まずは事実を共有して――相次ぐ米軍機事故
- 2018年 2月 2日
- 評論・紹介・意見
- 宮里政充沖縄米軍
またしても米軍機不時着
今年に入って1月6日にうるま市伊計島にUHIヘリが、8日には読谷村の廃棄処分場にAHIZ攻撃ヘリが不時着陸した。沖縄県議会の議員団は22日に在沖縄海兵隊政務外交部長のダリン・クラーク大佐に相次ぐ米軍機の事故などにたいして抗議。その時、大佐は「事故の数は減っているし、車だって故障はする。未然にチェックするのは難しい」などと述べていた。また、宜野湾市議会では23日の午前、抗議決議と意見書を全会一致で可決し、第3海兵遠征軍司令官と駐日米国大使に抗議決議文を、安倍首相、防衛省、沖縄防衛局長に意見書を送った。
まさにその日の午後8時ごろ、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)所属のAHIZ攻撃ヘリコプター1機が渡名喜島(渡名喜村)の急患搬送用ヘリポートに不時着したのである。新聞報道によれば、油圧系統の異常を知らせる警告灯が点灯し、着陸したものらしい。乗員2人にけがはないという。県には同日午後9時10分すぎに防衛省沖縄防衛局から「8時ごろ渡名喜村にAHIZヘリが予防着陸した」との連絡があった。渡名喜島における米軍ヘリの不時着は1999年以降今回で8回目である。
翁長知事―「米軍全体がクレイジー」
沖縄県渡名喜村の村営ヘリポートに米軍普天間飛行場所属のAHIZ攻撃ヘリコプターが不時着陸したことを受けて、翁長雄志知事は24日、「まさしく、米軍全体がクレイジーだ」と憤った。翁長知事は、米軍機の事故やトラブルが相次いでいることに「米軍は管理、監督が全くできないようになっている。全く改善する兆しがない」と問題視。国の当事者能力のなさも批判した。その上で、「今の米軍のやり方はふに落ちない。どうにもならない感じなのでしっかりとやり方を考えてみたいと思う」と述べた(1.27沖縄タイムス+プラス ニュース)。
ネラー司令官―「不時着で良かった」
米海兵隊のネラー司令官は25日、ワシントンでのシンポジウムで、沖縄県で米軍ヘリコプターの不時着が相次いでいることを念頭に「海外で起きた不時着のニュースが流れているが、非常に率直に言って不時着で良かった」と述べた(1.26西日本新聞)。
ネラー氏は今後の対策として、部品不足を解消し、機体の整備体制を立て直して飛行可能な航空機数を増やし、飛行訓練の時間を増加させることでパイロットの技能向上を図り、即応体制の回復を目指すと説明し、訓練環境の改善に取り組む考えを示した。(中略)統合参謀本部のマッケンジー事務局長(中将)は同日、国防総省での記者会見で、渡名喜村での不時着について、「細心の注意を払うために取った行動だ」と述べ、「訓練が沖縄の人々の懸念を高めていたとしても、われわれが日米安全保障条約の義務を果たしていくならば、訓練を続ける必要がある」と訓練継続の必要性を強調した(1.28沖縄タイムス・プラス)。
小野寺防衛相―「あまりに多い」
小野寺五典防衛相は24日午前、防衛省内で記者団に対し、「(米軍ヘリの不時着が)繰り返されている。あまりに多い」と指摘したうえで「極めて遺憾」と述べた。不時着した機体と同型機のAHIZの飛行停止を米軍側に要請したことを明らかにした。防衛省は同日、状況などを把握するため、沖縄県警と防衛省の職員を陸上自衛隊のヘリで現地に派遣した。小野寺氏は「夜間に突然米軍ヘリが着陸し、住民は大変不安を持っていると思う」と述べた(1.24朝日新聞DIGITAL)。
RBC(琉球放送)ニュース(1.26 19:01)
渡名喜村議会では25日、事故に対する抗議決議を可決していて、26日、桃原村長と村議会の議員らが沖縄防衛局の中嶋局長に抗議しました。この中で村長らは普天間基地所属のすべての航空機の飛行と訓練を中止するよう求めました。「不時着したことにすごく不安を感じている中、その日の夕方にはフライトして、次の日にもフライトして、その辺が我々からすると理解ができないというか、まるで傷口に塩を塗り込まれたぐらいの、すごい、あらわしようのない気持ちですね」(渡名喜村・桃原優村長)。中嶋局長は「トラブルが続いていることは重く受け止めている。政府をあげて様々な取り組みを行っていく」と述べるにとどめました。
松本文明内閣府副大臣―「それで何人死んだんだ」-あっけない辞職
さて、米軍機によるトラブル(昨年の不時着・墜落炎上事故も含めて)について、25日の衆院本会議において共産党の志位委員長が代表質問をした際、「それで何人死んだんだ」とヤジった議員がいた。自民党の松本文明内閣府副大臣である。彼は26日夕方、安倍晋三首相と首相官邸で面会し、ヤジを飛ばした責任をとり、辞表を提出し、受理された。稲田元防衛大臣の度重なる重大な失言をかばい続けた安倍首相としてはあまりにもそっけなくアンバランスな対応である。
松本氏は首相との面会後、記者団に「不規則発言で、人が亡くならなければいいのかというような誤解を招いた。沖縄県民、国民の皆さんに迷惑をかけた」と謝罪した。首相からは「この国が大変な時期なので緊張感をもって対応してもらわないと困る」と注意されたという。名護市長選への影響を恐れた政権幹部は「背筋が凍った」。安倍晋三首相と菅官房長官は瞬時に更迭を決めたという(1.27朝日新聞DIGITAL)。
翁長知事は27日、名護市で記者団の質問に「あの一言でびっくりするようなものではない。沖縄担当の副大臣をされているときも、沖縄に対する認識は全くなかった」と強い不快感を示した(1.28沖縄タイムス)。
無事に不時着した。だから何?
軍用機が飛行続行困難という非常事態に陥った時に、墜落などの最悪事態を避けるためヘリポートあるいはそれ以外の場所へ緊急着陸するのは当然のことである。「不時着」と言おうが「予防着陸」と言おうが同じことだ。その際、飛行士は自分自身や地上にいる人に損害を与えないためのギリギリの努力と技術が要求される。今回の場合はたまたま死者もけが人も出なかった。それは不幸中の幸いであって、喜ぶべきことである。そして米軍関係者のコメントはそこでとどまっている。だから反省しないばかりか更に訓練を増加させようと考える。だが、「けが人も死人もなく無事に着陸したのだからいいじゃないか。何で大騒ぎするんだ」(インターネットはそういうコメントで満ち溢れている)という反応に笑顔でうなずくわけにはいかない。沖縄の人々は不時着や墜落事故が多発する状況を何とかしろ、と言っているのである。当然のことではないか。
と、ここまで書いて、我ながら恥ずかしくなる。「それで何人死んだんだ?」とヤジる人の思考経路には沖縄という島が70余年にわたって背負わされてきた軍事的な負担に対する想像力がまるで欠落している。翁長知事が不快感を示したのは当たり前のことである。松本氏のような人物が日本の政治をつかさどる中枢部に存在すること自体が恥ずかしい。しかも彼がかつて沖縄担当の副大臣であったという事実は語るもおぞましい。そういうネトウヨ顔負けの人物を内閣府の副大臣に任命したのは誰だ? 任命したにもかかわらず名護市長選に不利と見るや「瞬時に」クビを切った姑息な奴は誰だ?(2018.01.28)
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