トランプ大統領咆哮の陰の報道実態
- 2017年 2月 5日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
トランプ大統領の四方八方への咆哮は、止まる処を知りませんが、米国内への投資に関わる企業経営者への謝辞以外では、本日(2月4日)珍しくも豪州首相への御礼が観られました。
Donald J. Trump ?@realDonaldTrump ? 18時間18時間前
Thank you to Prime Minister of Australia for telling the truth about our very civil conversation that FAKE NEWS media lied about. Very nice!
(我々の極めて礼儀正しい会話に関わる似非ニュース報道機関の嘘に対するに、真実を語って頂いた豪州首相に感謝します。 本当に有難う!)
何のことかと言うのは、BBCの報道に在るとおり、オバマ政権が豪州と交わした難民受け入れに関わる合意の一件ですが、トランプ大統領は、御自身のツィートでは、御立腹の様子で以下のように咆哮されていた処でした。
Donald J. Trump ?@realDonaldTrump ? 2月2日
Do you believe it? The Obama Administration agreed to take thousands of illegal immigrants from Australia. Why? I will study this dumb deal!
(信じられるか? オバマ政権は、豪州から何千もの不法移民受け入れに合意していたんだ。 何故だ? ワシは、このクソ取引を調べるぞ!)
トランプ氏、豪首相との電話会談を「最悪」と打ち切り=米紙 BBC NEWS JAPAN
http://www.bbc.com/japanese/38838903
米国内報道機関は、何時ものように、トランプ氏批判の一斉射撃でしたが、当の相手のターンブル首相が報道内容を否定したのです。 そして、移民の一件は、落ち着く処へ落ち着く、ようです。
豪州の公的報道機関ABC(Australian Broadcasting Corporation)に依れば、その要点は、次のとおりです。
Mr Turnbull said he was disappointed the details of the call ? which he described as “very frank and forthright” ? had been leaked.(ターンブル氏は、氏に依れば、「極めて率直で単刀直入な」通話の詳細が漏洩したのは遺憾と述べた。)
“The report that the President hung up is not correct,” he said.(大統領が通話を切ったという報道は精確では無い、と氏は語った。)
Donald Trump thanks Malcolm Turnbull for ‘telling the truth’ about ‘fake news’ ABC(Australian Broadcasting Corporation)
http://www.abc.net.au/news/2017-02-03/trump-thanks-malcolm-turnbull-for-telling-the-truth/8240608
どうも移民・難民に関わる一件では、恰もトランプ政権になってから極端な政策になった、と受け取れる報道姿勢が目立ちます。 しかし、それはいささか事実と相違するようで、移民・難民規制は、米国史上では、何度も繰り返されて来たのが事実であり、今回の規制実施でも、トランプ氏が独裁で人権無視の規制を実施したのではありません。 選挙戦中から公約に掲げていたものを実際に実務に移しているに過ぎないのです。
即ち、米国内の実相を観る必要があるのです。 9.11以来、米国人が極端に外国人嫌いになったのかも知れませんし、米国第一、なのも、以前から、と私には思われます。 国内分断の実相も今に始まったことでは無いでしょう。
コラム:実は新しくない、トランプ大統領の入国制限令 Reuters Column | 2017年 02月 4日 09:25 JST http://jp.reuters.com/article/vanburen-immigration-idJPKBN15I0E6?il=0&sp=true
米国報道機関の多数は、政治的に民主党支持が多数派で、敵対する共和党には、それなりの報道姿勢で対するのが一般的で、例えば、温暖化論(最近は、気候変動と言い換えていますが)ですが、共和党側が反温暖化論であるのを民主党側の多数派報道機関が激しく攻撃するのと同じく、何事も分断し、分裂しています。
米国の報道機関の実相には要注意なのは、この国の大本営発表機関とは、また違った危険がその報道内容には含まれていると云う事実です。 紙面の裏に何があるかを知る努力を怠れば容易に扇動される、と云うことです。
その例では、トランプ大統領の拒否宣言で有名なクリントン・ニュース・ネットワークと支持者から呼ばれるCNNは、確かに少しやり過ぎです。 ネットで探せば、過去の前科が見つかりますが、先に行われた大統領就任式典のオバマ大統領就任時の参加者数比較写真と当該記事は、その恣意的な思惑が暴露されています。
尤も、参加者数の精確な記録は無いのですが、当時の記録写真からみてオバマ大統領就任時の一般参加者が多かったのは本当でしょうが、対するにトランプ大統領の就任式典参加者数を如何にも過少と装う作為は、報道機関として如何なものでしょうか。
Brit Hume Calls BS on Trump and Obama Inauguration Pics–Claims There’s a Deceptive Trick to Photos http://ijr.com/2017/01/783119-brit-hume-calls-bs-on-trump-and-obama-inauguration-pics-claims-theres-a-deceptive-trick-to-photos/
選挙戦の終わってからの後味の悪い足掻きを観るようで、また、今の米国内の分断が分かるような気もします。 しかし、その中に在って、自己の報道姿勢の矜持を保とうと努めている処もあります。
米国の報道機関と比べて、少し様相が相違しているロイター(Reuters)では、トランプ政権になってからの報道姿勢を初心に帰るように改めて徹底しているようです。
その一例ですが、ロイター(Reuters)のスティーブン・アドラー編集主幹の社員向けメッセージには、感服します。 殆ど感動的と云っても良い程です。
最終章には、こうあります。
「世界に影響を与えることができるのは、われわれが勇敢で中立の立場を守るプロフェッショナル・ジャーナリズムに徹しているからだ。
間違いを犯した場合(実際に犯すことはある)、直ちに完全に訂正をする。何か知らないことがあれば、正直にそう言わなくてはいけない。うわさを聞いたなら、それを追跡し、事実に基づくものだと自信が持てる場合にのみ報道する。
スピードは重んじるべきだが、性急ではいけない。さらに確認が必要なときは、確認に時間をかける。最も早かったとしても、間違っている「スクープ」は回避しなくてはならない。落ち着きある高潔さをもって仕事に向かわなければならない。それは、われわれのルールブックにそうあるからということだけが理由ではない。これまで165年にわたり、それがロイターとしての最高かつ最良の仕事を可能にしてきたからだ。」
ブログ:「ロイター流」のトランプ報道 Reuters Blog | 2017年 02月 2日 19:53 JST http://jp.reuters.com/article/blog-reuters-steve-adler-idJPKBN15H0ZX?sp=true
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6490:170205〕
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