われわれには学習する能力がある
- 2017年 10月 11日
- 時代をみる
- 宮里政充選挙
9月28日、安倍首相は臨時国会の冒頭に衆議院を解散した。「国難突破解散」なのだという。だが、この「大義」は、もちろん後からとってつけたもので、とても解散の理由にはなりえていない。北朝鮮問題への対応や、憲法改定、消費税増税とその使い道云々などの問題は、これからの国会審議で詰めていけばいいだけの話だ。所信表明もせず、質疑応答もさせず、つまり、有無を言わせず解散を宣言するからには、国会審議を続けることへのよほどの危機感があったに違いない。
安倍首相は一体何を恐れていたのか。
先の国会審議で安倍政権は末期的な症状を呈していた。「加計・森友問題」で追い詰められてその場逃れの答弁を繰り返していたばかりでなく、稲田元防衛大臣の国会におけ矛盾した答弁、都議選における問題発言などは、安倍内閣の喉元に突き刺さった棘であったし、今考えればどうして稲田防衛大臣が公職選挙法・自衛隊法などに対する違反で起訴されなかったのか不思議なくらいだ。そのほか、自民党議員の度重なるスキャンダルはオウンゴールのオンパレードであった。おまけに東京都議選の自民党惨敗……。「こんな人たち」発言に対するバッシングの嵐。(首相は今般の選挙演説の日程を直前まで知らせない方法で「安倍やめろ!」の「妨害」を避けるのに必死である)
内閣支持率は支持・不支持が逆転するまでになった。「安倍首相は傲慢で強権的で、政治家としても人間としても信頼できない」という新聞各社の世論調査の結果は安倍首相をぐらつかせた。
安倍首相が冒頭解散した一番の理由は、やはり、加計・森友問題への追及を恐れたからだと思わざるを得ない。この先、かりに解散せずに国会審議を続ければ、政権維持どころか安倍晋三という政治家はその罪を問われ、場合によっては刑事告訴されることになる。そこで「丁寧に説明していきたい」という言葉とは裏腹に、逃げ回り、切羽詰まって冒頭解散に打って出た。「仕事人内閣」が何の仕事もしないうちに、そして北朝鮮問題の危機をさしおいてである(私は、安倍首相には北朝鮮とアメリカの間を取り持つ重要な責務があると思っている)。
普通の国民なら、加計・森友問題の裏には安倍首相夫妻にとって致命的な事実が隠されているに違いないと思うだろう。二階幹事長は記者団に「加計・森友問題は小さな問題だ」と語ったが、「小さな問題」であれば、加計氏や昭恵夫人を証人喚問し、さっさと疑惑を払拭すればよかったのである。
ともあれ、総選挙戦は始まった。マスコミは連日新党結成と政界再編の行方を追い続けている。私は7月13日、この『リベラル21』に、東京都議会議員選挙の結果とその後の小池百合子氏の動きについて、次のように書いた。
「おそらく彼女は今後『都民ファーストの会』を軸にして新党を立ち上げ、国政へ進出するだろう。そして、そこへ国会議員をはじめとして多くの野望家が群がってくるのは容易に想像できる。最近の各世論調査(朝日・毎日・読売・NHK・日本テレビ)すべてがついに内閣不支持が支持を上回る結果を出した。政界再編もあるかもしれない。しかし、民進党を中心とする野党の勢力が伸びない限り、所詮は保守同士の内輪もめに過ぎない。日本右傾化の流れはとどめようもないのである」
民進党が希望の党に飲み込まれた。選挙の結果がどうであれ、今後改憲勢力は拡大し、リベラル勢力はじり貧状態になる。そして、自民党と希望の党が結託して憲法を改定し、自衛隊を先制攻撃可能な国防軍へと変貌させることになっていくであろう。そして早晩、日本という国家は天皇制、核兵器保有、兵役の義務などなど、国家主義国家への道を突き進んでいくであろう……。現在の政治の流れを見ると、そういう危機感に駆られることは確かにある。
だが、果たしてそうだろうか。日本国民は安倍晋三という一人の右派政治家と、小池百合子という極右でポピュリストに振り回され、戦前・戦中の大政翼賛会を再現させるほど愚かであろうか。学習能力を持たぬ愚民であろうか。私は(ひたすらな願いを込めてだが)、そんなはずはないと思っている。
枝野幸男氏(立憲民主党党首)の選挙事務所でボランティアを始めたある友人は、事務所のただならぬ熱気を伝えてきた。立憲民主党に対するツイッターのフォロワーの急激な伸びも報じられている。私は立憲民主党がリベラルの受け皿として評価され、今度の選挙にその結果がはっきりと数字で示されることを大いに期待するものである。今度の総選挙は戦後70年間続いてきた民主主義が本物であったかどうか、国民1人ひとりが験される、これまでにない重要な選挙だと思っている。(2017.10.8記す)
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
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