「アベ友学園疑惑」解明阻止のための「会計検査院丸投げ」の術
- 2017年 3月 6日
- 時代をみる
- 澤藤藤一郎
「隠すよりあらわるるはなし」(莫見乎隠)とは至言である。派生して、「隠すこと千里」「隠すほど知れる」「隠すより現わる」「隠せばいよいよ現わる」などともいうようだ。古今東西、権力者は知られたくないことは隠す。もちろん、やましいところがあるからだ。しかし、隠せば隠すほど、かえって疑惑を大きくし、隠したものの印象が強く深くなる。
アベ友学園問題が事件となった発端が、木村真豊中市議の国有地売却問題情報公開請求だった。近畿財務局の公開文書が黒塗りだらけで、驚くべきことに売却金額が非開示とされていたのだ。2月8日、同市議は「国有地の売却価格に関する情報を非開示とした近畿財務局の決定」の取消を求めて大阪地裁に行政訴訟を提起した。これをきっかけに、朝日が2月9日に最初の報道をした。
さらに驚くべきは、関連文書が破棄されて存在しないという。意図的な隠蔽との批判を甘受するしかなかろう。すべての情報が最初は隠され、隠しきれなくなると小出しに明らかにされる。だれもが、「やっぱり隠したいことがある」「その裏に、やましいところがあるにちがいない」と考え、小出しに明らかにされたことの積み重ねによって、疑惑は次第に不当ないし違法の確定となりつつある。
知られたくないことを聞かれて、防戦しようとする際のアベの常套手段が、質問者に「レッテル貼り」というレッテルを貼ること。そして、「印象操作」(あるいは「イメージ操作」)という言葉を投げつけることでの意図的な印象操作。いずれも愚策である。質疑を聞いている国民の耳には、「やっぱり隠したいことがあるのだ」「その裏に、明らかにしたくないやましいところがあるにちがいない」と聞こえてしまうのだから。
「あなたたちはすぐにそうやってレッテル貼りをしようとしている。この問題についてもですね、まるで、まるでわたしが関与しているがごとくの、ずーっとそういうですね、えーイメージ操作をこの予算委員会のテレビつきしつぎの時間を使ってですね、えんえんと繰り返していますが、みなさんそれが得意だし、それしかないのかもしれない。それしか、ま、ないのかもしれませんが、隠ぺいというのはですね、隠ぺいというのはー、隠ぺいというのはじゃあ、わたくしが隠ぺいしたんですか?」という具合だ。
アベが相手をおとしめる常套句の一つに「恥ずかしい」がある。しかし、こんな答弁しかできないお恥ずかしい首相をもつ日本国民の方が、よっぽど「恥ずかしい」。
もちろん、まだ徹底した疑惑解明には道半ばである。疑問の一つが分かると、さらに二つの疑問が出て来るというのが、この「アベ友学園疑惑」なのだから。この疑惑を徹底して解明できるか否かに、日本政治の自浄能力が問われている。
今、疑惑解明手続の焦点は、国会(参議院予算委員会)への参考人招致の実現である。関連文書が不存在である以上は、疑惑の解明には当事者の証言が不可欠なのが当然。籠池夫妻とアベの妻、そして当時の理財局長は、参考人招致に不可欠と言わねばならない。アベの妻に遠慮する必要はない。都合悪くなるまでは、首相夫人の肩書を最大限利用してきた人ではないか。公人として取り扱って何の不都合もない。参考人招致に消極的な姿勢は、かえって疑惑を大きくすることになる。
強調しなければならないのは、解明すべき疑惑の内容が、けっして国有財産処分価格の適正性にとどまらないことだ。むしろ、ここを出発点に政治的な疑惑解明を進めなくてはならない。アベ友学園の教育内容についての法的な評価も、このような反憲法的教育に感動したアベ夫妻の資質も、アベ夫妻との関係あればこそと思われる異例の(ただ同然の)国有財産払い下げのからくり。その経過と背景を、参考人によって具体的に解き明かさねばならない。
この解明を妨害し、参考人招致を防止しようという策動が、「すべてを会計検査院にお任せしよう」というアベ陣営の「会計検査院丸投げ作戦」である。
しかし、会計検査院の職責は、あくまで会計経理が正しく行われているかの監督に尽きる。これを離れての権能はない。国有財産処分価格の適正性以外の疑惑解明は、そもそも会計検査院の任務にはなり得ないのだ。この問題を会計検査院に丸投げしようというのは、アベ夫妻と口利き政治家免責の策略である。
いま、「アベ友学園疑惑」を通じて、国民はアベ政権を見つめている。「隠すよりあらわるるはなし」とつぶやきながら。国民はさらに目を凝らして見つづけている。だれがこの疑惑解明に熱心で、だれがおざなりであるかを。疑惑解明に手を抜く者は、「やっぱり隠したいことがある」「やましいところがあるにちがいない」のだ。
(2017年3月5日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.03.05より許可を得て転載
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