本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(188)
- 2018年 4月 20日
- 評論・紹介・意見
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ホーキング噴射と特異点
3月14日に「ホーキング博士」が逝去されたが、「博士の人生」を振り返ると、「人間の尊厳は、必ずしも肉体だけにあるのではなく、精神や知識にも存在する」という事実を、再認識させられたようにも感じている。また、「博士の業績」を振り返ると、「ホーキング噴射」と「特異点」の理論は、現在の「経済学」にも応用可能なようにも思われたが、具体的には、「ブラックホールは非常に強い重力を持ち、あらゆる物をのみ込むものの、周囲にのみ込む物がない状態では、逆にエネルギーを放出して蒸発する」という「仮説」のことである。
つまり、「過去数十年に発生したマネーの大膨張」が「ブラックホール」に相当し、「人間の欲望」を飲み込んだ状況のことであり、また、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」が「特異点」という「大膨張の限界」だった可能性のことである。そして、その後は、「エネルギーを放出して蒸発する過程」に入ったようにも感じているが、実際には、「世界各国は、どのような手段を使っても許される」というような認識のもとに、「非伝統的な金融政策」が、世界的に実施された状況のことである。
より具体的には、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させ、「国債の大量買い付け」が行われた状況のことだが、ご存知のとおりに、現在では、「出口戦略」が実施され始めるとともに、「日銀の債務超過」までもが危惧されている状況となっているのである。つまり、「金融システムのメルトダウン」が進展し、その結果として、「通貨価値の蒸発」が始まった段階のようにも感じているが、残念ながら、現在でも、この点が理解されず、依然として、多くの人々が「古典的な経済理論」にしがみついている状況とも言えるようである。
つまり、今後、「世界的な国債価格の暴落」が始まった時に、「先進各国が、紙幣の大増刷を始める可能性」が高まっている状況のことだが、今回の「トランプ大統領の関税問題」については、「虎の尾を踏んだ状況」とも言えるようである。具体的には、今回の事件をキッカケにして、「世界的な株価の下落」ではなく、「世界的な国債価格の下落」が発生する可能性が高まっているようにも思われるのである。
そして、このことが、私自身が受け取った「ホーキング博士からのメッセージ」だったようにも感じているが、この点については、今後の数か月間で、真偽の程が明らかになるものと考えている。つまり、「時間的な余裕」が無くなり、本格的な「大インフレ」が、世界的に始まる可能性のことである。(2018.3.25)
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虎の尾を踏んだトランプ大統領
「3月22日」に、「トランプ米大統領」は「中国が米国の知的財産権を侵害している」という理由のもとに「最大600億ドル(約6.3兆円)規模の中国製品に関税を課す」ことを目指す「大統領覚書」に署名したが、この点については、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「実体経済」と「マネー経済」を区別する必要性のことだが、今回の関税については、現在、「実体経済」に対する悪影響だけが議論され、より重要なポイントである「マネー経済が、今後、どのような展開を見せるのか?」が抜け落ちているようにも感じられるのである。
つまり、「1980年代」以降の「アメリカの実体経済」については、すでに、「国際的な競争力」が失われ、その結果として、保護貿易主義的な傾向が強まっていたのである。その結果として、「マネー経済」、特に、「デリバティブ」などの金融商品を、世界的に普及させることにより、「米国の競争力」が保たれてきたが、今回の「大統領署名」については、「今までの努力」を台無しにするとともに、「マネー経済においても、米国の競争力を失わせる可能性」が存在するようにも感じられるのである。
つまり、「実体経済」を守ろうとして、より巨大な規模の「マネー経済」を破裂させる可能性のことだが、実際には、「世界的な国債価格の暴落」を引き起こすことにより、「先進各国の財政問題」を表面化させる可能性のことである。別の言葉では、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」以降、「先進各国は、ありとあらゆる手段を使い、デリバティブ・バブルの崩壊を隠そうとしてきた状況」だったようだが、今回、「トランプ大統領」は、虎の尾を踏んだことにより、本格的な「大インフレ」を引き起こす可能性が高くなったようにも感じられるのである。
具体的には、今回の「株価の急落」により、世界中の人々に対して、「どの資産が、最も安全なのか?」を考えさせる効果があったようだが、実際には、「国債」や「預金」などの「政府の信用を基にした資産」か、それとも、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの「実物資産」か、という選択のことである。そして、この時に考えなければいけない点は、「民間の利益や税収」を基にして、「国債の発行」が可能になっている状況のことだが、現在では、「国債の方が、株式や貴金属よりも安全な資産である」という認識を持っている投資家が、数多く存在するようにも感じている。つまり、さまざまな点において、「本末転倒した状態」が発生しているようだが、今回の「大統領署名」については、この点を、広く認識させる効果が存在したものと考えている。(2018.3.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion7573:180420〕
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