「ふるさとを捨てるのは簡単」(今村復興大臣)に唖然
- 2017年 3月 14日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2017年3月12日
避難者の窮状を逆なでする発言
今日のNHKの正午のニュースを視ていたら、午前中に行われたNHKの日曜討論の録画が字幕入りで放送された。
「帰還困難区域 復興相“帰還しやすい環境整備を急ぐ”」 (3月12日 11時56分) http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170312/k10010908151000.html?utm_int=all_side_ranking-social_004&nnw_opt=ranking-social_a
すると、今村復興大臣はこんな発言をした。(上の録画開始から13秒後以降)
「ふるさとを捨てるのは簡単だが、戻ってとにかく頑張っていくんだという気持ちをしっかり持ってもらいたい。」
住民が帰還しやすい環境の整備を急ぐ考えを述べる中での発言であるとはいえ、「ふるさとを捨てるのは簡単だが」は何事か! ふるさとを離れ、避難生活をしている人たちは好んでふるさとを捨てたとでも思っているのか?
そもそも大震災・福島原発事故から6年経った今になって、国が避難指示を解除したからと言って住民が帰還するというものではない。このあたりの事情はNHKの次の記事からもある程度まで窺える。
「WEB特集 一部解除 避難区域の将来は?」(3月10日 16時23分) http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2017_0310.html?utm_int=detail_contents_tokushu_001 たとえば、福島県では3月31日に浪江町と飯舘村、川俣町山木屋地区で、4月1日に富岡町で、それぞれ帰還困難区域を除く地域の避難指示が一斉に解除されるが、復興庁が住民に対して行った帰還に関する調査では、戻りたいと答えた人の割合は、最高の川俣町でも40%、富岡町で16%、浪江町で17.5%、飯舘村で30%にとどまっている。
特定の点なり面なりの放射線量が一定水準以下に下がったと言っても、原発の安全性や放射線への将来不安が消えるわけではないし、住宅の確保、日常の行政サービスや、商業施設、医療、介護などのインフラ整備が進まない状況で国策として帰還を「勧める」のは文化的な最低限の生活を無視した棄民政策と言っても過言ではない。
国策に従うかどうかで補償を線引きする棄民政治
こうした中、福島県楢葉町では町長が「町に戻らない職員は昇級させない」と発言したことが町議会で問題にされた。
「<避難解除>帰町しない職員 昇格させない」 (『河北新報』3/7(火) 11:19配信) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170307-00000009-khks-pol 緊急時へ備えとして職員の多くが町外に居住する状況を解消しようとする意図は分からなくはないが、職員の居住地を昇給と絡めるのはやはり問題である。 しかし、それ以上に問題なのは、そこまでしなければ公務員さえも臨機応変に配置できないほど行政サービスが未整備の状況で放射線量の水準だけを目安に、補償金支給の打ち切りを絡めて帰還を促す国策である。
こうした背景の中で復興担当大臣が「ふるさとを捨てるのは簡単だが」と発言し、「帰還できるよう頑張れ」と説教するのは、国策に従うかどうかで補償の線引きをする棄民政治と表裏の関係にある。政治的意味では務台政務官の「長靴業界儲かった」発言よりも悪質である。
かさ上げ工事が続く女川町駅前(2016年5月)
初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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