沖縄報道にNHKの変化が見えた
- 2017年 1月 11日
- 評論・紹介・意見
- NHK隅井孝雄
12月22日、沖縄の米軍北部訓練所の半分が返還され、式典が行われた。日本政府からは菅官房長官、稲田防衛大臣らが出席、またキャロライン・アメリカ大使も出席して、祝意を述べた。しかしそこに翁長知事の姿はなかった、同じ日、同じ時間に開かれた「オスプレイ墜落事故抗議県民集会」に知事は出席したのだ。
この日NHKは政府主催式典を1分53秒間型どおり報道した後、18分間にわたって県民の抗議大会を中心に、オスプレイ事故に焦点をあてた。現地にとんだ河野憲治キャスターは、オスプレイ事故の状況、わずか6日後に飛行再開となったことに抗議する沖縄県民をインタビュー取材した。また基地返還の条件となったのは6か所のオスプレイ発着ヘリポートだったこと、高江の住民たちが強い不安にかられていることも紹介された。
沖縄に関してはこれまでのNHKの報道は、琉球放送、沖縄テレビ、琉球朝日などに比べて大きく遅れているだけではなく、本土の民放ドキュメンタリーのような積極性も欠いており、高江の問題をほとんど取り上げない、政府の立場を忖度する報道が多いという強い批判を浴びていた。
2015年6月23日の慰霊の日式典で参列者から安倍首相が「帰れ」など激しい罵声を浴びた場面で、NHKは中継放送のヤジ音声を消して放送したことが問題となったことがあった。海外メディアの多くは、ヤジがあったことをニュースとして報じ、音声を消したNHKを批判した。
NHKは政治課題での市民のデモや抗議集会には、これまで冷淡な対応を見せるのが常であった。例えば2015年8月30日に、安保法案反対、立憲主義を守れと、国会周辺に12万人(主催者発表)が集まって、抗議行動が行われた。この日は日曜日であったため報道ステーションは翌日月曜日に12分間にわたって、市民の行動を特集報道した。これに対してNHKニュース7は当日2分間、翌日のニュースウォッチ9で30秒伝えたにとどまった。
このような状況が続いていたことから見ると、今回の沖縄報道は大きな変化ということができるだろう。
政府の見解を伝えると公言していた籾井会長が辞任したあとである。NHKが公正なジャーナリズム精神に立ち返り、市民の抗議活動、集会、デモ行進もきっちりと伝えてくれることを強く望みたい。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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