麻生失言居士の発言の実相
- 2016年 9月 5日
- 交流の広場
- 熊王 信之
一言居士為らぬ失言居士とも言うべき御人として有名な、麻生氏が、又もや犯した失言と云うには、少し複雑な事情がありそうな「失言」が数日前に生起したものの、予想に反して、当の金融関係者からの反応が余り無い、不可思議な日々が続いています。
ともあれ、当該発言自体は、大凡、下の記事にあるとおりのものです。
「時事通信の報道によると、麻生太郎財務相兼金融担当相は都内で講演し、「何となく債券、株に投資するのは危ないという思い込みがある。あれは正しい」と述べた上で、「われわれの同級生で証券会社に勤めているのはよほどやばいやつだった」などと語ったという。
麻生氏はさらに、良い学校を良い成績で出た同級生が証券会社で詐欺の一歩手前のようなことをやっていた趣旨の発言した、と時事は報道。「怪しげな商売といえば、不動産と証券だった。昭和30年代、40年代に学生だった人なら誰でも知っている」とも語ったと伝えた。
(以下略)」
麻生金融相:「証券会社勤務はやばいやつ」、講演で-時事通信 Bloomberg 2016年8月30日 17:23 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2016-08-30/OCPQJ86JIJV001
報道内容に依れば、「失言」の一部は、昭和の30年代、40年代の証券会社の有様を懐古したもので、それは、亡父の業務実態を身近で観ていた実感からは、麻生氏に同意しても良い程です。
例えば、「罫線」と呼称する特定銘柄株の株価騰落の経歴を観測して、特定銘柄株の騰落を予想する非科学的投機手法に依れば、偶然(Black Swan)で大儲けする場合もあるでしょうが、大方は、予想に反する結末となるのが定めであるのですが、今でも、「テクニカル分析」と呼称を代えて、大真面目に薀蓄を傾ける業界関係者も多数であるのが実態です。
可哀想に、亡父も一時は、その分析に夢中であったようですが、その罫線の観測は、幼児の折の私の直観の方が良く中った程ですので、今思っても、非科学的極まる代物であるのは、間違いがありません。
この点では、麻生氏の指摘は、そのとおりでしょう。
否、証券会社等を、「やばいやつ」や「怪しげな商売」と言えば、昭和30年代、40年代に止まらないのではないか、とさえも思える程です。
その事例ですが、例えば、龍谷大学の竹中正治教授は、著書中で以下のとおり指摘されています。
「1997年に山一証券が破綻した後に、山一証券の某営業支店長が自分の貯蓄の全てを自社株(山一証券株)に投資していたため、会社破綻と同時に貯蓄の全てを失った事例がTV番組で紹介された。 全財産を投じた某支店長の例は多少極端な例かも知れないが、多くの山一社員が自社株の保有に大金をつぎ込み、大損した事例は多いという。 同情する気にもなれない話である。 投資家への証券の営業に従事する証券営業マンは、投資の基本原則を最も知っていなければならないはずだ。 ところが証券マン自身が自分の投資で基本原則と正反対のことやって来たのだ。 日本の証券営業の質は呆れるほど低かったのだ。」(「今こそ知りたい資産運用のセオリー」)
今でも、たいして実態は変わらない会社も多いのでしょうが、老後の資産形成のためには、貯蓄一辺倒でも可能であった時代は過去になり、何等かの程度で投資を資産形成の一助にせざるを得ない今の一般国民は、詐欺紛いの「回転売買」等に誘い込まない良心的な証券会社を利用する他には手段が無いのです。
そのためには、麻生氏には、御自身の職業を賭して、金融業の世界を浄化される務めに励まれることが求められるのです。
更には、内閣は一体なのですから、国民の年金資金を株価買い支えに投入し、運用損を国民につけまわしされるのを止めて貰いたいものです。
数兆円の大損を「国民向けパフォーマンス」で誤魔化せる、と思うのが間違いです。
なぜ年金は溶けたのか?「GPIF運用損5.3兆円」の危なすぎる内訳=斎藤満 MONEY VOICE 2016年7月31日
http://www.mag2.com/p/money/19011
運用パフォーマンスの上がらないGPIFが「国民向けパフォーマンス」を開始=近藤駿介 MONEY VOICE 2016年8月16日
http://www.mag2.com/p/money/20219
「怪しげな商売」と言えば、株価が公募割れするような代物を売りつけるのも同じでしょう。
公募割れ続く日本郵政とゆうちょ銀行 「騙された」株主のとるべき道は?=栫井駿介
MONEY VOICE 2016年8月21日
http://www.mag2.com/p/money/20525
それを言えば、近未来に暴落するのが必至の状況である日本国債も同じです。 戦後に起きた数年間で物価が百倍以上にも為る超インフレを国民切り捨てで切り抜ける策を巡らさずに、大企業に正当な税負担をさせる税制度改革を始めとする、真の改革を行い危機回避するべきでしょう。
日銀の国債引受・財政ファイナンスの末に、軍事費増大で戦争に国家と国民の命運を賭けた末に、敗戦の惨禍と財政破綻の二重苦を国民に齎した「高橋財政」と同じ命運が定めであるのがアベノミクス為る似非経済・財政「政策」の本質ですが、麻生氏には、その本質を理解されているのでしょうか。
発言から見るに、とても理解されている、とは思えません。
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