改憲報道 真に注視すべきは緊急事態条項
- 2017年 6月 22日
- 時代をみる
- 憲法村上良太緊急事態法
マスメディアの報道で安倍首相が改憲論議を加速しようとしていると報じられ、その議論がいかにも9条が最大の論点であるかのように書かれている。しかし、日本の民主主義や人権にとってもっと危険な条項になりかねない緊急事態条項がどうなっているのか、本当はこれに最も注目すべきであろう。
たとえば毎日新聞は「自民党 改憲議論が本格化 「自衛隊」と9条2項焦点」と見出しを掲げている。これでは緊急事態条項のことなどはまったく重要ではない印象だ。そして「役員会で保岡氏は、自衛隊明記や緊急事態条項創設など4項目の論点の議論を8月までに一巡させる方針を確認。9月にも党改革案をまとめる方針だ」と記事の中でつづっている。これでは緊急事態条項は大した問題ではないかのように感じさせる記事である。しかし、1933年に政権に就いたナチスが独裁政治を完成させたのが同様の緊急事態条項だったことを忘れてはならない。新聞は見出しで記事の一番訴えるべきことを示すのであり、もしそこで一番肝心なことに触れなかったとしたら、それはミスリードと言われても仕方がないだろう。
緊急事態法案、ナチスは「全権委任法」と呼んでいた。この法案でナチスが手に入れたのは内閣が国会に代わって法律を自由に制定できるようになったことであり、その法律も憲法に縛られないでよかったことである。さらに条約締結でも国会の承認は不要となった。この全権委任法で野党は強制解散、労働組合も強制解散、一党独裁制が敷かれ、選挙も停止し、4年ごとに「全権委任法」はナチスの崩壊まで更新された。安倍政権を支える日本会議のブレーン、百地章氏(前・日本大学法学部教授)は日本国憲法を改憲するために、ナチスがワイマール憲法を停止させた緊急事態法を大学で研究したと語っていた。BuzzFeedのインタビューでは「最優先は緊急事態条項」とはっきり語っている。
<「私の修士論文は、当時の西ドイツ、ワイマール憲法の緊急権の研究だったんです。私は国家論をやりたかったから。そう考えると感慨深い」としみじみと話す。>(BuzzFeed)
民主的なワイマール憲法を簡単に葬り去ってナチスが一党独裁を成し遂げたのが緊急事態法(全権委任法)だった。さらに麻生太郎副首相のナチスに見習え発言にあるように、自公政権はナチスをお手本として研究してきたようである。
<麻生太郎副総理兼財務相は29日夜、都内で講演し、憲法改正をめぐり戦前ドイツのナチス政権時代に言及する中で「ドイツのワイマール憲法はいつの間にか変わっていた。誰も気がつかない間に変わった。あの手口を学んだらどうか」と述べた。>(日経)
このように、緊急事態法案は非常に危険な性質のものであり、しかもすでに日本国憲法のもとですら国会を軽視している安倍政権に緊急事態条項=全権委任法を与えた場合の未来を考えなくてはならないだろう。安倍政権が大急ぎで委員会採決も省略し、強行採決して共謀罪を成立させた背景には東京オリンピックまでに改憲に反対する勢力をできれば自主的に言論規制をさせ、改憲を成し遂げることにあると見られる。東京オリンピックは日本の体制変換への見栄えのいい口実であり、改憲までの期限として機能しているのだろう。マスメディアも自分たち自身も関わる未来の危険に対して警告を鳴らすべきではないだろうか。すでに黄色ランプは赤ランプに変わったのである。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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