規制改革推進会議「農協は解体せよ」 VS 自民党「農村・農業・農家が良くならない限りどんな提言もはねのける」=これって茶番劇? TPPどうなってるの?
- 2016年 11月 19日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
- 全農の農産物委託販売の廃止と全量買い取り販売への転換
- 全農の購買事業を新組織に転換し、メーカーに関連部門を譲渡・売却
- 信用事業を営むJAを3年後をめどに半減
戦後一貫して自民党政治を支え続け、アベ政権になって以降も(全部ではないが)全国の多くの単協・県連が組織を挙げてアベ自民党を応援・支援していたJA系統、そのJA系統に対して、アベ政権の別動隊=規制改革推進会議・農業WGが「農協は実質的に解体だ」との答申案をまとめた。底流にあるのは、もちろん市場原理主義だ。これに対して自民党の議員たちは、農林族を中心に猛反発しているとマスコミ報道は(あまり熱心に報道してはいないけれども)伝えている。JA系統にしてみれば、いい「ツラの皮」であり、また言ってみれば「自業自得」、農協が本当の意味での協同組合ならば、とっくの昔に自民党から離れて、きちんとした経営や政策方針・政治への対応を持っていてしかるべきだったにもかかわらず、時代とともに自民党や社会情勢が変化・変質していることを歯牙にもかけず、旧態依然の選挙戦や国会請願・自民党政治家依存を繰り返していた。日本農業を生産者・農家や農協もろとも滅ぼすTPP協定を前にしても、その反対運動を市民とともに国民運動にすることから逃げ回っているのである。その結果がコレなのだから、それは「あんた、自分が招いた災いやろ」ということだ。
私が昨今で最も記憶に残るのは北海道、あの道知事選挙と衆議院補選で農協系統が反TPPと反原発を掲げて自民党候補と対決する側で動けば、北海道は確実に変わっていた。にもかかわらず、鈴木宗男よろしく、JA系統もまた、自民党候補を応援する側についていた。高橋はるみや故町村信孝継承者などというニセモノ知事・ニセモノ政治家にしがみついていてどうするのかということだが、この愚か極まる組織は旧態依然を繰り返していたのである。
さて、この問題、話せば長くなり、農業とはそもそもどういうものか、日本の農業政策の今日の具体的な内容はどうで、それはどこに問題があるのか、生産者・農家の組織と言われる農協は協同組合としてどうあるべきなのか、そもそも協同組合とはどういうものか、・・・・などなど、論点は山のようにあって簡単にはいかない。なので、このメールでは、さしあたり次のことを申し上げて、関連記事をみなさまに熟読していただきたいと思う。
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アベ自民党は、もはや都市部でも選挙で常勝する体制ができたし(民進党のおかげ?)、地方でも農協の力を借りずとも選挙はやれるから、そろそろこの「足手まとい」になりつつある組織を切って捨て、あわよくば自分たちに都合のいい組織に変えてしまえ、そういう「割り切り」をしつつ動き出している。このJAへの一種の権力弾圧は、そもそもはTPP協定の締結・批准をスムーズに進めるため、最も強硬な反対勢力と思わしきJA系統を黙らせる・押さえつけるために始められた、きわめて政治色の強い「策略」だった。今回はそれに向こう見ずの市場原理主義者たち・別の利権タカリ集団が、商売敵の農協をへこませるためにフライングをしてしまったというのが実態のように見える。だから、当面は自民党の、これまた旧態依然のおじさん・おばさんたちの力で少しは押し返されるだろうけれども、時間とともに「農協解体」が進められていくことはほぼ間違いがない。農協は今日の自民党を政権から引きずり下ろし、自分達ではなく彼ら自民党を解体しなければならないのだという自覚がもてないかぎり、中長期的な「安楽死」路線にのせられていくことになるだろう。そしてそれは、残念ながら、日本の優れた伝統的な水田農業を軸とする日本農業を土台から崩していくことにもなるだろうと、私は考えている。
(今の農協の在り方は問題だらけだけれど、日本農業の本当の再建政策とともに、農協を文字通りの農業の協同組合にしていく当事者の努力とそれに対する政策支援があれば、私は農協は立ち直れる・これからも発展していくと思っている。だから上記のようなことは残念でならない)
(1)今、アベ自民党政権の日本農業つぶしの最悪政策は、農協改革ではなくてTPP協定だ。なのに、なぜJA系統は組織を挙げてこれに反対せぬのか
(2)自民党政権の農協つぶしは、押したり引いたりしながらこれからも続く。今の自民党は保守政党などではない。JA系統は自民党を甘く見るな。
(3)日本農業衰退の原因は生産者・農家にはない。自民党その他による「4つの優先農業政策」(①アメリカ優先,②WTO・FTA・EPA優先,③財政再建優先,④政治家・官僚・食品関連産業の利権優先)と、それに追随・寄生して甘い汁を吸い続けてきた農協系統の幹部たちの姿勢にある。
(4)農業は様々な可能性を持った21世紀型の産業であり、関連産業までを含めれば、大きな雇用や経済成長・生活の質の向上を約束する貴重な産業である。しかし今、アベ自民党政権や民進党などが進めようとしている農業政策(その基底には市場原理主義がある)と、原発再稼働政策は、それを無残にも踏みつぶす「日本の未来を破壊する」政策である。
(5)JA系統よ、早く目を覚ませ!! 目を覚まして、多くの無党派改革主義の市民とともにアベ政権打倒へ立ち上がれ。JA系統にとってはこれが最後のチャンスだ。TPP協定はもちろん、どんなことがあっても破棄だし、今回のような「農協解体」提言も、その一部分でさえも採用はあり得ない。今日の自民党(及びそれに連なる勢力)と共存できるなどとは思うな!
<規制改革推進会議の提言:骨子>
以前にも申し上げましたが、下記の(7)は実にくだらない内容です。そもぞも全中会長がかようなことを言って、危機にある日本農業の現状を切り替えていく訴えをしないところにJA系統の根本的な問題があるのです。いったい何年前の議論をしているのか、そんな程度のことで危機にある日本農業が救えるのか、という印象を強くします。
(1)規制改革会議 JAに信用譲渡迫る、全農購買部門売却も(日本農業 2016.11.12)
https://www.agrinews.co.jp/p39427.html
(2)規制改革推進会議 意見(全文)(日本農業 2016.11.12)
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/meeting.html
(3)農業改革提言 現場一斉に反論、しわ寄せ農家に(日本農業 2016.11.16)
(4)規制会議提言、政府・与党方針を逸脱(日本農業 2016.11.17)
(5)「農協つぶし」反発、自民 否定論が大勢(日本農業 2016.11.18)
https://www.agrinews.co.jp/p39468.html
(6)改革の狙いはJA解体(農業協同組合新聞 2016.11.20)
http://www.jacom.or.jp/nousei/closeup/2016/161117-31400.php
(7)日本農業改造計画(小泉進次郎・奥野長衛『文藝春秋 2016.11』)
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/2018
(8)21世紀の農政にもの申す(110):SBS米問題 徹底調査を(梶井功 農業協同組合新聞 2016.11.10)
http://www.jacom.or.jp/nousei/rensai/cat1/
(9)「植物工場」岐路、次世代型農業「切り札」のはずが(日本農業2016.11.15)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20161115-00010001-agrinews-bus_all
<関連サイト>
下記のうち、(1)にはいろいろ新聞報道が集めてあります。
(1)【TPP 環太平洋パートナーシップ協定 記事まとめ】 11月18日 日
本農業新聞 – 「農協つぶし」反発 自民 否定論が大勢 取りまとめ難航 規制改
革案 – 設楽ダムより緑のダム 全国の知事を脱ダム脱原発反TPP知事に 衆議院
総選挙=市民と野党の共闘
http://blog.goo.ne.jp/midorinodamu/e/be4f6bd39be31669c4f47c5a88d7e4bc
(2)小泉進次郎氏「全農は自らモノを売る必要ない」 経済 読売新聞(YOMIURI
ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20161116-OYT1T50017.html
(3)改革遅れれば「第二全農」設立も 規制改革会議が提言(追記あり) – 農トピ
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6362:161119〕
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