イラク政府とクルド自治区政府が全面停戦―クルド側は「独立投票結果の凍結」を表明
- 2017年 10月 27日
- 評論・紹介・意見
- クルド人坂井定雄
内戦状態になっていたイラク政府とクルド自治区(地域)政府は25日未明、双方が公式声明で停戦を呼びかけ、停戦となった。9月25日に自治区政府が、自治区全域と実効支配していたキルクーク、海外在住のクルド人による、独立の可否を問う住民投票を実施し、92.7%の賛成で可決。それに対して政府側は10月15日深夜から、政府軍とシーア派民兵軍団を動員してキルクークに攻撃を開始。クルド側はほとんど抵抗せずに強力な武装勢力ペシュメルガがクルド自治区に向け撤収し始めたが、政府軍は自治区にまで追撃する構えを見せていた。
イラク政府声明は「これ以上の戦闘を停止することを提案する」とし「戦闘の継続は、どちらの側にも勝利をもたらさず、この国を分裂と混乱に陥れるだけだ」と明記。
クルド自治区政府は声明で「イラク・クルディスタンで実施された独立投票の結果を凍結する」と表明するとともに、軍事行動の即時停止および「イラク政府とクルド自治政府による、イラク憲法に基づく交渉を即時開催する用意がある」と提案した。
これで、クルド独立投票がもたらした、イラク内戦の危機はひとまず避けられたといえよう。政府側は、2014年いらいクルド自治政府が支配していた世界的な油田地帯キルクークを取り戻し、クルド側は独立宣言には至らないまでも、史上はじめての独立投票で、大多数の住民の支持を得た歴史的記録を残した。ただし、アバディ・イラク首相は、憲法によりイラク議会だけが独立の可否を決定できるとして、「クルド人の投票は過去のものになった」と言明しており、双方の交渉が始まっても、その位置づけをどうするか合意は難しそうだ。(了)
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