司法界に及ぶ「アベノ人事」の実態解説
- 2018年 1月 17日
- 評論・紹介・意見
- 弁護士澤藤統一郎
今年(2018年)の「第2期・友愛政治塾」(西川伸一塾長)については、1月5日付の当ブログでご紹介しました。
歳のはじめに「友愛政治塾」(西川伸一塾長)ご案内
http://article9.jp/wordpress/?p=9715
西川伸一塾長の第1回講義が近づいたので、あらためてご案内申しあげます。
時:1月21日(日)
所:文京シビックセンター 区民会議室4階A
(看板は「日本針路研究会」とのこと)
①同日 午後1時~3時50分
講 師 西川伸一(明治大学教授)
友愛政治塾の2018年第1回講義
テーマ 最近の裁判官人事の傾向
参加費:1000円
②引き続き午後4時~6時、同じ会場で新年会
参加費:2000円 「軽食あり。歓談したいと思います」
こちらは、「フォーラム社会主義について」の新年会ですが、
「会員でなくてもどなたでも参加できます」とのことです。
「友愛政治塾」と「フォーラム社会主義について」との異同や関係は私にはよく分かりません。分からないながらも、去年も楽しく歓談した記憶があります。取って食われるようなことは決してありません。
なお、受講には下記に事前申込が必要だそうです。
住所:〒113-0033 東京都文京区本郷2-6-11-301
ロゴスの会 TEL:03-5840-8525
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さて、西川伸一塾長の講義は、「最近の裁判官人事の傾向」というものです。西川さんご自身の惹句は次のようなもの。
寺田逸郎最高裁長官は2018年1月8日に定年退官し、大谷直人新長官の下、2018年の最高裁はスタートする。最高裁長官は内閣が指名し天皇が任命する。最高裁判事は内閣が任命する。ただ、内閣が専権的に最高裁裁判官を決めてきたわけではない。最高裁の意向をきいてそれを尊重することで司法の独立が担保されてきた。しかし、安倍政権の長期化に伴いこの慣例が崩されつつある。「アベノ人事」は司法にまで及んでいる。報告ではそれを明らかにしたい。
西川講義のキーワードは、「アベノ人事」。省略なしでは、「安倍晋三のオトモダチに対するえこひいき人事」。もう少し、分かり易く言葉を補えば、「安倍晋三のオトモダチと思われる人物、あるいは右翼安倍晋三の思想に親近感をもっていると考えられる人物を特別に優遇して、最高裁判事に推薦することによって、安倍晋三が喜んでくれるであろうと忖度し何らかの見返りあることを期待してのえこひいき人事」である。司法にまで及んでいるという「アベノ人事」の実態解説とあれば興味津々。受講したくもなろうというもの。
アベノ人事として有名なのは、木澤克之氏だ。私はこの件も、最初はリテラで知った。
「安倍首相の親友が経営する“第二の森友”加計学園の関係者を最高裁判事に任命! 司法までオトモダチで支配」という記事。
http://lite-ra.com/2017/03/post-2997.html
このタイトルにある「加計学園の関係者」が木澤克之。「木澤氏は加計理事長と立教大学の同窓で、卒業年も同じ…」だそうだ。安倍のオトモダチでなくても、オトモダチのオトモダチまで、えこひいきが行き届いているというわけだ。
この木澤克之。2018年総選挙の際の「国民審査」公報の経歴紹介欄で、「加計学園監事」という経歴を削除したことが、また話題を呼んだ。
それ以外の露骨な「アベノ人事」については知らない。誰が見ても研究者の山口厚元東大教授が、強引に弁護士枠で最高裁裁判官に推薦されたのも「アベノ人事」なのだろうか。
本年1月9日付で第19代最高裁長官に就任した大谷直人氏と、東京高裁長官から最高裁判事に就いた深山卓也氏はどうなのだろうか。大谷の経歴は、裁判官であるよりは司法行政官というべきだろう。深山も、裁判官出身者というよりは、訟務検事の経歴が重い。
そして「最高裁判事で初の旧姓使用者」として話題の宮崎裕子氏。史上6人目の女性最高裁判事。これまで仕事では旧姓の「宮崎」を使っており、就任後も旧姓を名乗る意向。最高裁は1月8日、人事を戸籍名で発表し、旧姓を併記したが、これに対して宮崎は所属する法律事務所を通じて旧姓での報道を強く求めたという。「旧姓を使うことは当然だと思っています」とメディアに話しているそうだ。
最高裁は昨年(18年)6月に裁判文書で旧姓使用を認めることを発表。全国の裁判官約3800人のうち、実際に運用が始まる9月1日までに18人が旧姓使用を申請したという。その意味では、特に宮崎が先例を作ったというわけではないが、「最高裁判事としては初の」ケースとなる。最高裁判事15人のうち女性は3人だが、「法曹人口に占める女性の割合はもっと多いはず。最高裁の女性判事の割合も上げていく方がいい」と話しているという。「夫婦同姓の強制を合憲」とする判例の変更に一歩近づくことにもなろう。
とはいえ、彼女は典型的な、渉外・企業法務担当弁護士。「世界銀行法務部に勤務後、セブン銀行社外取締役などを歴任」という経歴。決して人権課題に取り組んできた人ではない。日本弁護士連合会が最高裁に推薦した9人のうちの1人だったという。さて、これも「アベノ人事」だろうか。西川さんの解説に耳を傾けたい。
そして、出席者全員での質疑討論を行います。昏迷の時代に、揺るぎない自分自身の考え方、ものの見方の基礎を作るために…。多くのみなさまのご参加をお待ちしています。
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もう一つの集会ご案内
村岡到著『「創共協定」とは何だったのか』出版記念集会
日時:2月4日(日)午後1時
場所:文京区民センター 3C(後楽園駅)
資料代 : 700円
報告 北島義信さん(真宗高田派正泉寺前住職)
「社会主義と宗教との関係」
司会 佐藤和之さん(高校教員)
主催 ロゴスの会 協賛 社会評論社
長いあいだ社会主義と宗教とは切り離されて理解されてきた。しかし、歴史をたどると実は深い関係があったようである。近年、下斗米伸夫氏の研究によってロシア革命においては「古義式派」というキリスト教の一派が大きな位置と役割を担っていたことが明らかにされている。
日本でも明治時代にはキリスト者が初期の社会主義運動と深く関わっていた。
北島義信氏は、浄土真宗高田派の僧侶であり、南アフリカの反アパルトヘイトの闘いでも宗教者と社会主義者が協力したことを明らかにし、近年は韓国の宗教者と交流を深めている。
「人間性社会主義」を長く唱えていた創価学会とは何かも探る必要がある。
北島義信著書:『親鸞復興』同時代社、『坊主の品格』本の泉社
論文:「宗教と平和──霊性を中心に」『フラタニティ』第8号=2017年11月
(参加者には村岡到著『「創共協定」とは何だったのか』を特価1500円で頒布します)
村岡 到SQ選書14 四六判 192頁 1700円+税
「創共協定」とは何だったのか──社会主義と宗教との共振
1964年に創成された公明党は「人間性社会主義」を長く唱えていた。創設者の池田大作は、共産党のトップ宮本顕治との対談で「宗教とマルキシズムの共存は文明的課題だ」とまで語った。彼が主導して1974年に結ばれた「創共協定」とは何だったのか。マルクスの「宗教はアヘンだ」という非難とそれを援用したレーニンによって宗教は排斥されてきたが、〈社会主義と宗教との共振〉こそが求められている。
「創共協定」の歴史的意義とその顛末
社会主義と宗教との共振
愛と社会主義
戦前における宗教者の闘い
親鸞を通して分かること
社会評論社 03-3814-3861
(2018年1月16日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.1.16より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=9768
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion7276:180117〕
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