消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(2) 消防団への寄付
- 2017年 4月 11日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
私の住む自治会でも、数年前から「消防団協力金」が計上されていました。10内外の近隣自治会の委員で編成するまつり実行委員会に振り込まれ、2日間の夏祭り会場の警備への返礼ということらしく、各自治会の会員数で割り当てられていました。かつて市内の自治会における社協・日赤の寄付の実態を調べた折、かなりの自治会が「消防団協力金」「消防団後援費」のような名目で、消防団への寄付がなされているということは知っていました。それも、一戸当たり千円から数千円の例もあり、消防分団に数十万円単位で渡していることも知って、驚いたことがありました。我が自治会にも、わが家にも降りかかってきたので、少し調べてみました。
消防庁では
まず、消防庁に電話すると、地域防災室に回されました。消防団の根拠は「消防組織法」にあり、非常勤地方公務員ということで、すべて市町村の条例で決められている。消防団員は普段仕事を持っている人たちなので、特別職で、地方公務員法がすべて適用になるとは限らない。消防団本来の活動ではなくても、地域との関係で、各種の業務に携わることがある。その間での金品の授受は、両者の問題だという認識を示しました。横浜地裁判決の話をすると、たしかに、寄付の授受を見直す市町村も現れている、といいます。違法が疑われるのですから、もっと積極的に取り組んでください、と要望しました。
佐倉市危機管理室消防班では
交通防災課の危機管理室消防班の班長に話を聞きました。以下はその主なやり取りです。
①消防団員は地方公務員ですよね。
そうです。
②公務員は寄付の類を受け取るのは違法ですよね。
はい。
③私たちの自治会は自治会財政から、「消防団協力金」というものが支出されています。
これは、消防団への寄付ですよね。
自治会と消防団との話し合いで決めたことなので、行政は関知していない。
④現実に、寄付として消防団員に渡っているので、禁止しないといけないのではないですか。市は、容認、放置するのですか。
いや、消防団とは「寄付を請求してはいけない」と申し合わせている。
⑤「請求してはいけない」けれど「受け取ってもいい」ということなのですか。
消防団は、公務以外に、地域における様々な行事への協力をしていて、そうした仕事への労い、感謝の気持ちを受け取ることは問題がない。
⑥消防団としての活動を依頼し、消防団として仕事をしている以上、また、公務以外の活動であっても、その活動で報酬を得ることは違法だし、横浜地裁判決を読んでいますか。
承知している。
⑦佐倉市は、消防団・団員への寄付を容認するのですか。
公務外の仕事への謝礼の気持ちは、伝統的にも、歴史的にも慣例となっているから問題はない。
⑧でも、全国各地で、法律や判例に従って、寄付を廃止している自治体があるのはご存知ですか。
承知している。繰り返しになるが、市としては、公務以外なので問題はない。
⑨慣例や歴史が現行法の上位にあるのは問題です。ところで、市は、団員に報酬を出している以上、消防団から事業計画・報告、予算決算の報告は受けていますよね。
はい。7つの分団の下に53の部というのがある。年間で、分団に4万5千円、各部に5万4千円、の補助金を出しているので、その分だけの決算報告はで出ている。役職によって異なるが、役職のつかない9割の団員には年間3万円、出動回数1回につき1500円となる。
⑩補助金を出している以上、全体の事業や財政をチェックしなくていいのですか。
それはやっていない。
佐倉市財政課では
佐倉市の「補助金等一覧」には、補助金と交付金の区分があるのが分かり、「消防団連合協議会交付金」として、運営費年間380万円が出ていることが分かりましたので、問い合わせました。
①補助金と交付金の区分の根拠は何か。
「補助金等交付基準」により、行政の代行的な業務への補助金として「消防団連合協議会交付金」を、本部・分団・部の運営費として、定額(全額)補助をしている。
②特別職としての報酬、消防費としての設備費などの他に、さらに交付金として予算を付けられている消防団が、住民、自治会などから寄付金を受け取るのは、違法ではないか。
それは、消防団と自治会との関係で、消防団が自治会でどんな仕事をしたかの実態は把握していない。
③自治会と消防団とがどんな関係か、実態を把握していないことが問題なのではなく、消防団が寄付金を受け取っていること自体が問題でなのではないか。
消防団が、金をくれと言っているわけではないのだから。
④請求すれば問題だが、受け取る分には問題がないというのが財政課の見解か。
難しい問題で、消防団の担当の方にもきいてみる。
⑤当方は、すでに消防団の担当には尋ねている。全国的に見ても、消防団への寄付を一切廃止している自治体も増えている。横浜地裁の判決は知っているか。それが判例となって、各地で見直されているなかで、佐倉市は出遅れていて、訴訟が起きてもおかしくない。
それは知らない。これから勉強する。
釈然としないまま、電話を切り、あらためて、市役所のホームページから以下を調べてみました。各資料を読んでの私の問題点を付記しておきます。
a)「佐倉市消防団の概要」 (付「佐倉市消防団条例」など)
多額の消防予算が計上されていることを改めて知りました。2016度では26億6000万円で佐倉市の総予算の5.7%で、消防組合への負担金が大部分ですが、消防団に係る予算は、7031万、その中に報酬費が5000万、交付金が323万です。「補助金」は、最高二分の一補助などの条件が付きますが、交付金は渡し切りで、事後の報告のみで足りるとのことで、使い勝手がいいことになります。市議会議員の「政務調査費」も「交付金」です(14頁)。団員は現在754人です。なお、消防団条例には、階級・規律・懲戒事項はあるのですが、団員の「遵守事項」というのが、抜けていることも分かりました。それを補うものかどうかわかりませんが、「概要」には「4.消防団について」の項目があり、以下のように記されています。
(1)消防団員の身分・仕事・権限
[1]消防団員の身分
3.消防団員は社会に奉仕する団体である
②消防活動に対して何らの代価も求めない。
b)『自治会長町内会長・区長の手引き』H28年度版(47~48p、佐倉市の消防活動)
http://www.city.sakura.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4954/28yakuintebiki.pdf
驚いたことに、想定問答集「消防団の後援会費というのはどういうものなのですか」に「後援会費につきましては、地域の方が、同じ地域の中で仕事を持ちながら消防団活動に従事されている方々の労をねぎらうために支援をされているものと考えます」と、佐倉市の見解が示されていました。「地域の厚意による任意のもので強制・義務的なものではありません」との説明もありました。しかし、これは、確実に地方公務員である消防団(員)への金品の授受を、佐倉市は地域の人々による「慰労」であり、地域の「厚意」として公認していることになります。そして実態は、地域の住民ひとりひとりの「厚意」と言いながら、自治会などでの一括集金や一括納入を黙認していて、二重の意味で違法性が高いと言えます。
市の消防班の見解は、「消防団への寄付」は、「公務以外に、地域における様々な行事への協力」への「労い、感謝の気持ち」という回答がありましたが、上記「消防団の概要」の「4.消防団について」においては、火災発生時以外の①~④も公務として挙げられています。佐倉市の消防班が例に挙げた「祭りの警備」などは、2-②に該当するのではないでしょうか。
(1)消防団員の身分・仕事・権限
[2]消防団員の仕事
1.火災発生時①~④
2.災害発生時以外
①火災発生予防
②警備警戒活動
③教育訓練活動
④機械器具等の点検
c)佐倉市補助金一覧
http://www.city.sakura.lg.jp/sakura/hojokin/H28/index.html
d)補助金等交付基準(佐倉市)
佐倉市における「補助金」「交付金」の区分は明確ではない上に、団体に対する「必要な額」を交付するといいながら、定額を渡し切りというのは矛盾ではないかと思います。
一度、皆さんも自分の住む自治体での消防団の現状、自治会でどんな寄付や協賛金があるのか、などをしっかり確かめたうえで、問題や疑問があったら、市役所などに質問や要望をしてみてはいかがでしょう。私も、近く論点を整理した上で、市長へ要望書を出すつもりです。全国各地で「消防団への寄付」の廃止に向けて取り組んでいる方々がいます。とくに横浜地裁以降、横浜市、高知県の南国市・香美市はじめ多くの市町村、唐津市などなど、「消防団への寄付」は廃止となりました。
初出:「内野光子のブログ」2017.04.09より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6608:170411〕
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