本郷界隈、ほんのひとめぐり
- 2017年 11月 25日
- カルチャー
- 内野 光子
初めての「文京ふるさと歴史館」~窪田空穂展へ
「文京ふるさと歴史館」というところで、「窪田空穂展」を開催していることを知って、本郷に長らくお住いの友人と訪ねた。展示会は、正確には「季節のうた 歌人窪田空穂 生誕140年・沒50年」というものだった。受付では、65歳以上は無料ですと言われ、私たちは、なんとなく複雑な気持ちで地下の特別展を回りはじめた。
空穂は、若いときは、この文京区内を転々としていたので、ゆかりの地も多いという。1921年から、雑司ヶ谷、現在の目白台に居を構え、亡くなる1967年まで50年近く暮らしていたことになる。展示は、こじんまりとはしていたが、わかりやすいものだった。年譜や生い立ちに始まり、中央には「春夏秋冬のうた」が歌集や短冊などでまとめられていた。また、文京の季節を詠んだ百首、地名を詠み込んだり、地名を小題に付した作品が壁いっぱいに展示されていた。
私も、個人的なことをいえば、文京区竹早町にあった中学校に池袋から都電の17番で通学している。高校・大学は地下鉄丸ノ内線茗荷谷下車で7年間通ったことになる。さらに、浪人中の一年間は、山手線大塚駅前の予備校に通い、初めての職場が、目白の学習院大学で、2年間通勤したのだから、文京区とは縁があり、親しみ深い。さらに、音羽通りの講談社裏にあった、閉鎖直前の東大病院分院に入院していたこともあった。その折、なんと、分院近くの町内会掲示板で窪田章一郎の訃報を知ったのだった。空穂・章一郎終焉の家近くに居合わせたことになる。そんな思い出の数々とともに、地名を詠んだ作品を興味深く読み進めるのだった。
・咲き照れる桜仰ぎてわが童その手さし伸べ花に触りにけり(植物園)
『土を眺めて』
・目白台わか葉にけぶる空揺すり大きとどろき東より来る
(敵機の襲来を見る)『明闇』
・護国寺の松の木下ゆ秋日照る音羽通りの真直ぐにみゆる(護国寺境内)
『朴の葉』
・豊坂の上より見るや北屋根に残りて白く打ち続く雪(薄雪)
『さざれ水』
「豊坂」は、空穂が自宅から早稲田大学に通う道であったそうだ。文京区内には名のついた坂が100以上あるとのこと、縁のある私とていくつの坂を越えただろうか。
本郷三丁目の交差点から春日通りをわずかに進んだ、真砂坂上バス停を右に入る。向かいが真砂中央図書館になる
囲ったところが歴史館です
私は今年、空穂没後50年という認識もないまま、戦前の『新女苑』という女性雑誌の歌壇選者をしていたころの空穂について調べていた。その過程で、戦後に出版された歌集に戦時下に発表した短歌がそっくり削除されていたことを知った。その辺の事情も知りたいのだが、今回の特別展では、もちろん触れてはいなかった。生家のあった松本市には窪田空穂記念館があって、様々なイベントが開催されているが、私はまだ出かけてはいない。
*空穂について、*以下のブログに記事に書いていますので、ご参考までに。
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/06/post-8c97.html
戦時下の女性雑誌における「短歌欄」と歌人たち―『新女苑』を中心に
2017年6月19日 (月)
黄葉の東大キャンパス
赤門を入ってすぐ
工学部前の大イチョウ
東大の銀杏の黄葉が素晴らしいという友人の勧めで、足を伸ばした。友人には、格好の散歩コースのようで、丁寧に案内していただく。キャンパスは、外来者も多く、散歩のご夫婦や家族連れ、カメラ撮影に余念のない人、日曜画家かカルチャーの絵画教室の人たちか、だれもが輝く銀杏の黄葉に圧倒されているようだった。久しぶりの三四郎池も、都心とは思えない静かな佇まいで、私にとっても、秋を満喫した半日となった。
初出:「内野光子のブログ」2017.11.24より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2017/06/post-4431.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔culture0557:171125]
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