「理不尽に慣らされない」ためにー共謀罪、その廃案を目指してどう訴えるか。
- 2017年 4月 14日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
「国民は、自身にふさわしい政府をもつ」とか。情けない話だが、アベ政権が我々国民にふさわしい政府なのだろうか。さらには、共謀罪だ。これが、われわれ国民にふさわしい法律ということなのだろうか。まっぴらご免だ。何としても、この法案は廃案に追い込みたい。この法案には暗さが伴っている。アベの旧体制復古願望のもつ暗さだ。あるいは、腐臭がする。いやな時代の前兆としての腐った臭い。
私も何度か、共謀罪の講師活動を引き受けた。現在も幾つか予定を抱えている。定番のとおり、法案の内容を説明し、刑法の保障機能や罪刑法定主義、そして構成要件論をお話しすることになる。そのキモは、類推解釈を許さない厳格な構成要件の解釈こそが、権力の市民生活への介入の歯止めになるということ。権力の側は、できるだけ曖昧な構成要件がほしいのだ。必要あればいつでも、市民生活に介入できるように。
そのうえで、戦前の治安維持法や国防保安法などの実例を挙げ、今回の共謀罪法案が成立した際には、どんなことが起こるか想定例をお話ししてみる。短時間ではなかなか伝わらないもどかしさが残る。
次の機会には、どう工夫すればよいだろうか。集会やすぐれた発言に学びたいと思う。そんな問題意識で、幾つかの集会名や発言内容を拾ってみた。それぞれがどこに力点を置いているか、自ずから伝わってくるものがある。
第1 ズバリ本質をえぐるキャッチフレーズ
「現代の治安維持法・共謀罪反対!」
「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める大集会」
「マジありえない共謀罪」
「共謀罪創設は国民の『思想・信条の自由』を奪う」
「あなたも犯罪集団の一員に!?共謀罪を考える市民集会」
「共謀罪はいらない!~自由に考え、集まり、話がしたい~」
「『安全・安心』な社会に『監視』される?~どうして監視社会が止まらないのか?~」
「合意だけで処罰!?~共謀罪法案を考える~」
「市民の行動が筒抜けに?~高度化する捜査手法と共謀罪で社会が変わる前に~」
「-進む監視社会化について考える-」
「-あなたの想いが閉じ込められる!?-」
「会話しただけで犯罪に!? 監視される社会 -共謀罪・通信傍受法・特定秘密保護法の向かう先-」
「またも共謀罪法案が!-電話・メール・SNSが監視され、つぶやきが犯罪に!?」
「その会話で逮捕?~共謀罪を考える~暗黒の社会への道を許すな」
「共謀罪を考える市民集会 あなたの会話がのぞかれる!?~市民生活を脅かす共謀罪と盗聴~」
「テロ等組織犯罪準備罪?気を付けよう、そのひと言が犯罪に~」
「共謀罪は『テロ対策』に騙されるな! 国家権力の暴走を監視せよ」
「共謀罪の狙いはテロ対策ではない! スノーデンの警告に耳を傾けよ」
「話し合うことはテロ?」
「国民を監視 自由脅かす『共謀罪』」
「『共謀罪』は、憲法で保障された思想・信条、内心の自由を侵します。
『共謀罪』は、広く市民、団体を監視することになります。
『共謀罪』は、警察の日常的監視、『密告』社会を招きます。」
「国民の思想・信条や言論・表現の自由を脅かす希代の悪法」
第2 政府のウソをあばくフレーズ
「共謀罪なしで国連越境組織犯罪防止条約は批准できます」
「組織的な共謀罪を設けるのは、国際組織犯罪防止条約を締結するためではない」
「そもそも、共謀罪法案はテロ対策法案でない」
「テロ対策に必要というのも有効というのも嘘だ」
「『テロ等』というネーミングは羊頭狗肉、看板に偽りありの詐欺商法」
第3 具体例想定示タイプ
沖縄の平和運動に対する『共謀罪』弾圧シナリオ
労働組合の団体交渉のこじれが「共謀罪」に
パワハラ上司をとっちめろ
「保育問題・介護問題で区役所に押しかけよう」が、住居侵入の共謀罪に
第4 時代の危機を語るタイプ
時代状況に敏感な作家たちの発言が身に沁みる。
4月8日の東京新聞に、日本ペンクラブ(浅田次郎会長)が7日夜に、「共謀罪は私たちの表現を奪う」と題する集会を開いたと報じた。作家や漫画家、写真家ら14人が登壇して時代への危機感を語ったという。
報道の見出しが、「『共謀罪、心の萎縮招く』『今抵抗しないと』作家ら声上げる」となっており、リードに、「平和のために言論、表現の自由を守る」「四度目の廃案を目指す」「作家や若者らから相次いで『NO!』の声」などとされている。
作家の浅田会長は「平和のために言論、表現の自由を守っていくことが使命で、共謀罪は看過できない大問題。人間には命があっていずれ死ぬが、法律は死なない。子や孫の代にこの法律がどう使われるか。今が大事なときです」と強調した。
同紙は、日本ペンクラブの声明のタイトルを、「共謀罪によってあなたの生活は監視され、共謀罪によってあなたがテロリストに仕立てられる」と紹介されている。
14人のコメントが短くまとめられているが、印象的な幾つかを転載しておきたい。
◆金平茂紀さん(テレビキャスター) まだやっていないことが取り締まりの対象になる共謀罪は特別に危ない法律だ。沖縄で基地反対運動のリーダーが逮捕されたが、これは共謀罪を先取りした予行演習だ。
◆香山リカさん(精神科医) メールやツイッターをするだけでも、もしかしたらまずいんじゃないかといちいち忖度していくと、考えることすらいけないんじゃないかとだんだんなっていく。
◆田近正樹さん(日本雑誌協会) 共謀罪によって、いつでも捜査ができるような状況が、市民を萎縮させ、社会を変えてしまう。さらに単独テロ対策のために1人で計画することも犯罪になるかもしれない。
◆ちばてつやさん(漫画家) 日本は今、ゆっくりとした大きな渦の淵にいる。戦争とかどす黒いものがたくさん入っていて、その渦に巻き込まれるかどうかの境目だと思うので、非常に危惧している。
◆長谷部恭男さん(早稲田大教授) 犯罪というのは、やり終わったものを裁くのが基本原則。それが277の大量の罪について計画段階で捜査の対象になる。市民生活に直接にかかわるもので危険性も高い。
そのときの中島京子さんの発言要旨が、本日の赤旗に写真入りで掲載されている。とても、印象的な内容。こう語れるようになりたいと思う。
理不尽に慣らされない(タイトル)
森友学園の問題と共謀罪は裏表だと思います。
権力が味方だと思えば、ありえない利益を供与するのが森友学園のケース。権力が敵だと思えば、ありえない方法で取り締まれるのが共謀罪。公文書を公表せず、破棄するような権力が共謀罪をつくる。本当に恐ろしい。
テロ対策と言われていますが、対象となる277の犯罪がテロとどう関係があるのか分からない。むしろこれは誰かを取り締まりたいときに、277の犯罪からどれかを選んで使うための法律ではないでしょうか。国会で審議されると聞いた時は、また強行採決かというあきらめの気持ちがありましたが、理不尽に慣らされることに抵抗しなくてはいけない。
安保法制の時のように反対の声を上げ続け、4度目の廃案にもっていきたいと思っています。
(2017年4月13日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.04.13より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=8426
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