受信契約と受信料を強制できる放送か?~12.6最高裁判決を読んで~
- 2018年 1月 25日
- 時代をみる
- 醍醐聡
2018年1月23日
受信契約の締約を強制する放送法を合憲とした昨年12月6日の最高裁大法廷の判決とそこから派生すると私が考えた一律定額の受信料制度の不条理について、『全国商工新聞』(2018年1月22日刊)に寄稿した。まだまだ肉付けしたかったことが山積しているが、ひとまず自分の言いたいことは書き込んだつもりである。
このたび、編集部から転載の許可を得たので、このブログに載せることにした。小見出しは転載に当たって筆者が付けたものである。
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NHK受信契約の合憲判決
公共放送に重責課す内容
一律定額など不条理見直せ
醍醐 聰
強制の前提にあるNHKの重い責務
最高裁大法廷は昨年12月6日、現行放送法が受信契約の締結を義務付けているのを合憲とする判決を言い渡した。しかし、この判決は大方の報道とは違って、一概にNHKの全面勝訴とは言えない。むしろ、NHKに重い責務を課したといえる。その理由は判決が、受信契約の締結強制を合憲とする前提として、NHKには公共放送としての重い責務があることを改めて明示したことにある。
というのも、受信契約の締結を義務付けた放送法第64条第1項を合憲とみなす前提として、NHKの財政基盤、すなわち、「受信設備設置者に受信料を負担させることにより確保する仕組みは、憲法21条の保障する表現の自由の下で国民の知る権利を実質的に充足すべく採用され、その目的にかなう合理的なものである」とみなしたからだ。
つまり、放送法による受信契約の締結強制も受信規約にもとづく受信料の支払い義務(後者は放送法で定められた法的義務でないことに注意が必要)も、NHKが国民の知る権利に応える放送をしていることが前提になるというのが最高裁判決の趣旨なのである。となれば、○○については「NHKの編集責任の下で総合的に判断しており、個々の視聴者の問いに応答する義務は負っていない」などというNHKの対応は許されないのである。
NHKは国民の知る権利に応えているか?
では、実態はどうか? NHKは視聴者の知る権利に応える、政府から自律した放送をしているのか? 一例だけ挙げておく。
核兵器の廃絶に取り組んできた “ICAN”がノーベル平和賞を授与され、事務局長と広島出身の被爆者サーロー節子さんが授賞式で、核抑止力に頼る世界の大国に向かって「核兵器は必要悪ではなく絶対悪だ」と訴えた昨年12月12日夜、NHKは7時のニュースでも9時のニュースでも2人のスピーチを全く伝えなかった。その代わりに、その日放送された「クローズアップ現代+」では河野外務大臣へのインタビューを長々と放送し、日本政府が説く核保有国と非保有国の「橋渡し役」の広報の場を提供した。核兵器禁止条約へ参加を拒み、日立の原発輸出に1兆5000億円の債務保証をする日本政府が「橋渡し」とはお笑い草であるが、番組ではこのまやかしを一切質さなかった。
一律定額受信料の不条理
今日、テレビを買ったからと言って、かなりの国民はNHKだけを視ているわけでなく、民放やネットも情報源として利用している。にもかかわらず、今の受信料制度では、こうした視聴の実態とは関係なく月極め定額の受信料が徴収される仕組みになっている。受信契約を強制するとなれば、このような仕組の不条理が浮き彫りになる。
なぜなら、NHK以上に必需的な水道、電気、ガスと言った公共サービスの料金も基本料と従量料からなる二部料金制になっている。しかも、基本料部分さえ、口径別(水道)、契約電流別(電気)などで従量制が加味されている。これとの対比で、NHKの受信料はどれだけ視たかにかかわりなく、なぜ定額なのか? なぜ従量部分がないのか?
問題は「お金」の話しだけではない。一律定額制では受信契約を締結させ、口座引き落としの支払いを採用すれば、NHKの放送内容に視聴者がどのような疑問、不満を持っても、NHKはそれに応答しなくても、受信料は安定的にNHKに入ってくる。これではNHKは視聴者の声に耳を傾ける意識が希薄にならざるを得ない。
私は今回の最高裁判決を機に、受信料の一部に従量制を導入し、NHKの放送内容に対する視聴者の満足度が受信料の収納率に否応なしに反映する仕組みに改めることを提案したい。
(『全国商工新聞』2018年1月22日、からの転載)
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初出:醍醐聡のブログから許可を得て転載
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4286:180125〕
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