衆議院選挙分析 : 圧勝のからくり・ビッグデータから
- 2017年 11月 14日
- 時代をみる
- 鈴木顕介
今頃ですが、自民党圧勝となった先の選挙分析をNHKの「クローズアップ現在」が、選挙翌日10月23日に放映したビッグデータを使って試みてみました。番組を見逃した方もおられるでしょうから。
安倍首相の選挙期間中のすべての演説の分析です。総数33万語以上、その中で最も多く使われた言葉が抽出されています。
1位が「日本」で208回、2位が「北朝鮮」で201回です。「北朝鮮」は、どの演説でも使われ、平均すると1回の演説で3回以上使われたことになります。いかに彼がここを国民に注力したかったが分かります。同時に「北朝鮮」と関連して「ミサイル」「圧力」「脅威」が使われています。
北朝鮮のミサイルが、日本にとっていかに脅威であり、国家が危機に直面しているかを、国民に刷り込ませたい意図が読み取れます。
皮肉なことに北朝鮮は9月15日を最後にミサイルは1発も発射していません。この時、前回の投稿(10月21日)でも指摘しましたが、間違ってもミサイルが落ちない長野県までJアラートを出して危機感をあおりました。
これをどう受け止めて投票したかを、全国4000か所の投票所での出口調査の回答者27万3000人で分析しています。
安倍首相の政権運営を評価するか、しないかの設問では、
評価する56%、評価しない44%。
評価した人に政策の何を重視して投票したかを尋ねると、
消費税30%、北朝鮮22%、憲法改正20%、原発6%。
北朝鮮政策を重視した人の比例代表の投票政党は、
自民党63%、公明党11%。
北朝鮮問題への危機感が与党支持、中でも自民党支持に影響を与えたとみることが出来ます。
一方、選挙公約で初めて憲法改正を取り上げながら、憲法改正については、ビッグデータ分析結果では安倍首相はほとんど触れなかったとしています。消費税については、分析データを示していないところからみると、有意の結果ではなかったと推測されます。
それにもかかわらず、消費税がトップ30%、憲法改正20%を占めています。これは安倍首相のアピールがなくても、選挙公約が浸透し、投票行動につながったと言えるでしょう。自民党支持の固定票の強さと言えます。
安倍演説での北朝鮮問題の強調が投票行動につながったとビッグデータが示している部分は、浮動票獲得に効果があったと読めます。不安感→強い指導者への期待という構図で、安倍戦術が効果を上げたと言えます。
今度の衆議院選挙結果を確定得票率にNHKビッグデータ分析も加えて、分析してみますと―
第一に辛うじて過半数を超えたものの投票率の低さ53.6%
を挙げねばなりません。
台風による悪天候の影響もあったでしょう。争点なき選挙、今なら勝てると北朝鮮問題を前面に打ち出し、野党勢力の体制が整はないうちにという党略が、民主党の解体、希望の党の自滅を引き起こさせました。その点では安倍戦略が図に当たったと結論できます。選挙後の組閣で全閣僚留任が語るに落ちています。
同時に投票率の低さ、悪天候でも崩れなかった自民支持の基盤、問題意識の強さは、今度の憲法改正への対応で重要なポイントです。
関心の低い無党派、無関心層にどう引き付けるかの問題が、直面する重要な課題です。
次の問題は、比例区での政党別得票数を投票者の支持率としてみた場合の獲得議席と支持率の乖離です。( )内議席数%
自民党33.3%(284・64.1%)、公明党12.5%(29・6.5%)
立憲民主党19.9%(55・12.4%)、希望の党17.4%(50・11.3%)、共産党7.9%(12・2.7%)、日本維新の会6.1%(11・2.5%)、社会民主党1.7%(2・0.4%)、日本のこころ0.2%(0)
これは小選挙区制が制度的に直面する問題であり、選挙制度の見直しも含めた、対応が求められるものです。同時に早急な改善が見込めない問題でもあります。
出口調査のビッグデータ解析での政権運営の評価と、与党獲得議席の隔たりも問題として指摘しておかねばなりません。
( )内%与野党獲得議席比率%、維新は野党として
安倍首相の政権運営を評価する 56%(70.6%)
政権運営を評価しない 44%(29.3%)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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