これは単なる思い過ごしなのか?
- 2017年 7月 13日
- 評論・紹介・意見
- 宮里政充小池百合子
安倍晋三首相は「日本を取り戻す!」と叫んで第二次安倍内閣を発足させた(2012年12月26日)。彼のいう「日本」がどういうものなのかは閣僚人事やNHK経営委員の人選(いわゆるお友達優遇人事)、安保法制や共謀罪法案の強行採決、憲法「改正」への前のめりの姿勢など、実に分かりやすい形で明らかにされてきた。彼は日本会議(「美しい日本の再建と誇りある国づくりのために、政策提言と国民運動を推進する民間団体」)を中心とする右派イデオロギーを背景に、日本という国を限りなく明治という「美しい国」に近づけていこうとしており、しかもそれを自分の在任中に成し遂げたいと思っている。私は国民がそういう安倍首相の政治思想や乱暴な政治手法に次第に慣らされていくことの危機感を持ち続けてきた。
ところが、東京都議選の結果、自民党は惨敗した。国会運営の強引さ、森友・加計問題の真相究明回避の姿勢、連日マスコミを賑わせる閣僚や自民党国会議員の失態やスキャンダル、そして安倍首相自身の、国民に対する傲慢な姿勢――これらがいわば度重なるオウンゴールとなったのである。都民はこの目に余る現状に対し、都政を一挙に飛び超えて安倍政権に鉄槌を食らわせた。私の危機感はすっ飛んだ。だがそれは一瞬のことであって、私はむしろ以前よりも強い危機感を持つようになった。
小池百合子都知事は安倍首相同様日本会議の会員であり、日本の核保有については、月刊誌『Voice』(2003年3月号)誌上における田久保忠衛氏(日本会議現会長)、西岡力氏(東京基督教大学教授)との鼎談の中で、「軍事上、外交上の判断において核武装の選択肢は十分ありうる」と発言し、その4年後には安倍第一次内閣の防衛大臣に任命された人物である。
都知事選で自民党と袂を分かつ結果になったとはいえ、政治思想は安倍首相と首相を取り巻く「お友達」に極めて近い。さらに、彼女の腹心の部下である野田数(かずさ)氏は2012年、日本国憲法無効論に基づく大日本帝国憲法復活の請願を東京都に提出した人物である。彼はその請願書の中で「国民主権という傲慢な思想を直ちに放棄」すべきだと主張した。そして、小池百合子都知事は都議選で圧勝した翌日、彼女の一存で、「都民ファーストの会」の代表を彼に譲った。
おそらく彼女は今後「都民ファーストの会」を軸にして新党を立ち上げ、国政へ進出するだろう。そして、そこへ国会議員をはじめとして多くの野望家が群がってくるのは容易に想像できる。最近の各世論調査(朝日・毎日・読売・NHK・日本テレビ)すべてが、ついに内閣不支持が支持を上回る結果を出した。政界再編もあるかもしれない。しかし、民進党を中心とする野党の勢力が伸びない限り、所詮は保守・右派同士の内輪もめに過ぎない。日本右傾化の流れはとどめようもないのである。
小池百合子氏が日本の総理大臣になる日は来るのだろうか。私は、「自民党はもう終わった」と言い放った舛添要一氏を擁立して東京都知事に当選させた自民党なるもののしたたかさを思い出している。勢力関係によっては小池百合子氏を総理大臣に仕立て上げることなど、この党にとってわけもないことだ。そうなった場合、「小池百合子総理大臣」は安倍総理大臣とちがって憲法9条だけでなくもっと本格的な憲法「改正」への道を巧妙にたどり始めるだろう。まさか大日本帝国憲法を持ち出してくることはあるまいが。
私の危機感は単なる思い過ごしなのだろうか。 (2017.7.11記す)
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