本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(145)
- 2017年 2月 1日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
日本の創造的破壊
「12月26日」に行われた「黒田日銀総裁の演説」では、「シュンペーターの言葉」が引用されたが、ご存知のとおりに、「シュンペーター(1883-1950)」は、「技術革新の重要性」と「創造的破壊」を主張した経済学者である。つまり、「新たな技術や商品が開発され、既存の商品が陳腐化するものの、結果として、世の中全体が進歩する」という点を強調したのだが、今回の注目点は、「なぜ、黒田総裁が、このような意見を述べたのか?」ということでもあるようだ。
つまり、「技術革新」や「創造的破壊」は、現在、「実体経済に関する経済理論」として認識されているために、「金融政策」については、それほど重要性が存在しないものと思われるのである。別の言葉では、「黒田総裁の思惑」として、「AI(人工知能)」などの技術革新を強調することにより、「金融政策の行き詰まり」から、人々の目をそらすことにあったようにも感じられるのである。
より具体的には、「新しい欲望が、生産の側から消費者に教え込まれ、したがって、イニシアチブ(主導権)は生産の側にあるというふうに行われるのが常である」と述べながら、「商品の需要は、生産者によって決められる」という点を、黒田総裁は主張しているが、この点については、全くの「本末転倒の考え方」とも言えるようである。つまり、私自身としては、基本的に、「どのような商品が売れるのか?」について、「お金の総量」と、「人々の興味と関心」で決定されるものと考えているからである。
そのために、今後、最も注目すべき点は、「お金の総量」に関して、劇的な変化が起こる可能性でもあるが、実際には、「日銀の赤字激増」や「国債価格の暴落」などにより、「日銀」のみならず、「国家」に関しても、「資金繰りの問題」に直面する可能性のことである。つまり、「どのような技術革新が起きようとも、お金がなければ、その商品に対して需要が発生しない状況」が危惧されるのである。
ただし、当面は、典型的な「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への移行過程として、きわめて大きな需要が、さまざまな商品に発生するものと考えているが、問題は、その後の展開とも想定されるのである。つまり、本当の意味での「創造的破壊」が、「日本」のみならず、「世界」の金融界で起こるものと考えているが、このことは、「自然科学」ではなく、「社会科学」に「技術革新」、あるいは、「新たな理論の創出」が発生する可能性とも考えられるようである。(2017.1.5)
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AI(人工知能)の可能性
現在、日本の将棋界では、「AI(人工知能)」が大問題となっているが、具体的には、「三浦九段が人工知能を使った疑いをかけられたものの、結果としては、全くの無実だった」という事件のことである。そして、このことは、「将棋界」のみならず、「人類全体」に関して、大きな意味を持っているものと感じているが、実際には、「AI(人工知能)は、どこまで発展するのか?」、そして、「この時に、人間の役割は、どのように変化するのか?」ということでもあるようだ。
また、この点については、やはり、過去の歴史をひも解いて考える必要性が存在するが、実際には、「人類は、常に、進化と創造の過程にある」という事実を認識しながら、「技術革新が、人々の生活に、どのような影響を与えてきたのか?」を考えることである。具体的には、今から150年ほど前の「日本」では、「飛脚」や「駕籠かき」などの職業が存在したものの、その後は、ご存知のとおりに、「電話」や「電車」などの発達により、職業の形態が大きく変化したことも理解できるのである。
このように、「時代とともに、色々な変化が起きる」ということが、当然の事実でもあるが、今回の「将棋」に関しては、「いろいろな棋戦に、AIの棋士を参加させることにより、将棋界全体の実力を向上させる」という方法が望ましいようにも感じている。つまり、将来的に、「将棋の仕組み」が解明できると、「将棋のゲーム自体が、大きな変質を遂げる可能性」を考慮する必要性があるようにも思われるのである。
別の言葉では、今後、「人工知能」に関して、急激な発展が予想されるのだが、この時には、「社会の在り方」までをも変化させる可能性が存在するものと考えている。そして、この時の注目点は、やはり、「強い頭」と「速い頭」との「違い」であり、「速い頭」というのは、「大学入試」や「資格試験」などのように、「答えが存在する問題」に関して、「どれほど短時間で、問題が解けるのか?」を競う能力のことである。
しかし、一方で、「強い頭」は、「投資」や「実業」などにおいて、「答えが存在しない問題」を、粘り強く考え続ける能力であり、この点については、「人工知能」では、対応が難しいものと考えている。つまり、「問題の存在」に気付いた時点で、「その問題は半分程度、解けている」とも考えているが、実社会においては、現在の「経済学」や「心の問題」のように、「何が問題なのかが、理解できない状況」が往々にして存在するために、「人間の強い頭脳」が求められているようにも思われるのである。(2017.1.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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