相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」殺傷事件に対する7月緊急声明
- 2016年 8月 9日
- 交流の広場
- 特定非営利活動法人共同連
私たち共同連は、障害ある人ない人が共に働き・共に生きることをめざし、自らの能力と特性にあわせた社会目的をもった非営利の「社会的事業所」づくりの運動を、1984年から進めている団体です。
「障害者は生きる価値がない」「安楽死が必要」「税金の無駄使い」「ヒトラー思想が2週間前に降りてきた」として、重度重複障害者を殺傷した事件に対し、われわれは言葉には言い尽くせないほどの怒りと衝撃をもって糾弾する。それは、すべての障害者に対して向けられた全存在の否定の攻撃だからである。断じて許すわけにはいかない。
だが、今はまだこの事件の全貌が明らかになっていない。事件の闇の深さを現段階では十分知ることはできない。したがって、ここに「7月緊急声明」を発することに留まらざるをえない。
かつて、石原慎太郎東京都知事(当時)が重度心身障害者施設都立府中療育センターを訪問した際、「ああいう人ってのは人格あるのかね 」と感想をもらした。また、地域住民の同意を必要とする自治体「要綱」は撤廃されたものの、障害者の作業所やグループホームを設置するにあたっては、今なお地域住民の反対運動は根強い所もある。それは障害者を隣人として迎え入れない、いわば「抹殺」しているに等しいのではなかろうか。事件と日常生活を同次元の問題にひきつけて考察しなければならない。「津久井やまゆり園」殺傷事件に対し、善良な多くの国民は憤怒をもって受けとめた。だが、すべてが、われわれの日常生活につながっていることにも気づかなければならない。
かつて、われわれは苦い経験をした。1964年に起きたライシャワー米大使の傷害事件である。犯人は、松沢精神病院に通院していた患者であった。彼は反米右翼思想の持主だった。にもかかわらず、政府やマスメディアは精神病者ゆえの事件として取り上げ、日米の外交問題を政治的に回避した。以後、民間の精神病院が次々と造られる方向に進み、いわば保安処分的社会防衛の措置がとられた。だが、今回の事件はまたそれとも意想を異にしている。
容疑者は措置入院の経歴があり、大麻薬物依存症者、そして被害者もまた障害者である。
政府は関係閣僚会議で措置入院のあり方を再検討することを示し、そして現状の医療観察法、社会復帰に努力しているダルクの存在、障害者を20万人ジェノサイドしたといわれるヒトラーの優生思想、さらに激しさを増してきたヘイトスピーチ、こうした現実の状況のなかで、われわれは、事の本質と原因を明確に見定めなければならない。そのためにはもう少し時間を要するし、議論を深めなければならない。世の中を誤りなき方向へ導くために。
われわれは、唾棄すべきおぞましい事件を心底から弾劾・糾弾することをここに表明する。
7月30日
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