安倍政権と加計学園の癒着に切り込むー下村博文政治資金規正法違反告発
- 2017年 8月 1日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
本日(7月31日)午前、阪口徳雄君、児玉勇二君ら同期の弁護士とともに東京地検特捜部に赴き、下村博文らに対する政治資金規正法違反の告発状を提出してきた。
被告発人は、政治団体「博友会」の主宰者下村博文と、同会の代表者として政治資金収支報告の届出名義人となっている井上智治、そして同会の会計責任者兼事務担当者兼松正紀の3名。被告発事実は、下村が文科大臣だった2013年と14年当時における、政治資金パーティのパーティ券購入代金の収支報告書への「不記載」と「虚偽記入」。パーティ券購入先つまりは金主は、話題の加計学園である。
政治資金規正法違反は形式犯である。それだからこそ逃れがたいものの、実質的な違法性軽微として立件を免れるおそれなしとしない。しかし、記者会見で強調されたことは、本件告発は捜査の端緒に過ぎず、政治資金規正法違反はその入り口である。出口は実質犯、贈収賄成立の可能性となりうる。そこまでを見据えた厳格な捜査を期待したい、ということ。
下村が文科大臣となって(2012年12月~15年10月)以来、それまで年間20万円だった加計学園からの博友会への寄金額は、100万円に増額されている。しかも、加計学園が経営する岡山理科大学は、獣医学部だけでなく教育学部の新設(15年4月開学)も目指していた。
設立認可の権限をもつ大臣と、設立認可の申請をする事業者の、金を介しての癒着である。公正であるべき行政が歪められたと思わないのは、主権者としてあまりに鈍感というほかはない。
また、ことは政権中枢と加計学園という首相縁故者の癒着の問題でもある。20ページに及ぶ告発状の、14ページのスペースは「告発の理由」。背景事情に紙幅を割き、首相夫妻と下村夫妻、そして加計孝太郎学園長の親密さのうえに、加計学園問題があることを詳述している。本件告発は、捜査機関によるその解明のきっかけとなり得るのだ。
以下に、告発状の「被告発事実」についての概要だけをご報告する。
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第1 告発事実
1 加計学園からのパーテイーの対価に係る収入不記載罪
(1)「博友会」告発事実1(2013年加計学園からの100万円のパーティーの対価に係る収入の不記載の告発事実)
「博友会」の代表である井上智治と同会計責任者である兼松正紀は、「博友会」の実質的な代表である下村博文(以下この3名を総称する場合は「被告発人ら」と略す)と共謀の上、2013年10月3日東京プリンスホテル(東京都港区)における「セミナー」を開催したが、その際、「学校法人「加計学園」からのそのパーティーの対価に係る収入金100万円を受領しながら、同一の者からの政治資金パーティーの対価の収入で、その金額の合計額が20万円を超えるものについては、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日を「博友会」の2013年分政治資金収支報告書の収入欄に記載する義務あるところ、そのいずれも記載せず、2014年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
(2)「博友会」告発事実2(2014年加計学園からの100万円のパーティーの対価に係る収入の不記載の告発事実)
被告発人らは共謀の上、2014年10月14日東京プリンスホテル(東京都港区)における「セミナー」を開催したが、その際、「加計学園」からのそのパーティーの対価に係る収入金100万円を受領しながら、同一の者からの政治資金パーティーの対価の収入で、その金額の合計額が20万円を超えるものについては、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日を「博友会」の2014分政治資金収支報告書(以下「博友会2014年分収支報告書」という)の収入欄に記載する義務あるところ、それらを一切記載せず、2015年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
2 上記1の予備的告発事実
(1)告発事実1(1)の予備的告発事実(「政治資金パーティーの対価の支払のあっせん」の不記載罪)
下村博文が2017年6月29日の記者会見で釈明したようにパーティー券50枚分100万円を仮に「加計学園」の山中一郎・秘書室長が11人の者からそのパーティーの対価の支払いを集め「博友会」に提供した合計金であったとしても、それは政治資金規正法の「政治資金パーティーの対価の支払のあつせん」によるものであるから、20万円を超える対価の支払の場合は、当該対価の支払のあっせんした者の氏名、住所、職業、あっせんに係る収入金額、これを集めた期間、当該政治団体に提供された年月日を「博友会2013年収支報告書」に記載する義務あるところ、それらを一切記載せず、2014年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
(2)告発事実1(2)の予備的告発事実(「政治資金パーティーの対価の支払のあつせん」の不記載罪)
下村博文が2017年6月29日の記者会見で釈明したようにパーティー券50枚分100万円を仮に「加計学園」の山中一郎・秘書室長が11人の者からそのパーティーの対価の支払いを集め「博友会」に提供した合計金であったとしても、それは政治資金規正法の「政治資金パーティーの対価の支払のあつせん」によるものであるから、20万円を超える対価の支払の場合は、当該対価の支払のあっせんした者の氏名、住所、職業、あっせんに係る収入金額、これを集めた期間、当該政治団体に提供された年月日を「博友会2014年収支報告書」に記載する義務あるところ、それを、一切記載せず、2015年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
(3)上記2(2)に関する会計帳簿の虚偽記載の予備的告発事実
週刊誌に公表された一覧表「2014年博友会パーティー入金状況」が「博友会」の会計帳簿であるとすれば、上記2(2)の場合は、上記100万円が「政治資金パーティーの対価の支払のあつせん」によるものであること、その11名の各支払内訳を、会計帳簿にそれぞれ記載する義務があるところ、あたかも学校法人「加計学園」が2014年10月10日に政治団体「博友会」主催の政治資金集めのパーティー券100万円分を入金したかのごとき虚偽の記入をし、
もって政治資金規正法第24条第1号(会計帳簿の虚偽記載罪)に違反したものである。
(注)2013年の会計帳簿虚偽記載罪の公訴時効は3年であるので告発しない。
3 「博友会」のパーテイーの対価の「不透明性」に関する告発事実
(1)「博友会」パーテイの対価の不透明性に関する告発事実1(2012年パーティー券代収入計290万円の不記載の告発事実)
被告発人らは共謀の上、2012年9月28日東京プリンスホテル(東京都港区)における「セミナー」を開催したが、その際、「(株)東京インターナショナル」からのパーティー券代40万円、「(株)ナガセ」からのパーティー券代50万円、「都内貸金業男性」からのパーティー券代200万円を、それぞれ受領しながら、「博友会」の2012年分政治資金収支報告書(以下「博友会2012年分収支報告書」という)の収入欄に、そのいずれも記載せず、2013年3月29日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
(2)「博友会」パーテイの対価の不透明性(裏カネ)に関する告発事実?(2013年パーティー収入合計額2019万円の虚偽記載と裏カネにした金1039万円分の多額の「裏金」支出の不記載の告発事実)
被告発人らは共謀の上、2013年10月3日に開催された、東京プリンスホテル(東京都港区)における「セミナー」で合計約2019万円の収入がありながら、「博友会2013年分収支報告書」の収入欄に「政治資金パーティーの対価に係る収入」として合計額980万2円と虚偽の記載をし、かつ、「博友会2013年分収支報告書」の支出欄にその裏カネにした金1039万円分の支出を一切記載せず、2014年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号・第3号(政治資金収支報告書の不記載罪、虚偽記載罪)に違反したものである。
(3)「博友会」パーテイの対価の不透明性に関する告発事実?(2014年加計学園からの100万円を除くパーティー券代収入計90万円の不記載の告発事実)
被告発人らは共謀の上、2014年10月14日東京プリンスホテル(東京都港区)における「セミナー」を開催したが、その際、「株式会社東京インターナショナル」から40万円、「日本医師連盟」から50万円を、それぞれ受領しながら、同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払で、その金額の合計額が20万円を超えるものについては、当該対価の支払をした者の氏名、住所及び職業並びに当該対価の支払に係る収入の金額及び年月日を法12条において「博友会2014分収支報告書」の収入欄に記載する義務があるところ、それらを一切記載せず、2015年3月31日に同収支報告書を東京都選挙管理委員会に提出し、
もって政治資金規正法第25条第1項第2号(政治資金収支報告書の不記載罪)に違反したものである。
第2 罪名及び罰条
1 告発事実1について
告発事実1(1)(2)について
被告発人らの行為は政治資金規正法第25条第1項第2号(不記載罪)、刑法第60条(共同正犯)
2 予備的告発事実2について
(1)同2(1)(2)について
被告発人らの行為は政治資金規正法第25条第1項第2号(不記載罪)違反、刑法第60条(共同正犯)
(2)同2(3)について
被告発人らの行為は政治資金規正法第24条第1号(会計帳簿の虚偽記載罪)違反、刑法第60条(共同正犯)
3 告発事実3について
被告発人らの行為のうち告発事実2の「総額の収入についての虚偽記入」は政治資金規正法第25条第1項第3号違反。それ以外の告発事実の不記載は政治資金規正法第25条第1項2号違反。いずれも刑法第60条(共同正犯)。
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以上のとおり、第1項の「告発事実1」および「同2」が主位的告訴。添付の資料から常識的に推論可能な犯罪を告発事実とするもの。第2項の「予備的告発事実」は、容易には信じがたいが仮に被告発人下村の本件に関する記者会見での弁明が正しいものであったとした場合に成立する犯罪の告発である。
昨年(2016年)6月、東京地検は被告発人甘利明に対する「あっせん利得処罰法違反」告発を不起訴とした。再び、下村博文不起訴では、政権から独立した検察の権威を問われることになろう。是非、政権中枢に切り込む捜査を期待したい。
(2017年7月31日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.07.31より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=8960
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