16歳のパレスチナ少女に実刑投獄8か月 - イスラエル軍事法廷 -
- 2018年 3月 30日
- 評論・紹介・意見
- イスラエルパレスチナ坂井定雄
イスラエル支配下のヨルダン川西岸地区イ軍軍事法廷は先週、イスラエル軍兵士を押したり叩いたりした4つの罪状で、17歳のパレスチナ少女に投獄8か月(実刑)、プラス投獄8か月(5千シュケル=約1,440ドルで執行猶予)の決定を下した。彼女はヨルダン川西岸地区ナビ・サレハ村に住むアヘド・タミミさん。昨年12月15日、完全武装のイスラエル軍兵士が二人、自宅近くの道路や畑に入り、我が物顔に行動するのに対し、素手と身体で追い出そうとした。その姿を、母親のナリマンさんがスマホで撮影、フェイスブックに投稿、たちまちパレスチナはじめ世界に広がった。
その少し前から、トランプ米大統領によるエルサレムのイスラエル首都公認、米大使館のテルアビブからの移転宣言に抗議するパレスチナ住民の抗議デモが、連日盛り上がっていた。タミミさんは当日、家の近くでイ軍兵士たちがいとこのモハンマド(15歳)の頭をゴム弾で射撃し、重傷を負わせたため、抗議したのだと主張したが、軍事法廷は、タミミさんが他にもイスラエル軍兵士の行動を妨げたり、投石をしたり、住民を扇動したりした計12件の罪状を挙げた。そのままでは、タミミさんに重刑が宣告されると予測した弁護団が、軍事法廷の通例で軍側と司法取引し、4件だけで有罪とする減刑がまとまり、この裁定になったという。
パレスチナと各国では、タミミさんの逮捕後、無罪釈放を求める署名運動が広がり、175万人の署名がイスラエル政府に突き付けられていた。
イスラエルの占領支配に対するタミミさんの抵抗闘争が、世界に知られるようになったのは、6年前。自宅近くでイスラエル兵にこぶしを素手で振り上げ、抵抗した。その姿を母親が撮影し、ただちに映像を世界にひろげた。それから間もなく、タミミさんは西岸のパレスチナ住民の反イスラエル・デモに加わり、「パレスチナのジャンヌダルク」とか「シェリー・テンプル」(ハリウッドの人気子役)とも呼ばれるようになった。
67年戦争でイスラエルが占領したパレスチナの東エルサレム、ヨルダン川西岸地区、ガザについて、パレスチナとイスラエルは94年に双方が調印した暫定自治宣言で、イスラエルが順次ヨルダン川西岸とガザから撤退することで合意、パレスチナ自治政府が発足した。しかし、イスラエルは東エルサレムを事実上併合、ガザは返還したが、現在までにヨルダン川西岸地区では18%(A地区)しか返還せず、双方が治安を共同管理するB地区が21%、イスラエルが治安も行政も支配するC地区のままになっている。そのC地区でイスラエルはすべての条約、協定に違反して占領地での入植地建設を進め、38万人がすでに入植。パレスチナ人住民の抵抗闘争が続いている。タミミさんは、いわば抵抗闘争の象徴だ。
*写真は公共放送BBC電子版から転載
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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