マイナンバーその後 、保険会社からマイナンバー申告書類が届く
- 2016年 8月 15日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子・歌人
8月の中旬に入って、私のところに生命保険会社から、次のようなマイナンバー申告の「ご案内」の書類と「お願い」のチラシが届いた。もちろん申告は任意で不要なのだが、下記の「ご案内」と「お願い」の中の文言が気になり、問い合わせ先に電話した。
①「個人番号(マイナンバー)・法人番号申告のご案内」
その冒頭はあいさつ文だが、上記のタイトルのもと「個人番号(マイナンバー)・法人番号申告のお願い」の題のもとに、次のように記されている。
「このたび、『社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)』が導入され、生命保険会社は税務署などに提出する支払調書にお客様の個人番号(マイナンバー)・法人番号を記載することが定められました。つきましては、個人番号(マイナンバー)・法人番号の申告をお願いいたします」
②「個人番号(マイナンバー)・法人番号申告に関するお願い」
これは①の『ご案内』の説明チラシの位置づけのようである。最上段には次のように記され、申告方法や利用目的などが続き、裏面には、「個人のお客様の番号申告の流れ」が大きく図示されている。
「社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の導入により、生命保険会社では税務署等に提出する支払調書にお客様の個人番号(マイナンバー)・法人番号を記載することが義務づけられています。つきましては、お客様の個人番号(マイナンバー)・法人番号を当社あてに申告ください」
善良な市民だと、手続きの流れに沿って、マイナンバーの通知書、マイナンバーカードのコピーを張り付け、本人確認の写真付き証明書か写真がないものは2種 類の証明書のコピーを貼付することになるだろう。これって、マイナンバーと個人情報満載の証明書情報もあわせて、保険会社はゲットできることになる。これ らのセキュリティの甘さは、これまでも、なんど頭を下げられてきたことか。IT社会における情報漏れ防止の担保の難しさを、私たちは学んできたはずであ る。 安易に個人情報をばらまいてはいけないと思う。
ところで、この二つの①「ご案内」と②「お願い」文書の文章の微妙な違いに着目してほしい。①「ご案内」では、「生命保険会社は…記載することが定められ ました」「申告をお願いします」となっているのが、②チラシ「お願い」では「生命保険会社では・・・記載することが義務付けられています」「申告くださ い」と②チラシ「お願い」の方が強い口調になっている。「義務」は、どう読んでみても生命保険会社の「義務」としか読めないのであるが、一読、いかにも保 険加入者に「義務」づけられているから「申告ください」と促しているようにも読める。ウカウカと誘導に乗ってはいけない。
あらためて、問い合わせ先に、確認してみる。
Q 私たち顧客には、義務はないはずですが、いただいた文書には、紛らわしいところがありますね。
A 申し訳ありません。会社には「支払調書」にマイナンバーの記載が義務付けられていますが、お客様の義務ではありせん。
Q マイナンバーの申告は、お客の任意であって、義務でないということがどこにも書かれていませんが、書類には、しっかりと明記してほしいです。
A 申し訳ありません。そのようなご意見があったことは上司に伝えます。
Q 確認ですが、マイナンバーを申告しなかったことにより、サービスに支障がありますか。
A まったくございません。
なお、ネット上で調べてみると、私のかかわる保険会社ではなかったが、他の保険会社の「マイナンバー申告のお願い」にあたるお知らせの中に、例えば、「よくある質問」としてQ&Aのコーナーを設けて、つぎのような問答が記されていた。これとて、必ずしも正確な情報ではないが、こうした問答を載せることによって、 お客には、マイナンバーについて考える時間や余裕が生じるはずである。
<エヌエヌ生命>https://www.nnlife.co.jp/aboutmynumber
Q.マイナンバー(個人番号)を申告しないとどうなりますか?
A.マイナンバー(個人番号)をご申告されない場合でも、年金やその他の保険契約に基づくお支払手続きに支障はございませんが、保険会社には支払調書にマイナンバー(個人番号)を記載する義務がございますので、なにとぞご理解のうえご協力をお願い申し上げます。
<日本生命>
Qマイナンバー(個人番号)を申告しない場合、支払手続きはしてもらえないのですか?
Aマイナンバー(個人番号)を申告いただかなくても、保険金等をお受取りいただくことはできます。なお、保険会社は支払調書にマイナンバー(個人番号)を記載する義務がございますので、ご理解・ご協力のほどよろしくお願いいたします。
なお、マイナンバー制度の普及率、7月上旬時点で、マイナンバーカードの申請数が636万枚で、通知を出したのが1億2000件というから、約5%という わけである(週プレnews 2016年7月18日)。政府は利用拡大のロードマップができているというが、国民の制度自体への不信感と利便性に欠けることが、やはりネックになってい るのはないか。
また、マイナンバー制度導入前後の私のレポートに以下の記事がある。合わせてご覧いたければと思う。
◇マイナンバーに法的根拠はあるのか~内閣官房も自治体も、その説明に苦慮している! 16/01/15
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/01/post-7a6d.html
◇マイナンバー通知、到着、どうしますか、「ニューデンシャ」って、何?! 15/12/05
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/12/post-8d52.html
◇「マイナンバー制度」は、日本だけ!? 先進国の失敗からなぜ学ばないのか 15/11/25
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2015/11/post-afb2.html
初出:「内野光子のブログ」2016.08.14より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/06/post-167c.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6217:160815〕
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