自治会等からの消防団への寄付は、違法性が問われ、廃止の方向へ~迷走する佐倉市の対応に驚く~
- 2017年 7月 14日
- 評論・紹介・意見
- 内野光子
九州、福岡での水害では、懸命の救出作業が進む中、多くの犠牲者が出ている。災害時における自衛隊や消防団員の活動には感謝したい。今回は、消防団員の犠牲者も伝えられている。
その一方で、地域の自治会や町内会からの消防団への寄付が、いま問題になっている。当ブログでも四月上旬に、私の住む街での自治会の出来事に端を発して、消防庁や佐倉市に問い合わせたり、判例や各地の動向などを調べたりして、以下の記事を書いた。
消防団・社協・日赤などへの寄付を強制されていませんか~自治会の自治とは(1)(2)2017年4月9日
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-8f66.html
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/04/post-7804.html
1.消防団への寄付について、ふたたび
行政とのやり取りの中でも、疑問は解明できず、4月11日に佐倉市に質問書を提出していた。佐倉市の場合、「市長への手紙」や質問や要望に対する回答は、多くは、内容に実のない回答ではあったが、ともかく、回答は3週間をめどに、届いていた。ところが、今回は、数回の督促にもかかわらず、回答が届いたのは6月末日であった。2か月半以上かかってしまったわけで、担当の「危機管理室」の名とはあまりにもかけ離れているではないか。
私が、佐倉市長あての質問・要望書は、先の記事と重なる部分もあるが、その要点は、以下のようなものだった。
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(質問)
1.市内の各地域で実施されている「消防団への寄付」(協力金、後援会費等含む)は、以下の①②③の条文からして違法と思われます。「公務外の仕事に対して、各自治会などが消防団へ寄付することは、消防団への感謝や慰労の気持ちであって問題がない」とする根拠はなにか。以下の条文・判決内容に沿って回答願います。
①消防組織法第9条・15条:消防団は地方行政団体の行政機関である
②地方公務員法第6条3項の五:消防団員は非常勤の地方公務員である
③地方財政法第4条の五:割当的寄付金等が禁止されている
④2010年3月24日、横浜地裁の判決:
〇消防団員の慰労のために,市民等から寄附金等を受け取ることは,公務員が本来の職務やそれに関連する業務につき金員を受領しているとも受け取られる可能性があるから、決して好ましいものではない
〇消防団が,本来業務のほか本来業務との関連が疑われる活動につき,市民等から慰労などの趣旨で直接寄附金を受領することは、違法となる余地がある
⑤『消防団の概要』(危機管理室・消防団本部)では、
「4.消防団の仕事」に「(1)消防団員の身分・仕事・権限⇒[1]消防団員の身分⇒3.消防団員は社会に奉仕する団体である⇒②消防活動に対して何らの代価も求めない」とある。
2.消防団員が個人としてではなく、制服を着て、公務と類似の業務をすることは、外形上、公務とみなされ、団員たちの認識による判別には意味がない。さらに、前掲『消防団の概要』では
「4.消防団の仕事」に「(1)消防団員の身分・仕事・権限⇒[2]消防団員の仕事⇒2.災害発生時以外 ⇒ ①火災発生予防 ②警備警戒活動 ③教育訓練活動 ④機械器具等の点検」
とあり、災害発生時以外の①~④の業務も「消防団の公務」とされている。消防団員としての地域での諸活動を「公務外の活動」とする理由は何か。
(要望)
今年度ないし次年度、直ちに実施できることとして以下を要望します。
1.消防団が寄付を請求するはもちろん、消防団が寄付を受け取ることも、法令に従って、禁止してください。あわせて『自治会長・町内会長・区長の手引き』における「消防団の後援会費」についての質疑を削除するとともに、自治会等と消防団の金品の授受の禁止を明記してください。
2.他の市町村の条例には、団員の「遵守事項」の一つに「金品や酒食の接待の請求や受けることも禁止する」主旨の条文があるが、佐倉市の「消防団条例」には示されていない。「遵守事項」として条例化してください。
3.同時に、まず慣例と実態を知ることが大事なので、佐倉市は、自治会等及び消防団において、消防団への寄付がどのように集められ、渡されているのかの調査をしてください。
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2.消防団による祭礼の警備や野焼きや花火の監視活動は、公務か公務外か
2か月半後、回答ではない中間報告が届き、そこでは、重大な訂正がなされていた。先の記事にも紹介した、電話でのやり取りで「消防団の地域での活動の中には公務外の活動もあって、それに対する自治会などからの慰労や謝礼の気持ちである寄付には問題がない」とする部分への訂正と思われる。詳しくは、添付資料Aを見ていただきたい。要は、「地域貢献活動として本来の業務以外である自主的な警戒活動をはじめとする地域の祭礼の警備、野焼きの監視活動などの『公務外の活動』に対して地域住民が『慰労や気持ち』として任意に支援しているものであり、市では関知することはできないもの」と説明したが、『公務外の活動』は、『公務の範囲』と訂正する、という内容であった。上記質問書の2.に応えたつもりかもしれないが、なぜ見解が一変したか明らかではない。
資料A・中間報告↑
これは、「公務の範囲」での上記のような活動に、地域住民の『慰労や気持ち』として任意に支援していることに市は関知しない、と読み替えなければならない。本来「公務」に従事する公務員に「慰労や気持ち」が入り込む余地はないはずである。寄付をする方も受領する方も、まさに刑事犯にあたる行為となる。佐倉市内でも、一世帯当たり千円単位で、自治会として数十万単位で消防団への寄付を強いられている地域もあり、これに関知しないということは、佐倉市自体も、行政機関「消防団」への「公務」に対する寄付は、受領するならば佐倉市への収入として処理していないことになる。
「回答書」の文章をたどれば、そこにも大いなる矛盾が
6月末日にようやく届いた回答書は、添付資料Bをご覧いただきたい。その冒頭には、「消防団員が特別地方公務員であること、消防団が消防組織法に規定する行政機関であること、および地方財政法により割り当て寄付が禁じられていることは、事実ですが、これらの規定を踏まえても、当市の消防団への自治会等からの寄付が違法であるとの結論」には飛躍があるという。その次の文章は「自治会等からの寄付は消防団という組織に対する寄付であり、消防団員がこれを受領することはありません」とあり、「消防団という組織」は、回答書冒頭にあるように「行政機関」への寄付であることを明確にしている。飛躍でもなんでもなく、行政機関への寄付であることは、自明のことであるので、「ふるさと納税」のような制度がない限り、受け取ってはならない寄付であり、返還しなければならない性格のものである。
回答書にはさらに、消防団への寄付は、「自治会町内会等の自主的・自立的判断に基づく任意の自治活動であり」というが、行政機関たる「消防団」への寄付は、だれからであろうと、何の目的であろうと、行政機関の収入である。行政機関が、市の関知しない収入を得て、関知しない支出をすることは、ほかの行政機関を例に考えても、想定外であって、違法である。しかも、市は、当然のことながら、条例に基づいて、消防団の予算は約7000万円(うち報酬費約5000万円)、渡し切りの交付金も支払われ、消防団員は、特別公務員として、役職によって異なるものの、年間の一律報酬や出動手当、退職報償金なども支払われているのである。
近年、消防団員の成り手が少ない自治体が続出して、消防団の機能が弱体化している例が多く聞かれるのも事実である。少子高齢化、地域の過疎化、地域共同体・家族の在り方自体が変容している中で、消防団制度を維持することに限界に来ているのは確かである。しかし、そのことと地域からの「慰労や謝礼」の印として「寄付」を合法化するのは筋違いで、別問題として考えなければならない。
また、回答書に、寄付が割り当てられていない、寄付をしない自治会もある、ことが任意の証左といい、消火活動は寄付の有無にかかわらず公平に行っていることをもって、行政が関知しない理由としているようであるが、述べてきたように、要は、行政機関が寄付を受領していることの適法性を担保することにはならないだろう。
資料B・回答書↑
ともかく、佐倉市は、この件の実態を知りたくない、関わりたくないの一点での弁明、いささかあきれた対応が続いている。
全国的な動向として、各地で、自治会等の寄付の在り方をめぐって、議論が起こっているし、消防団の寄付については横浜地裁の判例などがきっかけで、消防団への寄付を廃止する市町村も増えている。昔のムラ社会意識から抜け出せない佐倉市、後れを取らないように。
初出:「内野光子のブログ」2017.07.12より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/06/post-4431.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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