本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(144)
- 2017年 1月 11日
- 評論・紹介・意見
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干支から見る2017年
「2017年」は「丁酉(ひのと とり)」という暦になるが、「丁」が意味することは「陰陽の交錯」であり、また、「酉」は「醸」に繋がり、「新たな変化が醸し出される状況」を表している。また、「末尾に7の付く年」は、必ず「丁」の暦となるが、過去の経験則からは、「年の前半高、また、後半のショック安」が考えられるようだ。具体的には、「2007年」の場合には、「7月」から始まった「サブプライム問題」、「1997年」においては、「8月」に「タイから始まった世界的な信用収縮」、そして、「1987年」には「10月のブラックマンデー」などのことだが、この点については、より深い理解が必要な状況とも言えるようである。
つまり、「2007年のサブプライム問題」までは、「世界のマネーが大膨張を継続していた時期」であり、そのために、「1987年のブラックマンデー」や「1997年の信用収縮」については、「マネーバブルの形成過程に発生した金融混乱だった」という事実である。しかし、一方で、「2007年のサブプライム問題」や「2008年のリーマンショック」については、「マネーの大膨張が限界点に達したことを、世界中に知らせる出来事だった」ものと想定されるのである。
別の言葉では、いわゆる「量的緩和(QE)」が、「金融のメルトダウン(炉心溶融)」、あるいは、「インフレの大津波」を意味していたものと考えているが、実際には、「水面下で、深く進行していた」という状況であり、その結果として、ほとんどの人が、この点に気付いていない状況とも感じられるのである。しかし、今後は、「国債価格の暴落(金利は上昇)」とともに、本当の「インフレ」が、はっきりと形を表し始めるものと考えているが、この点については、「日本の信用乗数」が、典型的な指標とも言えるようである。
つまり、「マネーストック(約970兆円)÷マネタリーベース(約420兆円)=信用乗数(約2.3倍)」のことだが、現在では、「1990年前後にピークを付けた約13倍」、そして、「黒田日銀総裁が就任した時の約6倍」を、大きく下回り、「下限の1倍」にまで近づいた状況となっているのである。別の言葉では、「1991年のソ連崩壊時」と同様に、「国債価格の暴落とともに、ほぼ瞬間的に、1倍にまで急減する事態」のことだが、このことは、「金融機関が機能不全状態となり、紙幣が大増刷される状況」を意味している。そして、この点に関して、「2016年のマイナス金利」が、後世において、「インフレが始まる前の、典型的な引き潮状態だった」といわれる可能性が高まっているようにも感じられるのである。(2016.12.5)
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2016年を振り返って
「2016年」は、世界の金融史において、歴史的な「大転換の年」となったものと考えているが、その理由としては、約35年間も継続した「世界的な低下金利」が終焉し、また、世界的な「マイナス金利」がピークを付けたものと思われるからだ。別の言葉では、「権力の暴走」が終了し、「天地自然の理」が働き始めた状況とも言えるようだが、この点については、「なぜ、長期間、金利の低下が続き、また、最後の段階で、マイナス金利が発生したのか?」に関する深い理解が必要なようにも感じている。
また、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」の「カルアナ総裁」は、「6月末の年次総会」で、「将来が現実となる時」という言葉を使い、「中央銀行の暴走が終了した状況」を、すでに示唆していたようにも思われるのである。そして、実際に、この前後に、「マイナス金利のピーク(国債価格は史上最高値)」を付けたわけだが、この点に関して、「イエレンFRB議長」は、「8月26日」の演説で、「2007年以降に、どのような金融政策を行ってきたのか?」について、詳しい説明を行ったのである。
このように、現在では、「BIS」と「FRB」のトップが、「世界的な金融情勢」について、赤裸々に「問題提起」や「疑問点」などを述べ始めているが、具体的には、「現在の経済学は、きわめて未熟である」ともコメントしているのである。別の言葉では、「世界の金融システムは、間もなく、完全崩壊する」、そして、「その後の大混乱期に、新たな理論が誕生する」という点を、強調したかったようにも感じられるのである。
より具体的には、「非伝統的金融政策」という「本来、中央銀行が行ってはいけない政策」が、「2007年」以降、世界的に実施されてきたわけだが、「2016年」は、この点において、完全に限界点にまで達したものと思われるのである。その結果として、現在では、すでに、「世界的な金利上昇」が始まったものと考えているが、この時の問題点は、やはり、「いまだに、古典的な経済学を信奉する人が多い状況」とも言えるのである。
つまり、「景気が良いために金利が上昇した」というような、短絡的、かつ、安易な考え方のことである。しかし、実際には、「カルアナ総裁」が、数年前から主張してきたように、「世界各国の中央銀行が、国債の買い付けを行わなかったら、世界の金融システムは、とっくに破たんしていたはずだ」、そして、「時間稼ぎや問題の先送りは、すでに限界点に達した」という状況でもあり、間もなく、この点について、世界中の人々が気付くことになるものと考えている。(2016.12.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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