈は深く蔵して虚しきが如し、というではありませんか。能あるシンゾーは、改憲の爪を隠しているのです。「選挙戦で改憲を訴えるつもりはありません。他にも訴えるべきことがあります」。これが、私のスタンス。
わたくしは、普段は産経新聞しか読まないのですが、本日(6月5日)の毎日新聞の切り抜きを見せられました。菅野完という人がズバリこう言っていますね。
「安倍晋三首相は憲法改正を目指しているが、選挙では経済政策アベノミクスや消費増税延期が与党の主張の前面に出て、憲法はかすんでしまうだろう」「選挙で憲法が争点にならなかったとしても、改憲勢力が参院で3分の2以上の議席を占めれば、首相が『民意を得た』と改憲に向けて動き出すだろう。これは2014年衆院選の自民党公約に小さく書き込んだだけの『安全保障法制の速やかな整備』に、翌年から積極的に取り組んだのと同じだ」「改憲の狙いは、まずは護憲派が想定する9条ではなく、『緊急事態条項』の創設や、伝統的家族観をうたう『家族条項』などがクローズアップされてくるはずだ」と。
菅野は、「有権者やメディアはこうした欺きを指摘しなければならない。安倍政権は憲法の何を変えようとしているのか。選挙の前に手の内を明かせと言う必要がある。」と言っていますが、わたくしが簡単に嘘を嘘と言うはずはありません。手の内を明かしてしまえば、マジックは成り立ちません。所詮は、シンゾー流ダマシのテクニックを皆さんに楽しんでいただきたいのです。
「人はパンのみにて生くるにあらず。政治は真のみにて成り立つにあらず。」
自民党の参院選公約とは、そんなものなのです。(「引っ込め、シンゾー」と不規則発言する者甚だ多く、以下聴取不能。)
(2016年6月5日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2016.6.05より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=6979
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye3477:160606〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。