真冬にトマトの花
- 2017年 2月 2日
- カルチャー
- 藤澤豊
夏だったと思うが、食べたときに、五六粒の種を楊枝でよせてティッシュペーパーに乗せておいた。二三日して、ベランダのプランターの隅に蒔いた。期待どおりに芽がでて、それなりの大きさには育った。ただトマト(たぶん桃太郎)にはプランターが小さすぎて、花は咲いても実はならなかった。トマトは丈夫な野菜で、水さえ適当にやっておけば、育って花までは咲く。
なにかが育っているプランターの隅を使ってのことで、はなから収穫をとは思っていない。運よく花まで見れればもうけものという、いい年したオヤジが小学生の夏休みの理科の実験でもしているようなものだった。
水遣りだけで何もしないのに、何年か前に十個近く、ミニトマトの小さな実がなった。よころんでサラダに入れて食べてはみたが、皮は固いし、すっぱいはで食べられないことはないというものだった。
おいしいトマトをと思えば十分な土を用意して肥料をやって、それなりに手をかけなければならない。
秋から冬にはいると、花までさかせたトマトも枯れていった。四五本あったなかに一本だけ、しぶとく生き残っているのがいる。全体は枯れ落ちているのに一本の枝だけが葉をつけてがんばっている。がんばっているのに、つぶしてしまうのもしのびない。春に向けて植えるものは植えてしまって、トマトのプランターにはもうフリージアの葉が茂っている。いつまで生き続けるのかと放っておいた。数日前に水遣りしていて気がついた。つぼみを三つつけていた。
暖冬のおかげだろうが、いくらもしないうちに花が咲くだろうと思って待っていた。今朝、一月二十九日。小さな黄色い花が咲いていた。まだこれから開花するつぼみが二つ残っている。二月に入ってから咲いてくれると思うと、それだけうれしい。真冬に咲いて当たり前の梅じゃない。トマトの花。
風の強かった翌日、一月三十一日、トマトをみたら、最初に咲いた花が枯れて、小豆の半分より小さな実がなっていた。二つのつぼみはとっくに咲いて枯れるところだったが、別の枝にはまたひとつ小さな花が咲いていた。
こんなトマトを見ていると、実はならないかもしれないけど、せめて花まではという気になる。頑張らなきゃ。
Private homepage “My commonsense” (http://mycommonsense.ninja-web.net/)にアップした拙稿に加筆、編集
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〔culture0403:170202〕
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