水に落ちたファシストは、打たれ強いので要注意!
- 2017年 7月 6日
- 時代をみる
- 加藤哲郎安倍自民党
◆2017.7.5 いつもより、5日遅れの更新です。東京都議選公示直後に日本を離れ、自民党惨敗の結果は、オーストラリア・シドニーから帰国して知りました。その間に何があったかは、インターネットでも、ある程度わかりました。東京都政の審判というよりも、THIS is An ABE’s Defeatとして、T= 豊田真由子衆院議員のパワハラ暴言、H=萩生田光一官房副長官の加計学園獣医学部疑惑、I=稲田朋美防衛大臣の自衛隊政治利用、S=下村博文党都連会長・元文科大臣の加計学園献金疑惑、これらを国民に説明できないA=安倍首相自身への不信・不満の現れであることも、了解できました。特に投票前日の秋葉原での安倍首相唯一度の街頭演説は、映像で世界に流され、衝撃的でした。何しろ総理大臣が、国民の批判の声に対して「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と公言・恫喝するのですから。ファシストの面目躍如です。
◆この間のマスコミ、新聞やテレビの風向き変化も、読売新聞の世論調査やFNNの下村=加計学園疑惑スクープ報道で、ある程度わかりました。世論の内閣支持率は軒並み支持率10%低下、不支持率上昇です。ただし2015年夏の戦争法案強行時にも似た動きがあり、その後急回復しましたから、このまま安倍内閣の退場とは行きません。新たな政局の「男たちの悪巧み」は、どうやら、自民党敗戦処理の投票日の夜、高級フランス料理店で方向を決めたようです。とはいっても、日本の進路をめぐる情報戦で、ジャーナリズムが「権力の監視」の役割を果たしえたと評価するのは、早計でしょう。そうしたジャーナリストを排除し脅迫する動きがありました。逆に、権力を代弁したレイプ犯の記者が刑事訴追を免がれたり、官邸情報を無批判にテレビで垂れ流したり、NHK社会部の加計学園スクープに政治部が横やりを入れたりといった、権力迎合・情報操作は続いています。アメリカのトランプ大統領のメディア批判は、記者への暴力奨励までエスカレートしていますが、トランプの盟友であることを誇りにする安倍首相は、まだまだ支持者向けのみならず、大メディアを操作し世論を反転させる機会を狙っていると、みるべきでしょう。 安倍昭恵首相夫人も、加計学園加計孝太郎理事長も、今日までメディアから隠されたままなのが、その証左です。そして、森友国会で、国民の税金についてウソと隠蔽の答弁を積み重ねた役人が、安倍官邸の眼鏡にかなって、国税庁長官に抜擢されました。
◆東京都議選の結果全体も、安倍首相にとっては、「水に落ちた犬を打て」と言いうるほどの、大きな政治的地殻変動ではないでしょう。米国トランプ外交の不安定と北朝鮮の核兵器・ICBM開発は、安倍首相の得意な日米同盟・対外脅威強調、内政の外交・安全保障イシューへの転嫁の格好の材料で、続いています。ナショナリズムの勃興・ポピュリズム政治は、欧州を含む世界的風潮です。東京は首都とはいえ、都議選の国政への波及は限定的です。確かに都議会自民党は惨敗しましたが、圧倒的に勝利したのは、小池百合子知事率いる都民ファーストです。このローカル政党がどうなるかは未知数ですが、「風見鶏」の小池知事も、かつては安倍首相と同じ日本会議に属し、日本会議国会議員懇談会副会長を務めた右翼改憲派です。選挙後小池知事が代表を辞めて特別秘書の野田数幹事長が代表に復帰しましたが、彼は明治の大日本帝国憲法復活を唱える、ウルトラ右翼です。都政では全員当選の完勝で小池知事与党となった公明党は、国政では、自民党安倍内閣を支える改憲与党の中核で、むしろ存在感を増しました。民進党は、2議席を失い混迷で、これからの政党再編=大政翼賛会作りの草刈場になるでしょう。 共産党は、その民進党の陣地から2議席を譲り受けたかたちです。要するに、安倍晋三の悲願であり戦略目標である日本国憲法改悪、戦争のできる「美しい国」への歩みは、多少のブレーキがかかったにしても、新たな条件を得たのです。「ファシズム前夜」は、なお続いています。
◆6月30日の毎日新聞に、「731部隊:父の覚悟の証言、後世に…元高校教諭が出版」という記事が載っています。愛知県出身で731部隊に従軍した作者の父は、1997年に82歳で死亡する約3年前、初めて息子に事実を明かし、「終戦時、命令により全ての証拠を破壊・焼却処分し、戦後も「話したら殺される」と思っていた。証言したのは、死んでいく年齢と覚悟し「もう、殺されても構わない」と考えたからだ、といいます。本サイト学術論文データベ ースの常連、神戸の弁護士深草徹さんは、久方ぶりの投稿「ニワトリからアヒルの帝国軍隊−−憲法9条の果たしている役割」(2017.6)で、戦前帝国軍隊においても、自衛のためという名目の軍隊が、いったん海外に出ることで侵略の軍隊に変わっていくメカニズムを見出し、安倍改憲に警鐘を鳴らしています。私の久しぶりの書きおろし『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊・二木秀雄と「政界ジープ」』は、5月25日に花伝社から刊行されました。満州侵略の関東軍731細菌戦部隊の、敗戦後における隠蔽・免責・復権のメカニズムと、731部隊医師・二木秀雄『政界ジープ』対佐和慶太郎『真相』の、戦後10年にわたる時局雑誌の興亡が目玉で、毎日新聞記事のような、「①郷里へ帰ったのちも、731に在籍していた事実を秘匿し、軍歴をかくすこと、②あらゆる公職につかぬこと、③隊員相互の連絡は厳禁する」という731部隊の「3つの掟」の戦後の歩みを解析したものです。400頁税込み3780円とやや高価ですが、アマゾンやお近くの書店で、お求めください。『週刊金曜日』17年6月9日号に吉田則昭さんの書評が出ていますが、本サイトの「情報収集センター」に、特別研究室『「飽食した悪魔」の戦後』特集を設けて、ウェブ上での参照を求めた「参考文献一覧」、「731部隊に関与した医師・医学関係者」名簿、『輿論』『政界ジープ』暫定総目次、それに2017年4月9日加藤講演録、刊行後にみつかった誤植・誤記訂正、補足点、書評などを、収録していきます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4126:170706〕
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