「総理大臣には憲法尊重義務がある――国民は「臣民」ではない」
- 2017年 3月 18日
- 時代をみる
- 憲法村上良太
安倍首相は憲法改正運動の中心に位置する政治家の一人である。日本国憲法ではダメだ、というのが安倍首相の考え方であり、日本国憲法が基盤となった「戦後レジーム」からの脱却を政治の目標としてきた。
しかし、いかに政治家としての信念があろうと、日本国憲法のもとで首相になっていることに変わりはない。日本国憲法は法律よりも上に位置する最高法規である。そして憲法99条はこう述べている。
【憲法99条】
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
国会議員も大臣も裁判官も公務員も、たとえ現行憲法が好きではないからと言って、憲法を軽視することは許されない。もし自衛官たちが憲法が好きでないからと言って、武装して海外で勝手に闘い始めたら、自衛官としては解職されるべきだろう。しかし、中でも総理大臣は常々、安倍首相が口癖にしているように、行政の最高責任者である。つまり、最も憲法を順守しなくてはならない立場にある人間ということだ。総理大臣が憲法を順守しなくなったら、国民はどうなるのだ。みんな勝手に自分の好きな憲法観で行動し始めたら、国の秩序は崩壊し、武力と金力のある者が人々を奴隷にして支配する時代になるだろう。
安倍首相は教育勅語を児童に唱えさせる塚本幼稚園を営む森友学園に寄付をしていた、と籠池理事長が発言した。「安倍晋三記念小学校」と一時は命名された新設の小学校のためだったというのだ。安倍首相はその発言を否定したと報じられている。その真偽は国会で明らかにされなくてはならないだろう。
教育勅語は稲田朋美防衛大臣が熱烈に推奨している戦前・戦中の道徳律である。教育勅語は天皇が支配下の「臣民」に説いて聞かせる道徳だった。久しく、耳にすることもなかった臣民とは何なのか。
【臣民】
君主に従属するものとしての国民(新明解国語辞典)
大日本帝国憲法のもとでは主権は天皇にあり、「臣民」は君主(天皇)に従属する存在だった。天皇が統治者であり、臣民には主権がなかったのだ。教育勅語にはその考え方が凝縮されている。政治学の知識も皆無の児童に、「臣民」という主権なき「自我」を植え付ける教育は明白に憲法違反である。これを推薦するということは防衛大臣もまた憲法違反である。だが、最も憲法順守義務を模範となって守るべき人物は総理大臣である。もし安倍首相が憲法に背く教育を行う森友学園を応援していたのだとすれば、主権の存する日本国民に対する信義に背く行為である。もし行政の最高責任者が憲法の背骨である国民主権を尊重しなかったならば辞職はやむを得ないだろう。
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