6月24日世界資本主義フォーラム報告サマリ アメリカ資本主義の現況と保守主義回帰
- 2017年 6月 22日
- スタディルーム
- 青山 雫
- 主催 世界資本主義フォーラム
- 日時 2017年6月24日 午後2時~5時
- 会場 立正大学大崎キャンパス 9号館5階 951教室
- コメンテーター 吉村信之(信州大学経済学部、経済学原理論 経済発展段階論. 現代資本主義分析)
- 【報告1】矢沢国光: 「国民経済」の成立と原理論・段階論
- 【報告2】青山 雫: 貿易論:中国との貿易でアメリカ産業の特に雇用面で受けた影響についてのMITの研究を参考に
- 参加費 無料 どなたでも参加できます。
- 問合せ・連絡先 矢沢 yazawa@msg.biglobe.ne.jp 携帯090-6035-4686
トランプが大統領に就任し、TPP離脱、報復関税への言及、米国内製造業回帰などが提起されてきて、なにやらアメリカ資本主義の変調を思わせる。また世界的なポピュリズムの跋扈を引き起こしているようでもあり、アメリカ一国の経済にとどまらない影響を及ぼしつつある。
そこで、以下データ中心にアメリカの近年の経済実態を概説する。合わせて中国貿易のインパクトにも言及する。
1.(以下番号はスライド番号)
実質GDPが20世紀末よりリーマンショック後の落ち込みを挟んで、一貫して成長基調にある。分野別では教育・医療サービス、専門職、金融、情報の伸びが目立つが、製造業も収縮しているわけではなく緩やかな拡大を続ける。
2.耐久消費財の代表格である自動車産業はリーマンショック直後急激に収縮し、V字回復を遂げている。
3.大恐慌時は、経済全体が自動車産業的収縮を見せ、かつ長期にわたった。流動性供給と財政出動の差が現れているのか。
4.リーマンショック時は、GDP全体の落ち込みは自動車産業に比べてはるかに軽微で、コンピューター、IT、鉱業(シェールガス)などによって補われた形。
5.1.で述べた20世紀末以来のアメリカGDP成長は、同時期日本の停滞基調に比べるとはるかに高成長。
6.21世紀に入ってのGDP構成では、製造業は緩やかに拡大しつつも比率的には一貫した低下であり、2001年14%から2016年には⒓%を割り込む。専門職、教育医療サービスが比率高めている。金融・情報は20世紀第4四半期で地位確立している。
7.失業率はリーマン直後悪化するも、その後急速に改善して現在はほぼ完全雇用水準。
8.その中での中国からの輸入の影響。輸入比率の高まりにつれて、製造業従事人口比率が低下しているという。
9-10.
話題となったMIT労働経済研究者のオウターらの報告。中国からの輸入によって2001年から2011年にかけて200-240万人の製造業雇用が失われたという。非製造業での雇用拡大がそれを上回り、全体としては拡大基調。なにが問題なのか?
11.どうやら、リーマンショック後製造業の付加価値生産は拡大しているが、雇用は頭打ち、V字回復の自動車業も、雇用はリーマン前におよばない。労働単位あたりの付加価値生産向上が目指されてきた。
12.WTO加盟(2001年)後、中国の世界貿易中シェアは急拡大。
13.GDPが接近するとバッシング受ける。ジャパンバッシングとチャイナバッシング。
14.国別貿易収支で日本は余り変化ないが、中国はやはりWTO加盟後急拡大している。
15.対中国分野別貿易収支。スマホ・ネットワーク機器などの通信機器、パソコンなどなど赤字上位品目は、そもそも米国内に生産拠点ない。貿易制限かける意味がない。
16.海外設備投資、海外雇用はリーマン前後から急拡張。
17.米中の軍事費比率の急下降は軍事対立の緊張に行き着くのかどうか。
18.保護主義的関税設定は報復の連鎖を呼ぶ。
19.行き着く先は、世界貿易の大収縮と世界大戦
20.さらに深刻な失業を生み出す
21.今また同じ轍を踏む可能性も捨てきれない。
22.そのなかで、株価はふたたび大恐慌以来の高水準を続けている。
23.対日貿易の品目別収支では、米国内産業とのバッティング顕著で、強硬姿勢で臨まれると思われる。
24.財政収支赤字のGDP比は日本と似たり寄ったり。減税措置でさらに赤字幅拡大もありえる。
25.経常収支赤字幅は2001年来拡大してきている。
26.対円に関してはどっちともいえないが、経常赤字によって流出したドルが各国に対外支払い準備としてつみあがり、米国債を介して還流している限りはドル対外価値は比較的安定するのではないか。
27.ジニ係数に見る格差拡大。
28.米国は経済成長の中で格差も拡大傾向。日本はリーマン以前水準に回帰。
29.高学歴・高収入の構図。教育投資による格差拡大。ピケティ的世界。
バーニー・サンダースの公的教育無償化論に説得力。
30.ラストベルトで2012年大統領選でオバマ勝利。今回はトランプ奪取。産業構造動態・格差が背景にあるというが、
31.先のMITの一連の研究では中国からの輸入が半分になれば、ヒラリーが大統領当選したという。ヒラリーの不人気さを考慮に入れていないのではないか。
32. リーマンショック後、GDP ・雇用は拡大基調
そこに、製造業国内回帰でむりやり雇用創出すれば、労賃騰貴
国外に設備投資が進んでいて、サプライチェーンも海外移転。国内回帰はその面でも困難
保護主義は世界経済の縮小を招く
格差拡大の中、富裕層への減税、オバマケア撤廃など、逆調の政策指向
支離滅裂トランプノミクスは自滅への道歩む?
2017年6月24日・世界資本主義フォーラムのご案内
〒141-8602 東京都品川区大崎4-2-16 TEL:03-3492-2681
大崎駅または五反田駅から徒歩7分
会場案内図http://www.ris.ac.jp/access/shinagawa/index.html
http://www.ris.ac.jp/introduction/outline_of_university/introduction/shinagawa_campus.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔study865:170622〕
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