本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(160)
- 2017年 6月 30日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
10年遅れの金融大混乱
今回、「バーナンキ前FRB議長の演説」を読んで感じたことは、「この10年間に、どのような意味が存在したのか?」という点だった。つまり、「2007年7月」に発生した「サブプライム問題」を見た時に、「ほぼ想定どおりに、金融の大混乱が始まった」と感じたのだが、その後の「リーマンショック」以降の展開については、「私の予想」とは、大きく異なったものだったからである。
具体的には、「リフレーション政策」という「中央銀行のバランスシートを大膨張させて、国債を買い付ける政策」については、ほぼ想定どおりだったものの、「過去の歴史」から理解していたことは、「通常のリフレーション政策は、1、2年で限界点に達する」ということだった。しかし、実際には、「約8年間」という、想像もしなかったほどの長期間に亘り、この政策が実施され、しかも、最後の段階では、「マイナス金利の発生」という、「人類史上、未曽有の事態」までもが発生したのである。
別の言葉では、「マネーの大膨張」を終焉させる方法に関して、前代未聞の規模での「問題の先送り」と「時間稼ぎ」が行われたものと考えている。しかし、一方で、この結果として発生したことは、さまざまな「技術革新」だったようにも感じているが、実際には、「大量のマネー」が存在したために、「AI(人工知能)」や「IоT」などが、大きく発展した状況であり、このことも、私の想定を超えた事態でもあった。
このように、「マネーの大膨張」に関して、私自身は、「悪い面」だけに注目していたようだが、実際には、さまざまな「良い面」が存在したようにも思われるのである。具体的には、前述の「数多くの技術革新」が指摘できるようだが、この点については、「戦後の日本」と似たような状況とも想定できるようである。つまり、「レーダー」や「航空機」などの技術不足が、「日本の敗戦」に関する「原因の一つ」だったものと思われるが、その後の「日本人」は、「ソニー」や「トヨタ」などのように、「通信」や「航空」などに関する技術を活用して、世界的な大企業を創り出したのである。
そのために、これから予想される「10年遅れの金融大混乱」についても、私自身としては、「不安」や「恐怖」よりも、「期待」や「希望」の方が、大きくなったようにも感じている。そして、その理由としては、「人類は、常に進化と創造の過程にある」、しかも、「世の中の出来事には、全て、大きな意味が隠されている」という真理を、我々に、知らせることが、「過去10年間」が意味したことだったものと考え直しているからである。(2017.6.5)
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バーナンキ前FRB議長の講演
「5月24日」に、「日銀」の招きで「バーナンキ前FRB議長」が講演を行ったが、内容としては、「ホンネが8割、タテマエが2割」の状況だったようにも感じている。具体的には、「過去20年以上も、日銀が始めた金融政策における革新と実験とに、大きな刺激を受けた」という文章から始まり、「学者としての議論と、FRB議長としての実践には、大きな違いが存在した」とも述べられているのである。
より具体的には、「学者の時には、日銀の金融政策に対して、熾烈な批判をしたものの、その後、実際の金融政策に携わった時には、過去の自分に対して後悔の念を抱いた」ともコメントされているが、実際には、「金利の下限に近付いた状況下で、どのような金融政策を取るべきか?」という点において、「既存の理論」では、ほとんど現実に対応できなかった状況でもあったようだ。
また、この講演において、最も注目すべき点は、「日銀の金融政策」、そして、「日本の財政政策」について、「限界点に達した可能性」を示唆したことだと考えている。具体的には、「日銀のテーパリング(国債買い付け金額の減少)」や「日本の国家財政問題」などを指摘しながら、「日銀の独立性」が失われた時には、「コントロール不能なインフレ」の発生までをも危惧されているのである。
そして、結論としては、「金融政策と財政政策の融合」というような「曖昧な意見」が述べられているが、この時に、「2%のインフレターゲットが達成できなければ、再び、デフレとの戦いが始まる可能性」も指摘されているのである。つまり、「今までの金融政策により、2%のインフレは達成可能である」という考えを持ちながらも、「かりに、インフレターゲットが達成されない場合には、大恐慌が発生する可能性も存在する」と想定しているようだが、この点については、「20年ほど前の議論」とも言えるようである。
つまり、「大インフレか、それとも、大恐慌か?」という選択のことだが、このことは、「過去10年、あるいは、20年間の推移により、結果は明らかだ」と考えている。そして、その理由としては、今まで、世界中の金融当局者が、「1929年の大恐慌」の再来を恐れ、未曽有の規模で「リフレーション(通貨の膨張)政策」を行ったために、これから予想される事態は、この反動とも想定されるからである。別の言葉では、「通貨」や「政府」に対する「信用の失墜」により、今後は、「未曽有の規模での大インフレ」が発生するものと考えている。(2017.6.5)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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