トランプと難民(続)ーーサルマン・ルシディと湾岸諸国
- 2017年 3月 4日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
ホメイニ師によって死刑宣告されたサルマン・ルシディも中東難民のヨーロッパへの大量流入に関して、ペルシャ湾岸諸国の静観的姿勢を問題視・疑問視する例外的知識人の一人である。セルビア国営放送の一記者がルシディとインタビューすることが出来た。所は、ニューヨークのある魔天楼21階の一室、可能なる暗殺者から隠れ住む部屋にて。セルビアの日刊紙『ポリティカ』(2017.1.6/7)に載っていた。私の小文「トランプと難民」と交叉するところだけ紹介しよう。
記者:アジアからヨーロッパへ難民が大量に流入する。豊かなヨーロッパ人は安全を求めてオーストラリアに移住する。世界が変わりつつあるが。
サルマン・ルシディ:難民達は自分の国々で生活が脅かされている、だから逃げる。原因を除かなければならない。そのほかに、アラブ諸国が同じ言葉をしゃべる人々を受け容れないのは何故か、と問うことが出来る。アラビア語が話され、同じ宗教システムがあるペルシャ湾岸諸国が難民を引き受けないのは何故か。この問題に関して真剣に議論できるはずだ。
印度のムンバイ(=ボンベイ)に生まれた英国籍の印度人作家、そして自作の『悪魔の詩』の故にマホメッド侮辱罪でアヤトラ・ホメイニ師によって死刑判決を受けて20余年逃避しつつ、作家生活を続けて来た人物だ。私達のように軍国主義で「成功」し、一転大失敗して、植民地から大量難民として帰国し、戦後70年 勝者米国の下で経済的に成功した日本社会で生きて来た者にはつかめない真実を中東難民問題についてつかんでいるのかも知れない。
専門家の教えを乞う。
平成29年3月3日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6550:170304〕
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