籠池氏に限らず、迫田英典氏、安倍昭恵氏も証人喚問を
- 2017年 3月 24日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2017年3月20日
籠池発言を逆手に取った幕引きを許さないために
籠池・森友学園理事長の「安倍首相から100万円の寄付を受けた」という発言は爆弾発言には違い。これまで籠池氏の参考人招致さえ、「何をしゃべるかわからないから」と拒んでいた自民党が一転、証人喚問に踏み切ったのは、それだけ追いつめられた証しといえる。
しかし、自民党としては、単に切羽つまって、というだけでなく、森友学園問題を100万円授受の認否に限局し、籠池発言を逆手にとって、「喚問したけれど、決め手になるような事実は出なかった」として一気に問題全体の幕引きを強行する狙いがあると思える。
そのような幕引きに向けて、安倍首相周辺・自民党は、100万円寄付を安倍夫妻が「全面否定」し、寄付の物的証拠(領収書、寄付者名簿への記載)がないことを盾に、事実否認を押し通す構えである。
23日の証人喚問の時に籠池氏がどのような「物的資料」を出すのか注目される。籠池氏の証人喚問は籠池氏・安倍氏双方にリスクが伴うと論評されているが、安倍氏・自民党国対の強気の裏側にあるリスクを法律専門家の立場で分析した郷原信郎氏の次の記事が大変、参考になる。
「籠池氏証人喚問は、自民党にとって『危険な賭け』」
(郷原信郎 2017年03月17日 13:04)
http://blogos.com/article/214494/
郷原氏が言うように、安倍首相・自民党側は、偽証をすれば刑事罰を科される証人という立場に籠池氏を追い込み、安倍夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受けたとの証言を撤回させるか、それでも証言を維持するのであれば、偽証罪で告発して籠池氏の証言が嘘であることを司法の場で明らかにしようという意図があると考えられる(おそらくは前段の威圧・牽制が狙いと思われる)。
しかし、籠池氏がかりに物的証拠なしでも、偽証の制裁を覚悟の上で、昭恵夫人から100万円受け取ったとの発言を維持し、自民党側がそれを虚偽だとする明確な反証を示すことができなかったとしたら、証人という立場で行う籠池氏の発言(証言)が重みをもつことになり、安倍首相・自民党は逆に窮地に追い込まれる。
問題を「100万円の寄付の認否」に収斂させてはならない
しかし、森友学園問題のなかで、安倍氏の「100万円寄付の認否」に焦点を収斂させてはならない。究明すべき問題の核心は次の点である。
①安倍首相-財務省理財局・航空局-大阪府(知事、教育庁)ルートの異例づくめの土地売却、学校認可、記録廃棄の真相解明
②安倍夫妻、稲田防衛相、鴻池議員などの国会議員が違憲の「教育勅語」すり込み教育に協賛し、入学生募集などで広告塔になってきた責任の究明
安倍・迫田会談の真相解明
2015年9月3日から5日にかけての安倍首相の動静を究明する必要がある。
9月3日 安倍首相、迫田英典理財局長(当時)と会談
9月4日 10:00~12:00、近畿財務局、大阪航空局、森友学園小学校建設施工業者が「森友学園小学校新築工事に伴う土壌改良工事」の件で打ち合わせ(於:近畿財務局9F会議室)
この日の「打ち合わせ記録」によると、近畿財務局は業者に対し、「借り主との紛争を避けたいので〔大量の生活ゴミを〕場内処分の方向で協力お願いします」と働きかけたと記されている(佐川理財局長は国会答弁でそのような指示を否定)。
また、この日、国交相から森友学園に対し、最大で6,194万円の補助金支給が決定されている。
なお、この日、安倍首相は安保関連法案が大詰めを迎えた国会を欠席して大阪入りし、大阪読売テレビの番組収録と「情報ライブ ミヤネ屋」に生出演している。
9月5日 昭恵夫人、塚本幼稚園で講演。この時、同幼稚園の名誉校長に就任。籠池理事長はこの時、昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受けたと発言している。
特に、9月3日、安倍首相が、財務大臣なり財務省事務次官なりをさておいて、理財局長と会談したのは異例のことだ。当時、首相が局長に直に会って聞かなければならないような理財局絡みの重要案件があったのか? この日の会談内容と翌日の近畿財務局の動きとは無関係なのか? 面談記録を添えて、その時の会談内容を明らかにする必要がある。
近畿理財局・大阪航空局・大阪府教育庁間の協議内容の解明
森友学園の小学校新設に向けた経緯は次のとおりである。
地元大阪府で、森友学園の小学校用地の確保と小学校認可の関連をめぐって近畿理財局・大阪航空局・大阪府(教育庁)の間で、どのような交渉があったのか、そこに中央行政庁や政治家から何らかの指示、口利きがなかったのか、を解明することが不可欠である。
この間の状況について松井大阪府知事は次のように語っている(2013年3月16日、TBSニュース23)
*「国の売り渡し審議会にかけるために府として〔認可の〕見込みを発表してくれと言われたから、あえて国からそういう形で府の私学課に何度も足を運んで・・・・」
*「本当に国が〔土地を〕売るなら私学として〔認可は〕ありえると返事した。」
また、同じ3月16日に放送された『報道ステーション』は松井知事が次のように語ったと伝えた。
*「安倍総理が総理大臣ですから、その奥さんが名誉校長をされている学校に対して、その申請に対してはね、受ける側の職員さんが、この申請がうまくいくようにね、いろいろと親切な対応をしたと。
こういうふうにしてあげたほうが上司助かるんじゃないかと、勝手に思ってみんな人は動くものじゃないですか。」
松井知事の発言が実状だったとすれば、安倍昭恵氏は安倍首相の分身として「教育勅語」を刷り込む時代錯誤の「愛国教育」に協賛し、広告塔の役割を担ってきたことは明らかで、その責任は計り知れない。
近畿財務局、大阪府教育庁が、ずさんな財務状況、虚偽の書類で認可申請をした森友学園に、私学審議会でも疑問が続出した中で異例づくめの便宜を図った背景にはどのような「力」が働いたのか、徹底した交渉経過の解明が欠かせない。
違憲の「教育勅語」暗唱教育に協賛した安倍夫妻の責任は重大
この点は、これまでの記事でも触れてきたが、3月13日、安倍首相は参議院予算委員会で小川敏夫氏から、「森友学園に行って講演をする約束をしたことはないか」と問われたのに対し、「日程があえば行きたいと申し上げた」と答弁した。
それと国有地の売却問題は無関係と安倍首相は付け加えた。しかし、この答弁は安倍首相が教育基本法違反の「教育勅語」を暗唱させる森友学園の教育方針を後押しする意思があったことを物語るのに十分な証拠である。
また、現職の総理大臣として安倍氏自身が講演を引き受けるのを見合わせた代わりに昭恵夫人が安倍首相の分身として講演を引き受け、名誉校長に就くことによって生徒募集などの面で森友学園の広告塔としての役割を果たしたことは動かせない事実である。
しかも、昭恵夫人が講演の中で、「せっかくここ〔塚本幼稚園〕で芯ができたものが(公立)の学校に入った途端に揺らいでしまう」と語り、公立学校教育の存在意義を否定するかのような発言をしたことは重大な問題である。
昭恵夫人、迫田元理財局長の証人喚問が欠かせない
「違法性がない」、「私人だから」、「面白いから呼ぶのは国会ではない」などと言って自民党は籠池氏を参考人として招致することさえ拒んできた。ところが、籠池氏が、昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受けたと発言したのを「首相に対する侮辱」(竹下国対委員長)とみなし、一転、自ら証人喚問を提案した。「侮辱」かどうかはこれから国会が解明することであって、竹下氏が断定できる話ではない。そもそも首相への「侮辱」を晴らす場として証人喚問を利用しようとするのは国会の私物化である。まして、100万円の真偽は森友学園問題の一部に過ぎない。
それにしても、100万円の寄付の真偽を究明するには籠池理事長の発言の真偽を明らかにする必要があり、そのためには籠池氏が、安倍首相からの寄付を同氏に手渡したとされる時の状況を確認するため、もう一方の当事者である昭恵氏に対する調査が欠かせない。
また、昭恵氏には、塚本幼稚園で名誉校長に就任した経緯、「教育勅語」を刷り込む森友学園の教育に協賛し、公立学校の教育を否定する発言をした理由と責任を確かめる必要がある。
さらに、迫田氏には、当時の近畿財務局、大阪府、同教育庁とのやりとりも含め、国有地が破格の金額で森友学園に売却された経緯を質すことが不可欠である。
また、松井大阪府知事には、近畿財務局や大阪航空局からどのような働きかけ、示唆があったのか、松井氏なり大阪府教育庁、私学課は昭恵夫人が名誉校長に就任していることをどのように忖度したのか、そうした働きかけなり、忖度なりが森友学園の小学校認可にどう影響したのかを徹底的に質す必要がある。
以上のような疑惑を解明するには、私人としての籠池氏を証人として喚問することとの衡平上、また、疑惑解明のカギを握る人物という意味から、公人たる昭恵夫人、迫田氏、松井氏を証人として国会に喚問するのが当然である。
初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔eye3966:170324〕
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