不安だらけの2020東京オリンピック
- 2017年 2月 24日
- 評論・紹介・意見
- オリンピックマイナンバー小原 紘
韓国通信NO517
韓国の平昌(ピョンチャン)で開かれる冬季オリンピツクまで1年。ソウル市庁舎前にカウントダウンの時計が設置された。
去る9日、NHKニュースはソウルの街の表情と、冬季オリンピックに5割近い人が「無関心」と答えた世論調査を紹介し、「こんなに無関心で大丈夫?」と心配していた。
隣国のオリンピックに親切に気を配る「ゆとり」。3年後の東京オリンピックには問題はないのだろうか。NHKの「ノーテンキ」ぶりに呆れ果て今回の「通信」のテンションは上がった。
<怒りの声は無視されて>
オリンピックが東京に決まった直後、「信じられない」と怒りで口を震わせた福島の友人がいた。2013年、原発事故から2年、福島は原発の恐怖のどん底にあった。彼には日本中が誘致成功の喜びに湧いているのが悪夢のように感じられたようだ。喜色満面、得意げな安倍首相の「アンダーコントロール」という言葉から福島が「切り捨てられた」のを感じ取り深く傷ついた。
高濃度の放射能による汚染は続いている。事故は収束されないまま、被災者たちの涙と絶望を踏みつけ、オリンピックの準備が進んでいる。
<「原子力緊急事態宣言」はいまだに解除されていない>
「アンダーコントロール」は2013年の流行語大賞の候補に挙がった。真っ赤な嘘を大賞に選ばなかったのは首相に対する「気兼ね」、最近よく耳にする言葉では「忖度(そんたく)」だった。事実、その「嘘」は垂れ流しの放射能とともに実証され続けてきた。
福島第2号機格納容器で検出された650㏜の放射能は衝撃的だった。ロボットさえ手が出ない天文学的高濃度の放射能である。廃炉作業のメドも全くつかない。このまま放出が続けばどうなるのか。大気汚染はさらに広がり、避難解除どころではなくなる。
最悪のシナリオをたどるとオリンピックどころでない。地震も心配だ。こんなことを言うと、「何もできなくなる」と反論されそうだが、不安を無視して国全体が無邪気にオリンピックにのめり込む方が心配だ。安全を「保証しない」規制委員会が次々と原発の再稼働を認めていることも心配のひとつ。原発が増えた分だけ事故の可能性は増える。
<戦争になったらオリンピックはできない>
1940年の東京オリンピックは日中戦争のさなか、日米開戦の直前に中止になった。
戦争ができる国にしたいという安倍晋三の夢は南スーダンへの自衛隊派遣で実を結びつつある。彼の「愛国心」は北朝鮮、中国との戦争も視野に入れたもので危険このうえない。恒久平和を誓った憲法をかなぐり捨てる動きも切迫している。オリンピックと戦争を同時に行うことは考えられない。商業主義に染まり利権うずまくオリンピックとは云え、まじめにオリンピック開催を考えるなら平和志向に徹するべきだ。軍備の拡大と日米の軍事同盟の強化では戦争の抑止にはならない。真逆である。憎しみと不信を駆り立て、戦争をした過去の教訓を学びたい。戦争とオリンピックのどちらを選ぶか冷静に考えたい。
<テロの危険>
2001年9月11日に起きた「同時多発テロ事件」以来、多くの先進国はテロに苦しんできた。テロ事件のすべてをイスラム過激派集団の仕業とするのが一般的な理解だが、貧富の差が極端に二分化された社会ではテロはどの国でも起こりうる。トランプ米大統領に無限にすり寄るわが国がイスラム過激派の標的になる可能性は高くなった。くわえて先が見えない不満が鬱積した社会はテロの温床だ。わが国にもテロが起きる可能性は否定できない。
「だから」と首相は強い口調でテロからオリンピックを守るために「共謀罪」から名を変えた「テロ等準備罪」を主張するが、国民の不満を権力で抑え込むのは本末転倒だ。テロを心配するなら、とりあえず安倍首相が退陣するのが最善のテロ対策のように思える。
2020年までに何が起こるかわからないが、戦争と原発とテロ対策に無自覚なまま突き進んでいくのは怖ろしい。
自分の生活と国内外の政治に不安を抱く韓国の人たち。それを克服するための市民革命進行中の韓国にオリンピックにあまり関心がないと心配するNHKの頭の中も心配だ。
<ふるさと納税>
確定申告のシーズンである。わずかばかりの所得税の還付請求をするために毎年確定申告をしている。収入が年金だけなので申告は簡単だが、「ふるさと納税」をしているので申告書第二表の寄付金に記入、第一表で所得から引かれる金額の寄付金控除の欄に計上する。還付されたお金を次年度の「ふるさと納税」として振り込むのを毎年繰り返している。
この二、三年「ふるさと納税」が脚光を浴びている。寄付金を受けた各自治体が「お礼」として地域の特産品などを競っているのが話題になり、「ふるさと」でもないのに「お礼」につられて寄付をする人が多いらしい。2千円は持ち出しになるが残りの寄付金がそっくり次年度の税金が軽減される仕組み。寄付としては「せこい」感じは免れない。
この数年、私が寄付を続けているのは沖縄県の名護市である。辺野古基地に反対する名護市に政府が交付金を払わないという「兵糧攻め」を聞いて応援のつもりで「ふるさと納税」を始めた。市役所からは市長名の「お礼」の手紙とともに去年はバンフ「米軍基地のこと辺野古移設のこと」「名護市の米軍基地のこと」が送られてきた。「アッパレ!!」である。寄付者の名前、金額が市のホーム・ページで公開されている。暖かい辺野古基地反対へのメッセージがとても感動的だ。毎年、件数も金額もうなぎのぼりで増え続けている。
<マイ確定申告>
今回の確定申告で困ったことが起きた。マイナンバーの記入が求められたからだ。
ひとりひとりに番号を割り当て、個人のふところ具合を把握する狙いらしい。金持ちには厳しくすべきだが庶民まで一網打尽とは納得がいかないうえに、本当の狙いはさまざまな個人情報をリンクさせて、国による個人情報の一元的管理をするというとんでもないマイナンバー制度に私は反対だ。国民の不安にもかかわらず強行導入されたのは記憶に新しい。
マイナンバー制度に反対して確定申告書にマイナンバーを記入しないと還付が受けられないとは。
封も開けずに放置したままの「通知書」を開くのもシャクで空欄のまま提出した。友人に話すと「確定申告は受理されないはず」と言われて少し動揺した。
受信料を払うのは義務というNHKと10数年来論争を続けてきたが、今度は手ごわそうな国税庁が相手である。これまで平穏な市民生活を送ってきた一市民として国家を相手に理論闘争をせざるを得なくなった。
マイナンバー制度はこれからさまざまな場面で問題が生じてきそうだ。例えば自動車の免許更新、パスポートの更新、さらには介護の申請など公的サービスにもマイナンバーが絡んできそうで正直なところ、ため息が出そうだ。しかし、これまでマイナンバー抜きでも受けられた公的サービスが受けられなくなることが問題で、国による一元的な個人情報管理に屈服しなければ国民の権利が行使できない仕組みこそ問題のはずだ。
皆さんのご意見をお聞きしたい。
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