(メール転送です)トリチウムの危険性をごまかして汚染水の海洋放出を促すNHK放送「サイエンス・ゼロ」の「サイエンス・ZERO」(「科学性なし」の意)(2/12 シリーズ原発事故(16) 汚染水との戦い、2/18再放送予定)
- 2017年 2月 17日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
- 2017年2月12日の放送|NHK「サイエンスZERO」
- #Eテレ シリーズ原発事故(16) 汚染水との戦い #サイエンスZERO –
去る2/12、NHK教育TVは、毎週日曜日の夜の定番番組「サイエンスゼロ」で「シリーズ原発事故(16) 汚染水との戦い」(下記参照)を放送しました。タイムリーでいいテーマだなと思って見てみましたが、何のことはない、この放送の内容が、汚染水に含まれる放射性物質のトリチウムに付いて、その危険性をアカデミズムの威を借りて矮小化するひどいもので、まるで東京電力は福島第1原発敷地内に汚染水タンクなどを造っていないで、そろそろトリチウム入りの放射能汚染水を海に捨ててしまえばいい、と言わんばかりの原子力ムラ御用放送でした。
30分の短い放送のうち、トリチウムと汚染水の話は後半の半分で、前半は凍土壁の話でした。こちらも、これまで東京電力や関係者が公表している内容をまとめて放送しいているだけで、そこには何の批判的な観点も新しい着想もありません。そもそもこの凍土壁の効果が怪しいのだということは、工事に着手する前から言われていましたし、案の定、大した効果も出ないまま今日に至っていることから、原子力規制委員会・規制庁は「次の対策」を東京電力に促している様子もあることは放送されませんでした。実際問題、破壊された原子炉の溶融デブリを何とか水を使わないで冷却する方法を、そろそろ模索しなければならないにもかかわらず、それについては全くのノーコメントであるなど、前半部分の放送内容についても「サイエンス」の名に値しないものでした。
この番組は、原発や放射能以外のテーマの場合には、結構興味深いものもあるのですが、なぜ、原発や放射能のことになると、このようにくだらない、あるいは有害な、視聴者の認識を歪めるような内容になってしまうのでしょうか? NHKの現場スタッフも、もう少し「自覚」と「批判力」を持たないといけないでしょう。原発と放射能を「無法地帯」のようにして放置してはいけないのです。(トリチウムについて詳しくない方は、参考サイトも含めて、是非下記をご覧ください)
この番組について、放射能と被ばくに詳しい渡辺悦司さんからいただいたメールを下記に転送いたします。なお、この「サイエンスゼロ」の再放送は2/18のようです。見逃された方はぜひご覧ください。私からは、下記にトリチウム関連のサイトをいくつかご紹介しておきます。みなさまには、くれぐれもかようなインチキ放送・インチキ学者に騙されないようお気を付けください。茨城大学の田内広教授(政府のトリチウム対策専門委員)とかいう御用学者は、私たちの手で超有名にしてやらないといけませんね。甲状腺ガンの山下俊一とならぶ、汚染水の田内広ということです。
http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp572.html
YouTube https://www.youtube.com/watch?v=qcA1D768XiM
(上記は「声」だけです)
(関連)トリチウムを海に流すな、放射能汚染とそれに伴う被ばくについて、きちんとした対策・対応を取れ!!(被ばく翼賛国家の危険な道:福島第一原発トリチウム 経産省が処分期間と費用 海洋放出など初試算) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2016/05/post-8769.html
(関連)トリチウム(三重水素)の恐怖 いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2015/04/post-9414.html
(関連)トリチウムの恐怖 (第2弾):次々と明らかになるトリチウムの危険性と、そのトリチウムを大量に環境に垂れ流す加圧水型原発の許されざる実態(川内、伊方、高浜、玄海、泊、大飯・・・・・) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2016/01/post-a868.html
(田中一郎コメント)
下記に見られるように、我が国でも加圧水型原発の周辺地域ではトリチウムが原因と思わしき白血病の増加が見られます。加圧水型原発は沸騰水型原発に比べると、炉心の温度や圧力が過酷で、その分、核反応を制御するため原子炉にホウ酸を入れ、かつそれが故の酸化防止のために他方でリチウムを入れ(中和剤)、これらが水や放射線と反応をしてトリチウムを大量に発生させるようです。つまり加圧水型の原子炉はトリチウム大量発生型で汚く、かつ原子炉工学的にも(炉内の過酷条件から見て)危険で問題の多い原子炉だということです。経済性ばかりを追求し、巨大で過酷な条件を原子炉内に無理無理でつくっていることが、そもそも原発・原子炉の大事故の元なのです。
(関連)中村隆市ブログ 「風の便り」 – 玄海原発周辺で白血病が増加 全国平均の6倍以上
http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-4139
(関連)泊村の突出したガン死亡率と岩内町の反骨の“市民学者” カレイドスコープ
http://kaleido11.blog.fc2.com/blog-entry-799.html
(関連)中村隆市ブログ 「風の便り」 – ドイツ政府調査 原発周辺で小児白血病が2.19倍の発症
http://www.windfarm.co.jp/blog/blog_kaze/post-4338
(関連)広島2人デモ
http://www.inaco.co.jp/hiroshima_2_demo/
(このサイトの右側上の方に「トリチウム」特集のページがあります)
(1)タンク新設、除染=汚染水との闘い:福島第1公開(東京 2017.2.14)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201702/CK2017021402000112.html
(2)福島第一「原子炉建屋周辺手つかず」、続く高線量に恐怖心(東京 2017.2.7)
http://www.scoopnest.com/ja/user/tokyohotweb/828727684595265536
(3)凍土壁が抱え込んだ1F汚染水問題の困難(浅岡顕 『世界 2016.3』)
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2016/06/post-083c.html
(上記(3)の論文は重要ですので、是非、原本を入手の上、ご覧ください。これをお読みになれば凍土壁はダメだなということがよくわかります。著者の浅岡顕さんは工学博士でこの世界の専門家です:田中一郎)
以下はメール転送です。
NHKサイエンスゼロ「最新報告 汚染水との戦い」/トリチウムの危険性を無視する番組内容
皆さま、渡辺悦司より
NHKEテレの「サイエンスZERO」の『シリーズ原発事故 最新報告汚染水との戦い』を視聴された方もおられると思います。トリチウム(三重水素)については、とくにひどい内容でした。さっそく書き起こしが以下のサイトに出ています。
http://kakiokoshi.hatenablog.com/entry/2017/02/13/010734
茨城大学の田内広教授(政府のトリチウム対策専門委員とのこと)が出演して、放射能としてのトリチウムは「濃度が薄ければ影響は科学的にはほとんどない」と述べるなど、危険性は「ほとんどない」ことが強調されていました。
教授は、ICRPの線量係数を引用して、「トリチウムの影響」は「セシウム137の700分の1」「ストロンチウムの1500分の1」程度なので、「希釈して海洋とか大気に放出する」としても「科学的」には「心配はない」と示唆していました。NHKは、「不偏不党」や「中立」を言うのであれば、当然、トリチウムの危険性を強調している専門家たちの見解も合わせて紹介すべきだったはずです。ですが、一方的な安全安心論の宣伝のみで、トリチウムの危険性を心配する「住民を納得させる」ことだけが問題だと主張されていました。
トリチウムの危険性については、われわれの『放射線被曝の争点』(緑風出版)の第2章に書きましたので、参照ください。トリチウムについてのわれわれの論考は、以下のサイトにもあります。
NHK番組の欺瞞を2点だけ指摘しておきましょう。
——————————————–
(1)なぜ放射能の総量を問題にしないのか?
第1は、トリチウムの濃度ではなく、総量が問題だということです。汚染水は、番組によると、現在タンクに溜まっている量が100万トン、その代表的な放射線濃度は3000ベクレル/ミリリットルとのことなので、タンク内のトリチウムの総量は、およそ3×10の15乗ベクレル(3ペタベクレル)と容易に計算できます。
ですから、もしも番組が言うように、トリチウムの「影響」がセシウム137との比較で700分の1であると仮定したとしても、溜まっている総量は、セシウム137換算で4.3×10の12乗ベクレル(4.3テラベクレル)です。これだけでも、原爆に換算すると、広島原爆の放出したセシウム137(89テラベクレル)のおよそ20分の1です。また、カール・モーガン元ICRP第二委員会委員長によれば、トリチウムの影響は、このICRPの評価の4~5倍とされています(私どもの『放射線被曝の争点』115ページで引用しました)。
ですから、現在溜まっているトリチウムを海洋あるいは大気中に投棄した場合、ICRPのモデルを使っても、セシウム137換算で、広島原爆の約5分の1~4分の1程度の放射能量を放出することになります。広島原爆が放出したトリチウム量(推計11ペタベクレル)と直接比較しても、約3割となります。
タンクに溜まっているトリチウムを海洋投棄した場合は、広島原爆の2~3割という巨大な量の放射性物質を日本近海に、さらには太平洋全体に放出することになると、NHKは言わなければならないはずなのです。アメリカやカナダの西海岸に2年あまりで流れ着きますから、さらには広範囲の太平洋諸島や、インドネシア、フィリピン、台湾、中国、オーストラリア、ニュージーランドなどに波及しますから、これは日本だけではなく、国際問題です。
福島の漁協が了承すれば、放出できるというような単純な問題ではありません。大気中に放出した場合は、さらに危険です。ガスとしてだけでなく大気中の酸素や水と反応して、周辺地域から首都圏を含めた広範な地域に降り注ぐことになります。
——————————————————
(2)トリチウムの特殊な危険性をどうして指摘しないのか?
第2は、トリチウムの危険性は、セシウムなどとは、質的に違う側面があるという点です(詳細は私どもの本や添付ファイルを参照ください)。ひとつには、番組では、トリチウムの出す放射線の「エネルギーが小さい」「飛程が短い」ことが「危険が小さい」ことの論証としてあげられていました。しかし、これは正反対であって、エネルギーが小さいほど、DNAや細胞の各組織を構成する諸原子と反応しやすいと考えるべきです。この点は、悪名高いICRP2007年勧告にさえも、オージェ放射体との類似性として指摘されています(228ページ)。さらに、トリチウムは、細胞内で、DNAを構成する核酸の各種材料物質(DNA前駆体)において水素と入れ替わり、細胞が分裂する際にDNAの内部に深く取り込まれます。
そこで、崩壊すると、主に3つの形態で、DNAを損傷します。
a)放射線(ベータ線)を照射することによる直接的破壊も、
b)放射線が生みだす活性酸素やフリーラジカルによる間接的破壊も、
DNAの内部あるいは周辺で起こる可能性があるという点です。それだけではありません。
c)DNAの構造を支えている水素結合部位でトリチウムがヘリウムに壊変した場合、その位置で水素結合を切断し、DNA二本鎖が架橋するなど、修復が難しい形の損傷を及ぼす可能性があります。
これらの点、この最後の(c)については、他の放射性物質にはない損傷の経路です。
ちなみに、私はこの間ICRPの二面性と二律背反を強調してきましたが、これらの内容は、すでにICRPの2007年勧告でさえも議論されており、採用することは何の論拠も挙げずに拒否していますが、今後に検討すべき課題とはされています(228~229ページなど)。トリチウムについての「科学的な議論」をいうのであれば、当然これらの議論を、最低でも取り上げるべきです。出演者田内氏は、放射線生物学の専門とされており、この点を知らなかったはずはありません。 http://tauchilab.sci.ibaraki.ac.jp/http___tauchilab.sci.ibaraki.ac.jp_radbiol.htm/Welcome.html
そのような議論を知っていながら無視し、「影響はほとんどない」「心配ない」とだけ強調したのですが、表舞台に出てくる政府系の学者達が、かの悪名高いICRPと比較しても、それ以下であり、デマゴーグに近くなっているということを、今回もまた自己暴露したのです。これは誰が見ても、最初に結論ありきの番組作成であると感じるほかありません。
以上、私の印象ですが、これらの問題に詳しい方がおられると思いますので、ぜひ追加のコメントをお願いします。
=================================
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6510:170217〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。