砂川事件裁判の再審請求 /東京高裁は早期に「再審開始」の決定を!
- 2017年 9月 22日
- 時代をみる
- 吉沢弘久
- この再審請求では、法的には刑訴法337条の4項目が焦点。同条の免訴事由が制限列挙であるか否かは重要な論点だ。地裁段階での検察意見では、免訴判決の事由は「確定判決」などの4項目だけ--とする法解釈を示した。しかし憲法37条1項「迅速裁判」違反で法定外の免訴判決事由を認めた1972年12月20日付最高裁判決(高田事件)、及び法定外の公訴棄却判決事由を認めた2016年12月19日付最高裁判決(ある殺人事件)によって、刑訴法337条が定める4項目は例示的列挙であることが判例上確定した。
- 新証拠(駐日米大使マッカーサーが本国に送った電報1通・書簡2通―アメリカ国立公文書館所蔵)によって、砂川事件最高裁大法廷の裁判長田中耕太郎が多数の裁判情報を被害者である米側に伝え、大法廷は憲法37条1項で刑事被告人に保障されている「公平な裁判所」ではないことが明らかになった。砂川事件では、憲法37条1項「公平な裁判所」違反が認められ、高田事件と同様に、「審理を打ち切るという非常救済手段を用いることが是認されるべき場合」(高田事件判決)という免訴事由が存在することになる。
- 即時抗告を審理する東京高裁の裁判官たちが、法律家として事実と向き合い、憲法と法律、そして判例を正しく適用すれば、再審開始決定しかあり得ない。しかし、開始決定の場合、安倍政権が集団的自衛権や安保法制制定の法的根拠とした最高裁大法廷判決(田中耕太郎裁判長)を違憲無効と判断することになり、「駐留米軍は憲法違反」とした一審伊達判決が浮上することになる。
東京高裁は早期に「再審開始」の決定を!
1957年、砂川米軍基地拡張反対で、米軍基地内にある民有の農地の測量に抗議をして境界線の策を壊して基地内に侵入をした労働者学生約1000人のうち7人が、日米安保条約に基づく行政協定(現在に地位協定)に伴う刑事特別法に違反するとして起訴され、「駐留米軍は違憲の存在であるから被告全員無罪」とする東京地裁判決(伊達判決)を破棄して全被告に有罪とし罰金を科すことになり、また、「安保条約は司法の違憲審査の対象ではない」としてその後の憲法裁判の決定的な判例となったのが、当時の最高裁長官・田中耕太郎が裁判長を務めた砂川事件裁判である。また、2013年に不法にも安倍政権が成立をさせた安保関連法が合憲であるという法的根拠にも使われた。
しかし、この裁判から半世紀のちの2008年~13年に、当時のマッカーサー駐日大使がこの裁判の判決時期、内容、判事の評議内容などの情報を裁判中に田中裁判長から密かに得ていたことを記録するマ大使からの国務省への秘密報告がアメリカ国立公文書館に所蔵されており、そのコピーが、日本の研究家によってもたらされた。私たち「伊達判決を生かす会」は、裁判長が裁判中の情報を一方の当事者であるアメリカ(事件では被害者)に漏えいしていたことが、憲法が保障し裁判所法や刑事訴訟法が求める「裁判の公平」を逸脱していた、として、免訴判決を求める砂川事件再審請求を2014年6月に東京地裁に提起した。東京地裁は2016年3月8日に理不尽な理屈付けをして「棄却」の決定を出した。もちろん、私たちは、法の定めに従い3月11日に高裁に「特別抗告」をした。
東京高裁は、本年2月17日の請求人意見陳述手続において「決定を2~3ヶ月後に出す」と言明した。にもかかわらず、それから半年以上経った現在も決定は出されておらず、8月29日私たち請求人弁護人からの決定時期の問い合わせに対し、9月12日東京高裁は、何を検討しているかの説明もないまま「当初の予定より検討に手間をとっている。できるだけ早期に決定する。」と連絡をしてきた。
検察は、地裁段階では請求人からの請求書他多数の補充書に対し僅か1通の意見書を出しただけ、高裁の即時抗告審では、請求人からの即時抗告申立書他多数の補充書について全く反論せず一通の意見書も提出していない。昨年3月4日に東京地裁が出した「棄却」決定は、法理も論理も証拠記載事実も無視した真剣に読むには堪えないシロモノであった。即時抗告審で、請求人が地裁決定の基本的・具体的批判や事実誤認を指摘する意見を出しているにもかかわらず、高裁が「棄却」を求める意見をはじめ請求人の意見に対し何も意見を言わないことからしても、地裁決定の理不尽さが明確であることからも、高裁は「再審開始」決定を早期に出すべきことは論を待たない。
検察官は、地裁段階において、新証拠についてその存在だけではなく、新証拠の記載内容の真実性(虚偽の事実が記載されていないこと)を認めざるを得なかった。その結果、東京地裁は、新証拠に記載されている事実に正面から向き合わず、或いは事実を捻じ曲げ、請求棄却の決定を出した。
安倍政権が憲法を蹂躙し日本を「戦争する国」にしようとしている情勢の下、高裁裁判官たちは勇気と良心に基づき司法の正義を守る決断をするべきだ。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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