福島原発事故の後始末費用負担のあり方は全くの出鱈目だ=株主・銀行免罪の上での託送料金や電力料金への上乗せ、あるいは国民税金負担(「経産省前テントひろばニュース 第109号、2017年5月2日」より)
- 2017年 5月 6日
- 評論・紹介・意見
- 田中一郎
福島原発事故の後始末費用負担のあり方については、いろいろ批判すべき点がありますが、廃炉費用と託送料金への上乗せについてだけ申し上げておきますと、
(1)廃炉費用2兆円 ⇒ 8兆円 については、その内容や内訳がよくわからないことや、その必要性や金額妥当性についての詳細なチェックがなされておらず、いわゆる「つかみガネ」になっている点が大問題です(過酷事故原子炉の廃炉技術自体が確立しておらず、今後の見込みも立たないのですから、廃炉を進めるにしても毎年少しずつ作業の進捗を見ながら決めていくというのが常識というものです。それでもなお、こうした廃炉の必要性については疑問が付きまといます)。要するに、こんな大金の予算をこんないい加減なやり方で決めるなど、もってのほかだということです。
この廃炉費用4倍化は、福島第1原発事故の後始末に対しても原子力ムラの人間や企業が「タカリ」行為を働いていることを示す大きな物証の1つであり、こんなものに、はいそうですかと、金を出すわけにはいかない、ということです。逆に言えば、この8兆円がやすやすとパスしたことで、今にもつぶれそうな東芝をはじめ、原子力ムラとその組織・企業群は、今後10年間以上の「仕事=食い扶持」を労せずして得たわけで、笑いが止まらないことでしょう。
(2)福島第1原発事故の後始末費用の託送料金への上乗せ問題の最大のポイントは、特定電源の費用を送配電網を使ってすべての電力消費者から薄く広くわからない形で徴収するという点の不当性にあり、これをやれば、電力自由化の意味がなくなる=電力消費者の選択権が侵害される、という点にあります。これを徹底的に追及して、撤回に追い込まなけばいけません。国会議員にも追求をしてもらう必要があります。撤回させるまでやり続けるという不退転の決意が必要です。(やるのなら、新たな税金のかたちで目に見える形でやれということです)
(3)過去分の賠償積み立て必要額の託送料金への上乗せについては、電力消費者にこういうことをするのなら、①託送料金上乗せではなく、税金でやれ、②過去分の不足があったというのは電力消費者だけでなく、必要な事故対応保険をかけていなかった電力会社もそうでしょうから、電力会社に対して、必要な保険金額まで(最低21.5兆円)の保険を過去においてかけた場合の累積保険料を、直接納付金のかたちで全額納付させ、福島第1原発事故の後始末費用に充当せよ、ということです。
(4)更に、今後もまた、原発過酷事故がありうる話だから、今後は21.5兆円ではなく金額無制限の原発事故損害補償保険を国が用意をして、その特別会計を赤字にしない程度の保険料を算定したうえで(原発1基あたり年間数千億円~数兆円~数十兆円の巨額な保険掛け金となるでしょう)、原発運転の電力会社に掛け金支払いを義務化せよ、ということです。
(参考)閣議決定「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」
(2016年12月20日)批判(これは原子力ムラの「クーデター」だ(1)~(8)を集約しました) いちろうちゃんのブログ
http://tyobotyobosiminn.cocolog-nifty.com/blog/2017/01/20161220-5d74.html
以下はメール転送です。
【経産省前テントひろばニュース 第109号、2017年5月2日】
強制撤去から254日目 川内原発・再稼働糾弾!
発行責任者 正清 太一
◎東電残して天井知らずのイチエフ費用を託送料金に押付けるな~福島の訴えを聞いて、人間としての声を吐露する担当者~
院内ヒアリング集会「原発コスト」報告
連休直前の4月28日(金)午後2時~3時、参議院議員会館内の会議室で経産省・資源エネルギー庁の原発コスト関係担当者4人を招いて院内集会を実施した。
福島原発事故の費用を倍増(21.5兆円)し、そのコストを託送料金や税金で我々(国民)に負担させようとする経産省に対して、見積り費用は正しいのか? 託送料金や税金に、かぶせるのはおかしいのでは? 法律として国会で議論するべきでは?
原発が安くないことを反映した「エネルギー基本計画」を見直すべき、と訴えた。
以下、7つの質問点に対する経産省・資源エネルギー庁の原発コスト関係担当者の回答を要約して紹介する。
1.託送料金からの原発事故コスト徴収による国民への負担転嫁の可否負担転嫁について
回答:
賠償の備えに不足分が生じていた。規制料金の仕組み上、それを電気料金にしていなかった。大臣からも話している。不足分を、上限を決めて金額を決めた。これから更なる負担は生じない。
廃炉費用が2兆円から6兆円増えて、8兆円になったことについて
回答:
2兆円はデブリの状態が分からない中で東電が予測。今回はデブリ取り出しにどれぐらいかかるかを出した。
2兆円が倍々に膨れ上がって8倍になった訳では無い。
託送料金に乗せることについて
回答:
離島供給費用で電力供給確保の費用が含まれている。公益的な電力。離島に向けた発電費用も託送料金に。公益的な課題を解決する目的で今回賠償料金を託送料金に乗せた。
「託送料金上げは、ある工場の赤字を高速道路料金に乗せるようなもの」に対して
回答:
一般の他の商売では理解できる。電気料金は規制料金、一般の民間事業のように自由に価格設定することは制限されている。国が認可しないといけない。そこが他の商売と違う。他のところは、自分たちの責任において設定できる。規制料金はその時に合理的な見積りがある費用しか電気料金として回収してはいけません、というのが基本的な考え。その考えの下で、当時政府は賠償の備えを推察できなかった。ここが大きな違い。
単純に他の商取引と比較した議論はできない。
エネ庁のイチエフ事故処理費用見積りは信じられない、「日本経済研究センター」の49兆円、70兆円について
回答:
別の試算はあるが、どういう前提で行われたのか分からないので、比較が難しい。
2.再稼働している川内・伊方原発の事故被害はどのように想定しているのか、今後、原発事故が起きたら
回答:
一般負担金を集めていた。事故が起きたら原賠法で対応する。
世耕経産相が佐賀県知事に対して「安全対策は政府が責任を持つ」と保障したことについて
回答:
「原子力規制庁の判断で、安全性を確認」と言った。
3.国会で原発存続の是非を改めて審議すべき
国会審議について
回答:
予算委員会は限定的でも委員の先生が他から質問を受けて必要性、東電改革を説明。国会の会期中、質問と回答を頻繁に対応している。
省令政令で決めることについて
回答:
原賠機構法の改正法案を今国会で審議してもらっている。法律に必要なものは国会に提出している。機構法の改訂は経済産業委員会で議論。電気料金についても電力料金監視委員会があり200時間を超える審議を公開の場でしている。
(これに対しては、原賠法の衆議院附帯決議で「被害者の保護を図ること」を目的とし、原賠機構法の附則第6条には「国民負担を最小化する」とあることを指摘)
4.東電の原子力損害賠償責任とその「法的整理」を
回答:
自民党政権になってから方針が変わったところがある。「東電に責任を負わせる部分がある。一方で福島の復興・再生を加速しなければならない」というのが、当時与党の提言でもありました。けれども、自民党政権になってから、方針転換を図るべきとの指摘があった。その中で「一部国費の負担をすることによって福島の復興を加速する」方向に向かって方針転換した。
5.東電「延命」が先例になってモラルハザードの危険性はないか
回答:
原子力事業者をつぶす状態になった時に、賠償と廃炉との責任を原子力事業者から逃れさせる訳にはいかない、最後まで事業者に責任を貫徹してもらう、その考えで原賠機構法が創られた。
6.新電力等との公正・平等な競争を妨げる特権を撤廃すべき
回答:
電力システム改革の中で、今後は2025年にこの債権の発行は中止される。
7.次期「エネルギー基本計画」で脱原発の提案を
回答:
次のエネルギー基本計画にはいろいろな調整があるし、今日指摘された点も、しっかりと議論しながら考えていかなければならない。スケジュールに関しては今検討中でしかるべきタイミングで発表する。今日は具体的に答えられない。
最後にヒアリングに参加した福島の人たちからの「福島の現状を見ましたか? 現状を見てどう思いましたか? 自分と同じ立場に立って考えてほしい」との訴えに対して、担当者の一人は「私の話になりますが、震災後に経産省に入省した。震災があったからこそ、やっぱり国として、しっかりこの政策を見直さないといけない、その決意を持って経産省に入省しました。実際に富岡町の駅だとかあの惨状を見て、苦しんでいる方々を見て、やっぱりエネルギー政策、福島復興をしっかりやっていかないといけない、とそういう思いを持って今ここに居ます。皆さんのご意見をしっかり頂戴しながら、しっかり仕事を進めて行きたいと思っています」と応答。
さらに、私(K.M)からの「3年前にできたエネルギー基本計画が間違っていた。そのうえ3つの原発を稼働して、今また高浜も動かそうとしている。福島第一原発は放ったらかし。費用だけどんどん膨らんでいる。めちゃくちゃだと思う」に対して、別の担当者が「私も2015年に福島に入った。実際に外に出て自分の足で歩いて現場を見た。今、福島第一原発は放ったらかしと言われたが全く違っている。本当に必死になって復旧をしている作業員を見た。それだからこそ、ここに来て誠意をもって対応しているつもりです」と反論。
この日の参加者は17名。ヒアリングは、とおり一遍の不満足な回答と時間切れで追及不足もあったが、担当者と私たちとで少しは心が通う会話が出来たように思った。
安倍政権、経産省・資源エネルギー庁がやっていることは、ひどいが、今後も事実に基づいてヒアリングを続けていきたい。
(K.M)
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「脱原発川内蓬莱塾」設立趣意書(案)
■脱原発川内テント+蓬莱塾
2014年9月26日、川内原発に南面する久見崎海岸に脱原発川内テントを設置してからこの5月で2年8ヶ月目を迎えることになります。
そして今、私たちの目の前に大きなチャンスが訪れました。地元の方々の厚意により一戸建ての古民家を借りることが実現したのです。このことは、私たちの活動の幅が大きく広がることを意味します。
台風時の一時避難先、テント訪問者の宿泊施設などはもとよりのこと、何にも増して重要なのが地元の方々との交流拠点としての活用です。
■蓬莱塾は「寺子屋スタイル」
かつて久見崎海岸を訪れた与謝野晶子は「久見崎の沙に摘みたる薬草を載せてわが船蓬莱離る」と詠みました。蓬莱とは、平たく言えば「仙人の棲む不老長寿の理想郷」といったところでしょうか。その理想郷を今も原発が壊し続けています。
脱原発の闘いは、蓬莱の理想郷を取り戻すたたかい、故郷を守るたたかいです。
そのためには、地元により深く入り、共に学び合う寺子屋方式で認識と感覚の共有を諮っていく必要があると考えています。こうした観点から、ここを蓬莱塾と名付けました。
正式には「脱原発川内蓬莱塾」です。
■蓬莱塾の中心的テーマ(役割)
①福島から定期的に被災者を招き、原発被災のナマの声を川内原発地元住民に伝える。
②自然エネルギー普及活動を通して、原発依存の呪縛を打破する。
③脱原発派首長、議員の獲得(2020知事選、市長選、市議選等)
④交流会、勉強会、講演会等々、地元の方々との共同企画、共同運営 収容人数20~30人 合宿可能10人
⑤自治会、農業など地域社会との共同
⑥移転歓迎
■廃炉への道
世界の趨勢が「脱原発・再生可能エネルギーへの転換」へ向かう中で、「原発維持」を掲げる安倍政権の時代錯誤に多くの国民が反発を強めています。
政府は東電事故処理の最終コストは20兆円としていますが、ある民間シンクタンクの試算では、70兆円にもなると発表されました。こうした膨大なコスト増に電力会社はたじろぎ、原発経営の先き行きにも疑問符がつかざるを得ません。核エネルギーから自然エネルギーへの転換が、保守層をも巻き込みつつ国民的なテーマとなるでしょう。4月半ば「原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟(原自連)」が、左右を問わない脱原発の国民運動として発足しました。こうした流れは原発廃炉への展望が大きく開けるチャンスです。
脱原発川内蓬莱塾は原自連の国民運動と連携し、自然エネルギーの地域普及活動を通して、今も根強く残る、「地域活性化に原発は必要だ」という、原発依存体質を打破しなければなりません。
原発を巡る危機は、一刻の猶予も許されない段階に至っています。蓬莱塾は、保革、左右を問わずすべての皆さんに開かれています。あらゆる壁を越えて話し合うチャンスが必要です。蓬莱塾はそのステージとなるでしょう。 2017年5月5日 脱原発川内テント・蓬莱塾一同
≪経産省前テントひろば≫
住 所:〒105-0003港区西新橋1-21-8新虎ビル2F
・電 話:070-6473-1947
・郵便振替口座=00160―3―267170
・口座名義= 経済産業省前テントひろば
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion6654:170506〕
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