安倍内閣の支持率はなぜ高いのか(11) ―知性なき坊やという批判は一面的である―
- 2018年 4月 18日
- 時代をみる
- 半澤健市安倍
《バカにして終わる批判は利敵行為》
安倍内閣の支持率は依然として高い。
正面から攻める役割を担うべき、情報量の豊かな筈の、国会議員やマスメディアの攻撃
は一向に突破力がない。そこで低水準の反発が始まる。
同憂の知己・友人と話しても、安倍のキャリア―すなわち学歴、留学体験、企業経験―
を取り上げて、個人的な能力のなさを嘲笑して終わる。字が読めない(「云々」を「でん
でん」と読んだ)、字が書けない(「成蹊」の「成」が書けない)、憲法の原理を知らない
(私は「立法府の長です」と言った)という話があり、安倍を教えた成蹊大学の加藤節
氏らによる低い評価(青木理による『AERA』記事など)の話題がある。
このように安倍の属性をバカにして終わる自己満足は政権を延命させているのではない
か。一面的に過ぎるのではないか。安倍内閣のファシズム化は彼個人の思いつきなどで
進んでいるのではない。
過去20年間に、日本経団連は主要な「総合ビジョン」を3回発表した。「総合ビジョン」とは、財界からみた「将来の日本はどうあるべきか」の見取り図である。
1996年の「日本創造プログラム2010」、2007年の「希望の国、日本」、2015年の「〈豊かで活力ある日本〉の再生」、がその三つである。
《10年前の「御手洗ビジョン」に書いてある》
07年の「希望の国、日本」は「御手洗ビジョン」とも呼ばれる。当時の経団連会長
御手洗冨士夫(キャノン会長)の名をとった。三つのうち、御手洗ビジョンだけが、日
米同盟、防衛政策、愛国心について、かつてない踏み込んだ記述を掲げた。以下は私な
りにその「踏み込んだ部分」を要約したものである。
安全保障政策に関する意見
■日米同盟の堅持、二国間や多国間の共同演習を含む安全保障対話の推進
■MD(ミサイル防衛)能力の向上
■自衛隊の国際協調活動を憲法上に明示する必要性
■安全保障会議を強化した日本版NSC(国家安全保障会議)の機能化
憲法改正に関する意見
■2010年代初頭までに憲法改正の実現を目指す。
■改正内容は、9条第1項の平和主義の基本理念は堅持しつつ、戦力不保持をうたった
同条第2項を見直し、憲法上、自衛隊の保持を明確化する。
■自衛隊による国際貢献の明示し国益・国際平和のため集団的自衛権行使を容認する。
愛国心に関する意見
■愛国心を持つ国民は、愛情と責任感と気概をもって、国を支え守る。
■悠久の歴史が織り成してきた美しい日本の文化と伝統を子どもたちに引き継ぎ、活力
と魅力にあふれた「希望の国」を実現することは可能でありわれわれの責務である。
《悪い奴はどこかにいるのだ》
以上が御手洗ビジョンの書いた「防衛と改憲と愛国心」の大要である。念のためにい
うと、これらの記事は、字数だけで見れば全体のごく一部に過ぎない。全体は、経済・
財政金融・社会保障・地方分権・国際関係などを述べていて―その基調はグローバリズ
ムの日本的実現である―注意深く読まねばならない。
読者はこれを何と読むか。
私は、安倍政権は「御手洗ビジョン」を忠実にかつ粛々と実現してきたと読んだ。
安倍政策の立案、構造、実現は「知性なき坊や」の独走などではない。
舞台裏に悪い奴がいるのであろう。軍産複合体・原子力村、グローバル資本主義者、無
責任体制の官僚機構。これらが内外にいる。安倍一強は、彼らのシナリオに従ってで踊
る人形である。これが私の推定だ。その当否は一つ一つ事実を露わにしていくしかない。
9条2項に続く「自衛隊」項目挿入は、2017年5月に、右翼集会でのテレビ画面に現れた
安倍発言に始まった。これを前提とするのが現在のメディア状況である。御手洗ビジョ
ンを考えたり書いた者たちは、昨今の改憲論議を「非知性的」だと思っているに違いな
い。(2018/01/26)
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