迷走の小池都知事
- 2017年 10月 7日
- 評論・紹介・意見
- 希望の党選挙野上浩太郎
小池が党首の座にある「希望の党」が一体何を目指しているのか、分からなくなった。10月4日夜、総選挙の第一次公認候補名簿の顔触れを発表したが、衆院過半数に届かない192人で、過半数233議席にはるかに足りない。この192人は民進党の前職衆院議員のうち、小池のお眼鏡にかなった新鮮味の薄い右派候補がほとんどである。しかも、小選挙区はほとんどが東日本に偏しており、とても日本全体で安倍自民に勝って政権を奪うリアリズムに欠けている。安倍は9月28日に臨時国会を召集、一切の審議を拒否して10月10日召集―同22日投開票の政治スケジュールを閣議決定した。みずからの政権を打倒しようとする希望の党(小池新党)がこのありさまでは、まず敗北する恐れは皆無といってよい。
テレビに出てしゃべる政治評論家らは当初、小池が先行出馬して圧勝した昨年秋の東京都知事選や、この4月の都議選での本格勝利を思い出して、天才的な政局上手と思い込んだ。これまで野党の不遇にあえいでいた民進党の中道―右派議員らを全員、希望の党に合流させ、もともとの小池ファンと合わせて自民・公明与党と戦わせれば、あるいは勝機が生まれ政権(常識的には小池百合子首相)を確保できるかもしれない、と安直に予想した。そのためには法律・制度上の大前提として小池は、いまその座にある東京都知事の座を去り、後任を急ぎ選出し、政権与党のトップに就くであろう。3年後の東京5輪は総理の立場からかかわればよい、と判断するに違いない。かねてから最高権力の座を目指してきたらしい小池は、そう考えたからこそ、新党の「希望」の代表の座を確保したのだろう。
ところが、今のところ(10月4日現在)、小池はそれらの予想を全面否定している。戦術的に否定しているのではなく、「最初からそう言ってるでしょ」と質問者を小ばかににしたような表情で否定する。現時点ではその否定を信用せざるを得なくなった空気だ。特に強く否定するのは「排除の論理」のほうで、民進党から希望の党に「合流」しようと期待する議員のうち憲法改正に消極的(あるいは反対)してきた議員や連合出身の左派議員の入党排除は手厳しい。譲らない。このためテレビ画面に映る小池側近はいつまでも増えず、必ずくっついているのは若狭、細野、玄葉3議員らだけで、とてもじゃないが政権を取りに行く元気の良さは感じられない。これでは若狭が思わず口を滑らせた「次の次」を狙うしか、政権獲得は駄目だろう。
小池が「排除の論理」を持ち出したとき、わけのわからぬ言動をしたのが前原誠司民進党代表だ。小池―前原の二人だけの会談で、「原則として民進党に所属する議員全員を希望の党に事実上合流させることで合意した」と発表した。これを聞かされたのが民進党議員総会の全員である。ところがこれを聞き及んだ小池は「排除の論理」を持ち出し、民進党国会議員の一人一人を精査して、原則に適合しない議員の合流は認めない、と繰り返した。この「排除」を厳しく実施すれば、10数人が合流拒否に遭って無所属で出馬するか、新党を結成せざるを得なくなる。無所属組は岡田克也元代表や野田佳彦前首相ら。新党を立ち上げたのが枝野幸男元官房長官で、新党名は「立憲民主党」。バックに連合がつき、かなりの議席が当選しそうだ。前原はすっかり信用を失い、テレビニュースにも出なくなった。他方の小池は年齢的にも今回が最後のチャンスで、都知事の座をかなぐり捨ててリーダーシップをとらない限り、将来も政権の座を取るのは無理であろう。
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