森友学園事件で新たな告発
- 2017年 10月 17日
- 時代をみる
- 澤藤統一郎
本日、「森友・加計問題の幕引きを許さない市民の会」の有志103名が東京地検特捜部に森友学園への国有地売却に関連する告発状を提出した。
告発対象は、池田靖氏(近畿財務局統括国有財産管理官・当時)の背任(刑法第247条)、佐川宣寿氏(財務省理財局長・当時、現国税庁長官)の証拠隠滅(刑法第104条)である。
本日午前10時、代理人弁護士5名と告発人代表5名が東京地検を訪れて告発状を提出、その後11時から東京地裁庁舎内の司法記者クラブで記者会見を行った。
告発状をお読みいただけば、告発をした意味をご理解いただけるものと思う。
**************************************************************************
告 発 状
2017年10月16日
東京地方検察庁 御中
告発人 醍醐聰以下別紙告発人目録に記載の103名
告発人ら代理人
弁護士 澤藤統一郎
同 澤藤 大河
同 杉浦ひとみ
同 武井由起子
同 太田 啓子
同 八坂 玄功
第1 本件告発の概要と背景事情
1 本件は、いわゆる森友学園事件の一連の経過のなかで、これまで明らかとなった限りでの関係者の刑事被疑事実を告発するものである。
森友学園事件は、最高権力者の行政私物化を象徴する事件として、国民から徹底的な疑惑解明を望まれているところ、説明責任を負うべき行政が政権に対するおもねりの故に消極姿勢に終始し、全容の解明にはほど遠い実情にある。このままでは、いくつもの疑問を残しながら疑惑解明に幕が下ろされるのではないかと危惧せざるを得ない。
この事態にあって、告発人らは行政から独立し、政治的に不偏不党の立場にあって一切の忖度に無縁の存在としての刑事司法に疑惑の全容解明を期待して、本告発に及ぶ。本告発は事件の核心の一端に触れるものとして、その端緒を提供するものである。
2 森友学園をめぐる一連の疑惑の核心は、学校法人森友学園が小学校建設予定地とした国有地の極端な低額譲渡にある。この核心たる事実は、必然的に当該国有財産の管理を担当する公務員の国に対する背信行為をともなうものとして、背任の刑事被疑事件を伏在するものとなっている。
具体的には、国有財産法や財政法に定められた、国有財産を適正に管理し、これを譲渡する場合には客観的に適正な価格を以てするよう職務上の義務を負う近畿財務局担当官の背任行為である。
その被疑事実については、すでに木村真豊中市議らによる背任罪での刑事告発が先んじ、さらに本年7月13日付で、阪口徳雄弁護士(大阪弁護士会)や上脇博之神戸学院大学教授のグループが、詳細な理由を付した告発状を大阪地検に提出してこれに続いている。しかし、その捜査の進展はいまだに見られない。
3 捜査の進展が見られないうちに、マスメディアの疑惑解明に向けた調査と報道が進展した。本件国有地の譲渡価格をめぐる森友学園の籠池前理事長夫妻、代理人弁護士(当時)、工事業者らと近畿財務局担当官との交渉経過の録音記録が、最近になって順次テレビメディアで公開された。その録音の時期は概ね2016年3月から5月のこととされたもので、これが公開に至ったのは、いずれも先行する各告発の以後においてのことである。
この生々しい録音記録は、交渉経過の証拠資料として強い証明力を有するものと考えられる。この録音記録を証拠として、その任務に違背して国有財産を不当な廉価であると認識しつつ譲渡した池田靖・近畿財務局管財部統括国有財産管理官(当時)を背任の被疑事実をもって告発する。
それとともに、この交渉経過について国会で虚偽答弁を重ねたことが明確となった佐川宣寿理財局長(当時)を、同虚偽答弁によって被告発人池田の背任の証拠方法である当該国有財産譲渡に関する交渉経過の電子データ復元記録の顕出を妨げた証拠隠滅の被疑事実を告発する。
告発人らは、この両名についての各被疑事実の捜査を端緒として、厳正な刑事司法の発動を通じた疑惑全容の解明を期待するものである。
第2 告発の趣旨
被告発人池田靖、同佐川宣寿の下記各行為は、それぞれ背任罪(刑法第247条)及び証拠隠滅罪(同第104条)に該当するので、各被疑事実について厳正な捜査の上、刑事上の処罰を求める。
記
1 被告発人池田靖は、近畿財務局管財部統括国有財産管理官の任にあって、国に対して、国有財産法、財政法等の規定に基づき、管内の国有財産を適正に管理しこれを譲渡する場合には客観的に適正な対価をもってすべき任務を負う者であるところ、
2016年3月下旬ころ、大阪府豊中市野田1501番(8770.47㎡)の国有地(以下、「本件土地」という)について、その取得を希望する学校法人森友学園の代表者籠池泰典理事長(当時)らとの譲渡対価の交渉の席上、当該土地に埋設されたゴミ撤去費用を過大に評価しこれを控除する外形を装うことによって、極端に低廉で不適正な対価をもって譲渡しようと企図し、
本件土地の深度3m以下には、埋設ゴミの存在が確認されていないことを知悉しながら、「3メートル以下の地下にも多量のゴミがあるとの架空の想定の下、過大なゴミ撤去費用を計上して、これを適正対価額から控除するという名目で廉価の譲渡をするストーリーをイメージしている」という趣旨の近畿財務局職員(氏名不詳者)の発言を承けて、「資料を調整する中で、どういう整理をするのがいいのかご協議させて頂けるなら、そういう方向でお話し合いさせてもらえたらありかたい」と発言してその不適正対価による譲渡の意思を表明した上、
同年6月20日、国が学校法人森友学園に対し、時価評価額9億5600万円の国有地である本件土地を学校法人森友学園に譲渡するに際して、
森友学園の経済的利益または自己の身分上の利益を図る目的のもと、
存在確認のない地中埋設物についての架空あるいは過大な撤去費用8億1900万円を計上してこれを控除する名目をもって、
国をして金1億3400万円の不適正な対価で本件土地を森友学園に譲渡せしめ、もってその任務に違背して国に最大額金8億1900万円相当の損害を与えたものである。
2 被告発人佐川宣寿は、財務省理財局長として森友学園事件についての国会各委員会質疑における政府答弁者として森友問題の疑惑を解明すべき立場にあって、自身の発言が虚偽であることを認識しながら、
(1) 同年3月15日衆院財務金融委員会において、「大阪航空局に埋設物の撤去・処分費用を依頼いたしまして、それを見積もって、それを前提にして、私どもは不動産鑑定にかけてございます。それを受けましたのが(2016年)5月の末でございますが、いずれにしても、そういう価格につきまして、こちらから提示したこともございませんし、先方(森友学園側)からいくらで買いたいといった希望があったこともございません」と答弁し、
(2) さらに同年4月3日衆議院決算行政監視委員会において、森友学園との交渉、面談記録に関して、「紙もパソコンのデータも同様の取扱い(保存期間1年未満の文書として廃棄)をしている。パソコン上のデータも、短期間で自動的に消去され、復元できないシステムになっている」と答弁し、
もって、被告発人池田靖についての前記告発事実のとおりの刑事被疑事件(背任)に関する証拠方法である国有地譲渡対価値引き交渉に関する復元可能な電子データの顕出を妨げて、証拠を隠滅したものである。
第3 本件各被疑事実と告発に至る事情
1 本件土地譲渡対価額の交渉経過について
(1) 大阪市淀川区に本部を置く学校法人森友学園は、豊中市の本件土地を敷地とする小学校(瑞穂の國記念小學院)の開設を予定して、まず本件土地についての賃貸借契約を締結し、次いで賃借土地の譲渡を希望して、同土地を管理する近畿財務局と譲渡価格について交渉し、2016年6月に譲渡を受けた。
その譲渡対価額が、時価評価としての鑑定額の1割程度のものに過ぎず、実額にして8億円もの値引きがされたことが大きな問題となった。とりわけ、開設予定の小学校の名誉校長として安倍晋三総理大臣の妻である昭恵氏の関与が深く、一時期同校の校名を「安倍晋三記念小学校」としての寄付金募集の事実もあったことから、権力者の行政私物化ではないか、あるいは行政官の政権への過剰な忖度ではないか、との疑惑が生じた。
しかも、当初はその譲渡価格の公表すら拒まれ、さらに「疑惑」追求の過程で、交渉記録は一切破棄されているとの対応で物議を醸した。少なからぬ国民が国政の暗部を見せられた思いとなり、安倍晋三氏自身の疑惑全面否定の言や、重要な証人である安倍昭恵氏の国会での聴取を頑なに拒否する姿勢を、圧倒的な世論が納得せず、徹底した疑惑解明を望む事態が続いている。
(2) 森友学園と近畿財務局との本件土地の譲渡価格交渉は、2016年3月に始まり、同年6月に合意に達して決着した。
その合意は、本件土地の時価評価額を9億5600万円とし、この評価額から地下に埋設されていたごみ撤去費用8億1900万円と事業長期化損失300万円の合計8億2200万円を控除するとの名目で、1億3400万円を対価とするもので、その合意にしたがって本件土地の譲渡が実行された。この合意スキーム(交渉経過の中では、「ストーリー」)を発案し提案しているのが被告発人池田にほかならない。
(3) なお、本件土地の地下3mまでには、生活ゴミの埋設があり、校舎建築工事の過程でゴミ撤去が必要となって、2016年3月16日に当時本件土地の賃貸人であった国から森友学園に対して、ゴミ撤去費用相当額の1億3176万円が『有益費』として支払われている。その結果、森友学園が実質的に負担したのはわずか224万円となった。つまり、キャッシュ・フローで言えば、近畿財務局の担当官に「限りなく『0円』で」と希望を申し出た森友学園の望む交渉結果となったのである。
2 新たな音声データの放映
(1) 以上の交渉経過については、国会で疑惑解明のための質疑の対象となったものの、すべての交渉記録が破棄されたとして、詳細が明らかになることはなかった。
しかし、最近この疑惑を裏付ける近畿財務局の担当官と森友学園籠池理事長(当時。以下、同じ)との譲渡対価金額をめぐる交渉の席での会話音声記録が複数公開に至っている。もとより、その取材源については告発人らの知るところではない。しかし、取材源如何にかかわらず、疑問の余地なく音声自体が証拠資料としての証明力を持つものとなっている。
(2) その典型が、関西テレビの番組「報道ランナー」における「徹底ツイセキ 森友学園問題」のシリーズである。
同シリーズは、本年8月1日「国有地8億円値引きの謎 音声データを独自入手」として放送以後、9月18日まで11回にわたっての放送となっている。
その9月18日放送分が、「【森友問題 徹底ツイセキSP】新たなゴミは本当にあったのか?「8億円値引き」本当のわけは」と題しての放送で、このなかで公開された音声データに、2016年3月下旬ころに録音されたものとして、本件土地の譲渡対価額についての森友学園籠池泰典理事長らと被告発人池田らのと交渉の席上、当該土地に埋設されたゴミ撤去費用を過大に評価しこれを控除する外形を装うことによって、極端に低廉で不適正な対価をもって譲渡しようという会話が録音されている。
近畿財務局側は、氏名不詳の職員が「3メートルまで掘っていますと。土地改良をやって、その下からゴミが出てきたと理解している。その下にあるゴミは国が知らなかった事実なので、そこはきっちりやる必要があるでしょうというストーリーはイメージしているんです」と発言し、被告発人池田が、「資料を調整する中で、どういう整理をするのがいいのかご協議させて頂けるなら、そういう方向でお話し合いさせてもらえたらありかたい」と発言してその不適正対価による譲渡の意思を表明している。
(3) また、同シリーズの本年8月1日「国有地8億円値引きの謎 音声データを独自入手」の番組によれば、被告発人池田は、やはり16年2月から3月にかけての森友学園籠池理事長らとの交渉の席で次のように発言している。
「できるだけ早く価格提示をさせていただいて…、ちょっとずつ土壌も処分しているけど、ある前提で全部、想定の撤去費を評価から控除する。で、金額を提示させていただくということなんです。ですので、そこそこの撤去費を見込んで、価格計上をさせてもらおうと思ったんですよ。だから、われわれの見込んでいる金額よりも、(撤去費が)少なくても、われわれは何も言わない」
「理事長がおっしゃられてる『0円に近い(譲渡対価希望金額)』というのが、どういうふうにお考えになられているのか、売り払い価格が0円ということなのかなとは思うんですけど、私ども以前から申し上げているのは、『有益費』の1億3000万円という数字を国費として払っているので、その分の金額ぐらいは少なくとも売り払い価格は出てくると、そこは何とかご理解いただきたい」
これに対して、籠池理事長が「(有益費の)1億3000万円がうんぬんというよりも、ぐーんと下げていかなあかんよ」と応じると、被告発人池田はさらにこう発言している。
「理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、私はできるだけ努力する作業を、いま、やっています。だけど1億3000万円を下回る金額にはなりません」
以上のとおり、被告発人池田が、架空ないしは過大なゴミ撤去費用を計上することによって、森友学園側の希望を容れた極端に低額な対価を以てする国有地の譲渡をしたことが明らかである。具体的には、国が本件土地賃貸借契約の貸主として、すでに森友学園に支払っている有益費1億3176万円を下回る価格設定はできないが、森友学園の希望する「実質0円」にできるだけ近づけるよう努力して、要望に添うという意思の表明にほかならない。
そして、現実に本件土地譲渡にあたって森友学園が実質的に負担する金額が「0円に近い金額」になるよう算定がなされたのである。
(4) また、本年8月3日放映のテレビ朝日「報道ステーション」において、「新たなメモ見つかる、森友土地値引き」と題した報道がなされ、2016年3月30日に森友学園籠池理事長夫妻と森友学園の弁護士、設計会社、施工会社の4社で打ち合わせをおこなった際の次の内容のメモの存在が明らかとなった。
「できる限り低い金額で買い取りたい→航空局も同意」
「航空局・財務局→彼らのストーリー」
「調査ではわからなかった内容で瑕疵を見つけていくことで価値を下げていきたい」
「9mの深さまで何か出てくるという報告を(するよう)、財務局から学園サイドに言われている」
このメモでは、既に同月30日時点で、同月11日に見つかったとされる新たなゴミの撤去に必要な費用分の減額に藉口して、森友学園が本件土地をなるべく安価で取得できるよう、近畿財務局が動いていたことが明らかとされている。
3 被告発人池田の背任罪成立について
国有財産法第9条1項は、「国の財産は、法律に基く場合を除く外、これを交換しその他支払手段として使用し、又は適正な対価なくしてこれを譲渡し若しくは貸し付けてはならない」とする。国有財産の譲渡は、適正な対価をもってしなければならない。換言すれば、当事者の交渉による任意の価格設定はあり得ない。このことが、確認しておくべき大原則である。
私有財産の売買においては、売買対象物の処分権限をもつ売り主がどのような思惑にもとづいて価格設定をしてもよい。価格交渉の妥結点がいかなるものであっても、なんの問題もない。しかし、国有財産の譲渡における対価は、自由な価格交渉によって決することを許されていない。国有財産の管理を任務とする公務員が、適正な対価を下回る価格での交渉をし譲渡をすれば、国に対する関係で、背信行為となり、損害を与えたことにもなって背任罪が成立する。
最近になって公開された交渉経過の録音記録によれば、被告発人池田は、森友学園籠池理事長の、可能な限り低廉な価格でという要求に応じたことが明らかで、適正な価格算定の意図がなく、客観的に著しく不適正な低額での譲渡を実行したものというほかはない。
4 被告発人佐川の証拠隠滅罪成立について
(1) 証拠隠滅罪の証拠とは
刑法104条証拠隠滅罪にいう「証拠」とは、刑事事件について、捜査機関および裁判体において、国家刑罰権発動の可否または量定を判断するに当たっての根拠と認められる一切の証拠方法をいうものである。犯罪の成否、態様、刑の軽重に関する資料のほか、訴訟手続に関わる資料も含まれる。
近畿財務局と森友学園との本件国有地の低額譲渡に関する交渉を記録した文書及び電子データは本件背任罪の成否および情状にかかわる直接の物的「証拠」に該当することが明白である。
(2) 証拠の隠滅行為とは
刑法104条証拠隠滅罪にいう「隠滅」とは、大審院判例以来「証拠の隠匿・滅失に限らず、『証拠の顕出を妨げ、または、その証拠としての価値を滅失・減少させる行為のすべて』をいうものとされている。また、本罪は抽象的危険犯として、証拠の隠滅によって刑事訴追の妨害を成功させるという結果の発生に至ることを必要としない。
(3) 被告発人佐川の証拠隠滅行為
本年4月3日衆議院決算行政監視委員会における被告発人佐川の政府参考人としての答弁は議事録によれば以下のとおりである。
「○佐川政府参考人 お答え申し上げます。
私ども財務省の行政文書管理規則上、行政文書につきましては、あらかじめ、保存期間あるいは保存期間満了後の措置について定めなければならないということになってございまして、保存期間満了後、例えば国立公文書館に移管しないというようなものについては廃棄するということになっておりますので、規則に基づいて事案終了後廃棄しているということでございます。」
「○佐川政府参考人 お答え申し上げます。
私ども、行政文書は、紙もパソコン上のデータも同様の取り扱いにしてございます。紙の方は、先ほど申しましたように、さまざまな不要になりました紙はそういうことで処理をしてございます。パソコン上のデータも、今ちょっと手元にございませんが、前に一度お答えしたことがございますが、短期間でそこは自動的に消去されて復元できないようなシステムになってございますので、そういう意味では、パソコン上にもそういうやりとりみたいなデータは残っていないということでございます。」
単に電子データを含む記録が不存在というにとどまらず、その電子データについては「短期間で自動的に消去され、復元できないシステムになっている」という復元不能にまで言及する点で、積極的な証拠方法利用が絶対不能との答弁である。
(4) しかし、同年4月7日の衆議院内閣委員会において、中尾陸理財局次長(当時)は「自動消去機能というのは基本的にございません」、「消去は職員がパソコンを操作して行う」と被告発人佐川の先の答弁を訂正している。
また、本年9月22日、麻生太郎財務大臣は、関係機関による調査が行われているのを受けて、当該の電子データの廃棄・消去を延期していると発言、データの復元がなお可能な状況にあることを認めている。
以上のことから、「交渉記録の電子データも消去して、復元できなくなっている」という被告発人佐川の国会答弁が虚偽であることは明らかである。
同人は、当時財務省理財局長として国会(委員会)の場において国有財産の管理や譲渡に関して責任を持って真実を説明すべき立場にあった。同人の発言は、議事録として記録・公表され、信用性の高いものとして扱われるものである。本件土地譲渡に関する一連の交渉経過に関する記録の存否についても、行政当局の代表として、社会的に真実と受けとめられることになる。
そのような立場にある者が、虚偽の国会答弁をし、虚偽内容の議事録を作成せしめたのである。被告発者佐川による「証拠不存在」「復元不能」という虚偽の国会答弁は、その立場に照らして、被告発人池田の犯罪事実について、復元可能電子データ交渉記録という重要な刑事被疑事件の証拠を闇に葬り、その顕出を妨げる行為として証拠隠滅行為に当たると言わざるを得ない。
また、「そういう価格につきまして、こちらから価格を提示したことも、向こうからいくらで買いたいと希望があったこともございません」との明らかな虚偽答弁も、積極的に被告発人池田の犯罪事実を隠蔽する意図を露わにする重要な虚偽の発言というにとどまらず、証拠方法の「復元不能」という発言と一体となって証拠の顕出を妨げる証拠隠滅の一部を構成する行為というべきである。
(5) 告発人の認識
被告発人佐川が「森友学園との国有地の売買交渉記録は昨年6月に売買契約が締結されたあと短時間で廃棄され、財務省は交渉記録の電子データも消去して、復元できなくなっている」と答弁したその時点では、関係者以外誰も消去されたという電子データの内容を知ることはできず、これが疑惑解明の妨害行為ではあっても、特定人の特定の犯罪についての証拠隠滅に当たるというまでの認識はなかった。
しかし、最近になって公開された国有地譲渡価格をめぐる交渉に関する録音記録によって、その経過の一部が明らかとなって、廃棄されたという交渉記録の電子データが犯罪(背任)の証拠であることが初めて明確となった。
なお、被告発人佐川は、国会答弁において「そういう価格につきまして、こちらから価格を提示したことも、向こうからいくらで買いたいと希望があったこともございません」と明言している。しかし、今や明らかになったことは、森友学園側から「0円に近づけて」という価格の希望があり、被告発人池田が積極的にその希望に添った形での交渉に応じて最終妥結に至っていることである。この背任の経過に関する記録顕出の妨害も、被告発人佐川の証拠隠滅行為となるものである。
終わりに
以上の被告発人両名に対する本件告発は、森友学園事件疑惑の全容解明を期待する国民世論を代表しておこなうものである。御庁検察官は、権力に屈しない毅然たる姿勢をもって、本告発にかかる事案について厳正な捜査を遂げ、さらに権力中枢の関与についてまで、国民が納得できるよう捜査が及ぶことを望むものである。
以上
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2017.10.16より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=9335
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔eye4218:171017〕
「ちきゅう座」に掲載された記事を転載される場合は、「ちきゅう座」からの転載であること、および著者名を必ず明記して下さい。