ファシズムは死語になったのか(4) ― 世界平和七人委員会アピールの肉声 ―
- 2017年 6月 27日
- 時代をみる
- ファシズム半澤健市
2017年6月11日の本ブログで、岩垂弘氏が、「世界平和アピール七人委員会」が発信した「共謀罪」法案審議への抗議アピールを紹介している。緊迫感に溢れたアピールであり、私は共感して読んだ。このあと、本件に関し、七人委員会のメンバー二人へのインタビューを見聞する機会があり、紹介の価値はあろうと思い以下に掲げる。
二人とは、作家髙村薫氏と写真家大石芳野氏である。
《三百万人が死んでやっと止まりました》
髙村薫氏へのインタビューは、「共謀罪と国会」というタイトルで、『東京新聞』(2017年6月17日)に載った。聞き手は共同通信の橋詰邦弘記者である。以下は、そこでの髙村発言から、私(半澤)がポイントと思った部分を抜き出したものである。(■から■)
■国会は死んだのかもしれない。「共謀罪」法を成立させた国会を見てつくづく感じました。/安倍内閣に支持率50%を与えている私たちの責任でもあります。/いまの政治状況は、明らかに超えてはいけない一線を越えているのですから。有権者の多くが、まだこの政治にげたを預けているのは、戦後七十二年の繁栄と安定に寄り掛かっている慢心でしょう。/
共謀罪法審議や安倍晋三首相の答弁に象徴されるように、政治家はいまや国会が言論の府であるという意識はないし、国民もそれに慣らされてしまっています。/この流れは、不可逆的でしょう。かつての日本もこれに似た大政翼賛会の政治が続き、最終的に三百万人が死んでやっと止まりました。/
安倍首相の憲法改変発言は悲願といわれる割には軽い。彼には国民に向けて持論を展開するだけの論理はありません。あるのは浅い情緒だけです。/今回の森友、加計学園問題は、政治の私物化としか言いようがありません。それができてしまうのが不思議です。政治家が育っていない寒々とした荒野です。与野党問わず、人間の幸福とは何かを問う「本職・政治家」が消えてしまった。/
私たちはいま、国連の関係者が懸念を表明するような切羽詰まった社会状況にあるのです。政治がしていることを、強く疑ってみるときです。軌道修正は、私たち有権者にしかできません。■
《七人が七人とも、頭から湯気が出るくらい》
大石芳野氏へのインタビューは、ジャーナリスト高瀬毅氏によるもので、YouTubeのニュース討論番組「デモクラシータイムス」で、2017年6月16日に、公開発信された。七人委のアピールは、岩垂氏も指摘したように「この政権はまさしく国会を殺し、自由と多様性を殺し、メディアを殺し、民主主義を殺そうとしているのである」、つまり「殺す」と言葉を使っている。高瀬氏の質問は、アピールがそんな過激な表現を「使った」理由を問うものであった。
大石氏は次のように答えている。(■から■)
■使わざるを得ないという心境になった。七人が七人ともね。なぜ使わざる得なかったというと、国会のありようを見ていて、これ「民主主義? デモクラシー?」ってとっても思いました。
野党から質問されても答えない。答えをハグラかす、違うことを答える。それがあとのニュースに出ると、テレビ局によってちがいますが、質問をカットして、答えているカッコいいこというところだけを、放送することが沢山起こっている。
これは正にヒトラーが、こうやって撮られるとカッコいいぞという、宣伝マンがついて盛り上げていったようなことが、国会のの中で起こってると感じた。そのやりとりの後、溢れてきたことを見ても、国民を無視してそれがどんどん進んでる。
同時にメディアに対しても規制をかけてますね。あんな人を使うなとか色々厳しいことを言っている。安倍政権でも初期にはこんなことはなかったですよ。
それがどんどん強くなって、今や最頂点にきている。恐ろしいものを感じたんです。
感じたのは、七人が七人とも、頭から湯気が出るくらい怒っていると言っても過言ではない。■
《難しい問題の答えを模索していく》
「ファシズムは死語になったのか」シリーズと勝手に呼ぶ拙稿に、読者から「ファシズム」を定義せずに使っているという指摘があった。貴重な批判であると感じながらも、「ナショナリズム」と並んで、論者の数だけ定義があるのがファシズムであろうと思う。シリーズの冒頭に記したように、混沌の時代であるからこそ、難しいテーマであることを承知しながら、模索を続けたいと思っている。(2017/06/23)
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