ワルシャワの抗議テント
- 2016年 8月 14日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
7月下旬ポーランドの首都ワルシャワで偶然「テント村」と言うか、「テント広場」と言うか、東京の経産省脇のそれに似た光景に出会った。
ワルシャワにワジェンキ公園なるショパンにゆかりある大きな公園がある。それに平行して大通りがあって、アレイェ・ウヤズドフスキと言う。広い大路をはさんで、公園の向こう側にポーランド首相府がある。アレイェ・ウヤズドフスキ通りは、広い車道があり、その両側にこれまた広い並木道の歩道がある。公園側の並木道の木と木の間に三ヶ所、三つのテントが首相府に向って建てられていた。
何事か、と近付いてみると、「憲法を守る抗議ピケット」Pikieta w Obronie Konstytucji である。「PiS(「法と正義」)政権は、自分達が宣誓した憲法を守れ」と言う要求がかかげられている。
テント脇の机においてあるビラをとって読む。「抗議ピケは今年の3月10日以来中断なく続いている。法の支配が回復される日まで続くであろう。」とある。ポーランド憲法問題の内容に関しては、知識不足の故にここでは述べない。私の感じた二点を記すにとどめる。
日本の首都における経産省脇反原発テントとの間に二つの差がある。
両者ともに天下の大義の実現を求める抗議である点で共通である。
第一の差。東京の場合は、市民の日常行動・日常業務に支障をきたさないように、歩道上にではなく、そこから少々引き下がったポケット・パークなる空地に建てられている。ワルシャワの場合、並木の間であるとは言え、市民が歩行する歩道上に堂々と建てられている。
反原発テントの合法性主張の法理的根拠であるエンキャンプメント、encampmentは、場所がポケット・パークである点に一つの力点をおいていたように思われる。
ワルシャワの場合は、歩道上にすでに5ヶ月テントを設置している。この場合でもencampment権は主張できるのであろうか。ポーランド人の抗議行動の法理を知りたい所である。PiS政権は憲法を破っているのだから、自分達が道路交通法を破っていることなんか、大違・大罪の前では微違・微罪だと言う法理か。
第二の差。公権力側は、当然警察力でもって監視する。東京の場合、私がテントを何回か訪ねた時に、制服警官がテント近辺をパトロールしている姿を見たことがない。ワルシャワの場合、私が偶然テントに出会った時、テントのすぐ近くを二人の制服警官がパトロールしており、しかも自動小銃で武装していた。20世紀末、1990年代旧ユーゴスラヴィア多民族戦争で親しくなった銃口ではあるが、平和なワジェンキ公園のすぐそばで銃口を見るのは、あまり嬉しくなかった。
平成28年8月14日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6215:160814〕
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