マンション生活で知り得た社会問題を考える(18) ―管理会社マンションでの長期修繕計画の実態
- 2016年 12月 8日
- 評論・紹介・意見
- マンション住宅問題管理組合羽田真一
ジャーナリスト斎藤貴男著「東京電力」研究(講談社2012)の冒頭で、[ただでさえ監視社会や格差社会、差別的な教育改革、石原慎太郎、経団連の会長会社、改憲への潮流、消費税増税等々に関する批判を続けた結果、すっかり嫌われ者になってしまった。ずいぶん仕事を干された。友人のつもりでいた人々も離れていった。真正面からケンカを売られるなら望むところだが、匿名の、せせら笑うような誹謗中傷、罵詈雑言がネット上に溢れる状況に、吐き気が止まらなくなった時期もある。]と。羽田は別に委縮していないが、彼と同じ状況がこのマンションで起きている。会計不正の疑いを明らかにしたいと文書配布を続けたら、理事会は羽田を刑事告訴して裁判にかけようと脅している(告訴受理から2年近く経ち未だに放置?)。その中心人物が大工事のたびに不自然にも管理組合の役員に就いて不明朗な修繕積立金工事を主導しているF氏である。
昨(2015)年5月の定期総会で当時のF理事長は1年前倒しし半年かけて完了した全戸の給排水管交換工事によって「当マンションの漏水のリスクがなくなり、資産価値が向上した」、一方「羽田の文書配布が当マンションの資産価値を下げている」と挨拶した。本当にそうであろうか。マンションの漏水はパイプの劣化だけが原因ではない。台所・トイレ詰まりや洗濯機のホース外れなどもある。実際にその後のアンケートで漏水問題を多数の住民が訴えている。羽田の文書配布は、一住民の切なる訴えとしての会計不正疑惑の無視への対抗手段として実行したものである。それを理事会は共同生活を損なうものとして刑事告訴にまで進めている。孤立させられた羽田の訴えであるが、きちんと中身を真剣に読んでくれている方々がいると信じて配布を続けている(原稿作成から約200部の宛名書き封筒ポスティングまで並大抵の作業ではない)。何よりも「言論表現の自由」の容認が公正な集団社会生活に資すると信じているからである。羽田は管理組合の大規模修繕工事に反対しているのではない。住民の総意に沿った必要で公正な工事をやってもらいたいと主張している。一部の有力者が不当に利益を得るための工事が問題であり、費やした労力に対する正当な評価費用を算出し公表して取り組んでもらいたいと言っている。
1.長期修繕計画工事の持つ意義を考える
マンションの資産価値の維持向上を目的に管理組合が形成され、買い取ったはずの住民から多額の[管理費]を集め、数年ごとの大規模な修繕工事、約10年ごとの大規模修繕工事が実施されている。その工事ごとに管理会社に預けた組合の預金口座から億単位の管理費が工事関係業者に流れてゆく。工事実施に当たっては管理組合が発注元とは形だけで、その仕組みは管理会社が大元で建築コンサルタント会社を中心として、理事会に専門家でもない有力者が特別委員会(専門委員会)を形成して進めている。管理費ビジネスの柱となる長期修繕計画はコンサルタントへの委託事項となり、全ての工事を彼が差配する構造が出来上がっている。当[管理会社マンション]では管理会社・コンサルタント・専門委・彼らを繋ぐ管理人からなる管理中枢が出来上がり、その利権集団に支配されてきた。
第(5)報に書いたが、(素人の想定で不確かさを免れないが)管理会社マンション寿命を中心としたビジネスモデルを記述してみたい。一般住民にはマンション購入は子育て人生最盛期から老後生活に至る一生の重要事である。経験では購入・生活維持費と管理費・租税などで40年暮らすとそれだけで数千万円の買い物となった。仮に40年後に売り払っても相場は精々数百万から1千万円位であろう。幸い「建替え」が実現してマンションの付加価値を大きくして増戸数・高級化ができても、住み続けるにはその増加価値分との差額以上の多額の購入費が余計にかかることになり、対応できない老齢期の退職生活者には追い出され兼ねない経済状況が起こり得ると考える。管理会社は管理組合を手なずけ協力関係を維持することによって(新たに建替え管理組合を作り)、新たに100億円単位の投資でスムーズに第2世代管理会社マンションビジネスの展開が見込める。そのメリットは建設費などの投資の機会をもたらし、半永久的に有望なビジネスとなると考える(当然、社会情勢によっては反対の結果もあり得るが)。第1代マンション分譲で獲得した関係(管理会社)を維持することによって、マンションを半永久的に利益マシーンにできるから、余程のことがない限り管理会社が手放すはずがないだろう。それには種々の国・地方の行政機関や公的機関との繋がりも重要になるであろうし、何にもまして管理組合の有力協力者の取り込みが不可欠となる。そこにコンサルタントや周辺の業者も含めた密閉的利権集団が形成されやすく、不当利益分与に繋がる裏の動きもあり、長期修繕計画からマンション管理組合の社会問題へと繋がるのである[羽田のちきゅう座の既1~17報を参照されたい]。
2.当管理会社マンションにおける長期修繕計画工事の実態
大規模修繕工事に携わるのは、管理会社・コンサルタント・理事会・専門委員会・施工会社であるが、本来なら[管理費]全額を納める住民が主役でなければならないはずである。ところが、当マンションでは要の住民が殆ど口を挟む余地がないように工事推進プロセスが仕組まれている。順番クジ引きで選ばれる理事たちからなる理事会は住民の声を吸い上げる意志などなく、それでいて始末が悪いことに住民代表としての審議決議機関となるのだ。住民は理事会の決定を説明会・総会で事後承諾させられるだけである。住民の意見陳述の前に工事の具体案は決まっている。自由な意見を戦わせることの必要を痛感する。監事が監査役として機能できないように管理規約も制定されている。
当マンションでは長期修繕計画を全面委託されたコンサルタントの意向によって寿命対象期間が60年に延長され、資金計画まで支配され、一時は将来の工事に1億円の借金まで組み入れていた。修繕工事に使われる工法、計画、建築資材などの彼の提案に素人の住民が専門知識で太刀打ちできるはずもなく、それが個々の住民の納める[管理費]修繕積立金額にも関わる。最近では耐震性などを問題として国交省や業界の意向を受けて半強制的に「建替え問題」を取り込む雰囲気が形成されつつある。修繕工事が素人集団の住民がますます口を挟めないブラックボックス的課題となってきている。
3. 実体験した大規模修繕工事(給排水管交換工事)推進の実態
羽田が2013年度ほぼ1年間(翌年秋に給排水管交換工事があり、その準備期に当たった)を一住民として理事会を自発的に傍聴し知り得た事実を中心に報告する。[傍聴中は発言禁止。現在、羽田は区分所有者であるが、羽田への刑事告訴審議を理由に理事会からその傍聴・資料配布も拒否され続けている。]
3.1 管理会社(大手N不動産子会社)
管理費の総元締めとしてマネージャーを出席させてマンション全体を管理しながら、大修繕工事は理事会が全てを自発的に決めて動いたように見せかけている。総会の時期になると誰が動機で提起したのか不明な管理費値上げ案や総会での会計予算決算案が理事会に降りてくる。管理会社との契約でもあり、殆ど反対されることもなく多少の修正で総会承認される。理事会が管理会社「お上様」という意識を払拭しない限り、契約を盾に半永久的に不平等条約的に支配される主従関係となっている。有力住民が喜んで協力することで全体が「管理会社マンション」となる。住民が真っ当な契約関係を理解し実行しない限り、力関係と多数決で全てが押し切られてしまう。管理会社は予算を管理するものの実際工事に弱いからコンサルタント・理事会任せなのだろう。それでも会計の総元締めとして永続的に管理費を吸い上げ、自在にコントロールし利益が得られるのだ。オープン化せず情報操作することで全体を操れることの恐ろしさを感じる。
3.2 コンサルタント(B建築研究所)
当マンションでは管理会社より実際面でより近いコンサルタントの方が住民生活に大きな悪影響を及ぼしている。エセ自主管理導入時に前M管理人や理事会によって管理運営相談役を託され(誘導された可能性もあり)、長期修繕計画も全面的に任された。実質理事会を強力にバックアップして操っている。総会には来賓として理事長と並び、理事会にも支援と称して出席している(以前は専門委会議に)。当マンションでは管理会社が2社あることになり、過去の総会でも住民から疑問の声が上がっていた。羽田にはB社がどのような関係で当マンションに繋がったか不明である。最近は弁護士まで紹介してF氏とともに理事会に異論を唱える羽田に強権的対処(刑事告訴を指南)をするまでにのさばってきている。
彼は給排水管工事の実施の数年前に、リフォームする宅を利用して給排水管の実態を試験調査した。羽田はこの段階でこの給排水管工事は、全て彼の手に落ちたも同然と見ていた。各部の管損傷状態の報告では、工事の必要性の判定が曖昧であると理事会の意見であったが。その後の工事施工までのプロセスは、正しく理事会を操って彼が全てを受託して進んだ。工事の基本計画、実施設計と施工監理までの殆どの検討会議に彼本人が出席し、主導権を握り結果を得ている。住民の邪魔が入らぬよう、業者選定の説明会も審議決議の理事会も彼と専門委と理事で時間を置かず密閉的に進め決定してしまう。理事仲間だけで最終決定まで進め、工事を主導する専門家に誰が反対できようか。談合とか癒着とか以前の、前近代的な契約行為が堂々と理事会の名でまかり通るのが当マンションの特徴である。それどころか彼を賛美する声が理事の中に上がる始末である。「彼が当マンションを一番よく知っている」「別々に他の業者に委託すれば時間と費用が余計に掛かる」など、に羽田は言う言葉を知らない。2,3の業者が候補に挙がって競合の形をとっても予想通りコンサルタント委託に落ち着く。施工監理会社の選定も、傍聴の羽田の目の前で競合を見せかけるために、他社(管理会社)に金額だけを少し変えて提出させる厚かましさである。施工会社の見積り選定も2億5千万円を中心に金額の差は僅かで、選定基準が無意味なほど決定の理由が不明の結果となったところから、明らかに出来レースの談合をやってのけたと見ている。傍聴時の会社関係書類は取り上げられてしまった。素人ながら羽田が関係書類の閲覧を要望したが、理事会は閲覧細則(案)に罰則を付けて実質実行ができない事態が続いている。
3.3 F理事長・理事会
本工事は長期修繕計画では元々2015年度実施になっていたが、消費税8%回避を意図して早期に準備を始め、その後増税延期となっても、そのまま強引に前倒しして2014年度実施で進めた。[不思議にF氏は2002年(前倒し)の全戸アルミサッシ改修工事(防音ペアガラス化)は理事長で、2007年の第2回大規模修繕(外壁塗装、ドア交換、防水工事など)では専門委で、2014年の全戸給排水管交換工事も再び理事長として主導した。] どうみても不自然であり、管理側(管理会社・コンサルタント)が工事実施に最適の人物として選ばせたのであろう。工事承認の臨時総会で、すでに多数あったリフォーム済宅の再工事の費用全体が調査前で確定しておらず、住民から工事費総額の見直し承認の意見が出たが高飛車に「それはできない」と跳ね除け、結局、そのまま総会承認を強行した。得意の事後承諾で住民にもの言わせず強行するところが彼が買われた理由であろう。
3.4 旧・新専門委
先に述べた専門委 (永続的就任の数名からなる特別委)の委員6名は2012年の羽田の会計不正疑惑指摘で説明もせず1人を残して総会逃れ退任し、事実上崩壊した。彼らは理事長経験者など住民中の有力者であるだけに、退任後もクジ引き選出を上手く利用して順次役職に復帰している。一度吸った甘い汁はどこまでも止められないのであろう。大工事の最終決算は詳細が公表されず、彼らにかかった費用の詳細はいつも不明であるところに問題があるが、不思議に誰も口を挟まない。ボスに睨まれると怖いというムラ社会ができているのである。羽田はそこに施工会社を含めた工事での管理中枢での暗黙の利益授受というあってはならない負の関係が長く続いてきたと推論している。F理事長は消えかかった旧専門委がなくては工事が進まないと言って、理事の数名を1年間新専門委として委任した。羽田は彼らが理事として旧専門委に代わって工事を進行させた論功行賞と見ている。
旧専門委が総会でコンサルタントの助手をやったり、自分の都合で堂々と工事の着工順を逆転させたり、専門委大ボスが配管工事が一段落した時点で、N社のリフォーム子会社の立て看をこれ見よがしに玄関先に置いて、1か月もかけて周りの公道を占拠しながら大々的にリノベーションをやってのけた。完了時真昼間に特権を誇示するかのように工事関係者を集めてシャンシャン打ち上げ式を見せつけた。羽田には工事推進貢献への見返り工事としか見えなかった。
4. まとめ
マンション管理の良否の判断要素といわれる「長期修繕計画」をキーワードに、理事会傍聴で実見し、実際に体験した最近の大工事「給排水管交換工事」推進への関与組織の関わり方を一住民の立場でお伝えした。「管理会社マンション」の実態はこんなものであるが、既存の利権集団を含む管理中枢の反羽田の反応は凄まじく、管理組合のスローガン「安全安心のためにオープンな管理を」とは真逆の裏で巧妙な密閉主義の管理を続けている。羽田は言うことを聞かぬ、不都合な情報を外に撒き散らす異端者として理事会は刑事訴訟まで使って排除しようと動いている。告訴が警察に受理されたとの報告をしたが、2年間近くも音沙汰なく放置されたままである。既述のごとく組合会計に不正疑惑があるから明らかにしてくれと要望しているだけであるが、理事会はあの手この手ではぐらかしを続けている。羽田の公開質問は無視して答えず、今度の管理規約の改正を期にマンション管理士に主導させて「帳簿閲覧は個人の権利でなく監事がやればよい」と回答させている。憲法第9条と同じく条文を素直に読めない(小学生以下)誤解答を管理会社のために堂々とやってのける。このようにいつも前面に大きな偽りの壁が立ち塞がってくる。
マンション管理問題も処々で火の手は上がりつつあり、情勢が変わってきていると実感している。羽田の行為は、今は小さな一燈の灯りでしかないが、いつか暗闇を照らす松明(たいまつ)に、行く末は辺りを照らす太陽の光に成長することを信じて前進していきたい。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6404:161208〕
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