2018.ドイツ逗留日記(1)
- 2018年 7月 2日
- 評論・紹介・意見
- ちきゅう座会員合澤 清
いつもフランクフルト空港とDB(ドイツ鉄道)に悩まされる
6月28日午前11時過ぎ、雨が多く、異常に蒸し暑い東京を離れ、空路フランクフルトへの旅に出立した。
飛行中はなかなか快適ではあったが、それでもほとんど眠れなかった。
羽田からフランクフルトまでは、ほとんど12時間ぐらいかかる。いつもは軽い読み物(小説の類)を用意して時間を過ごすのだが、今回は直前まで色々所用に追われたため、ドイツ滞在中に読みたいと思っている本を2~3冊持参しただけだった。それも固い本ばかりなので、とても機内での退屈しのぎには役立ちそうもない。
あまり興味を引かない機内サービスの動画を見ながらウトウト仮眠しつつ過ごすことにした。
飛行機は予定より15分ほど早くフランクフルト空港に到着。入国審査の女性係官が色々聞いてきたが、こちらは久しぶりに聞くドイツ語に全く対応できない。やけくそで、「ヘーゲルを勉強している。ゲッティンゲンに行くのだ」などと勝手なことを喋ったら、すぐに通してくれた。後に続いた連れ合いの方が相手のドイツ語が聴き分けられたようだ。
羽田で預けた荷物の受け取りにまた時間がかかった。どうも団体旅行客の荷物の方が先に出てくる仕組みになっているのかもしれない。
重い荷物を引きずりながら、空港地下のSバーン(電車)側のDB(ドイツ鉄道)事務所に行く。そこで持参した「ジャーマンレイルパス」(ドイツ旅行のための鉄道フリーパス)に使用許可印をもらうためだ。そしてここでも、いつものことだが長々と待たされる。
実は、ホームステイ先のドイツ人女性には、予定では4時20分にフランクフルト空港に到着するので、5時までに列車に乗り、1時間50分の車中旅で、少なくとも7時にはゲッティンゲンに着くだろうから、その時間に迎えに来てもらいたいと頼んでいた。
それが、「ジャーマンレイルパス」の承認を終わった段階で既に5時半を過ぎていて、仮にすぐに新幹線(ICE)に乗れたとしても、もう間に合わない。しかも、ゲッティンゲンに向かう次の新幹線の時刻は、何と6時44分だとのこと、到着は8時半過ぎの予定になっている。途中乗り継ぎを覚悟すれば、それよりかもう少し早めに到着できそうではあるが、重い荷物をその都度引きずるのはまっぴらごめんである。結局どこかで彼女に電話して、待ち合わせ時間を変更して頂く以外にないとの結論に達した。
われわれは日本国内では普段は携帯電話をもたない主義である。しかし、ドイツに来ている間は別で、一応ドイツ国内専用の携帯電話を所持している。だが、毎年、夏場しか来ないため、当然ながらバッテリーは干上がっていて、すぐには使用不能である。
そのため、公衆電話を探す羽目になったが、それが非常に難しい。日本と同じで、ドイツでもこのところ公衆電話の数が極めて少なくなっている。
早く相手に電話しなければと焦りながら、空港駅の中をうろうろし、二軒の店で尋ねてみたが、「この辺には無いよ」という虚しい答えしか返ってこなかった。
ひょっとして、駅のプラットフォームにはあるかもしれないと思い直し、連れ合いに荷物番をしてもらって、プラットフォームまで行ってみた。そしてやっとのことで電話を見つけ、彼女に連絡がついた。重圧から解放され、一安心!
6時44分の新幹線(10分遅れで到着)に乗る。幸いなことに車中は割にすいていたため、ゆったりと座っていくことができたが、この電車も大幅に遅れて、ゲッティンゲンには9時10分頃にやっと到着。待って頂いた彼女には全く恐縮千万であった。
毎年のことながら、DBの運行表は全く当てにならないのであるが、これでもヨーロッパでは「ピカイチ」の正確さを誇っているとか。信じられますか?
ゲッティンゲンもハーデクセンも涼しくてほっとした
眠くもあったが、とにかく「腹ペコ」である。駅の近くのイタリア・レストランに入る。彼女の家にはこの日、彼女の孫娘が二人来ていて、われわれの到着を待っていたそうであるが、ついに会えないままに(翌日から夏休みで、スペインへ行く予定のため)帰ったとのことである。申し訳ない。
この時期、マヨルカ島などのスペインの島にリゾートで出かけるドイツ人が非常に多いといわれている。
しかし、蒸し暑い日本から来たわれわれにとっては、ドイツはまさに天国のように感じられる。とにかく涼しいのである。空気が乾燥しているため、日陰に長くいれば寒くなるほどだ。もちろん、夜になり屋外で飲んでいると寒さに震えてくる。それでも屋外で飲むことを好むドイツ人は、まさに「北方系民族」なのであろう。
今回、フランクフルトの日中は蒸し暑かった。日本とあまり変わらないように思えるほどだ。それでも夕方になり、日が落ちる頃には急速に冷えて来て、外で飲んでいると寒くなるはずだ。
イタリア・レストランで、久しぶりに「クロムバッハ」というドイツビールを飲む。昔、エジプト人の友人が(宗教上)アルコールは全く飲まないくせに、ノン・アルコール(ドイツ語では、アルコール・フライという)ビールを飲みながら、「ドイツビールで美味いのはクロムバッハとベックスだ」などと知ったかぶって言っていたのを想い出す。
ピザを頼んだが、これがすごいボリュームで、直径30センチほどの大皿から外にはみ出しそうな位の大きさだ。生ビール500ミリリッターが3.8ユーロ、ピザは大体10ユーロ前後である。ビールの値段は、少し高めというところか。
この日はさすがにくたくたの状態で、家に着くなりバタンキューの有様だった。
小鳥の鳴き声で目覚める
とにかく静かである。窓を少し開けながら寝ているのだが、布団を蹴飛ばしていると、たちまち風邪をひきそうなほど寒くなる。朝は、小鳥の鳴き声があまりにうるさくて目が覚める。ドイツ語にはGeräuschという言葉があり、一般的な騒音という意味でもあるが、ドイツ人はよく、小鳥の鳴き声などのうるささをこの言葉で表現する。こんなことは東京ではよほど奥地へ行かないと経験できそうにない。
昨年の夏から始めたのが、早朝の散歩である。年を取ったせいで、このところ早起きの癖がついているのだが、あまりに早い時間の散歩は寒いため、6時半頃から歩きはじめ、途中スーパーマーケット(この辺は田舎のせいか7時には開いている)で買い物をして、8時には帰宅することにしている。
この近辺はうっそうとした森で囲まれている。散歩道の両側にはリンゴの木が何本も植わっていて、既に青い実を落としている。まだそれほど大きくはないが、8月末ごろになると、かなり大きくなり、時々もいで食べてみることもできる。
外は日差しが恋しくなるほどに寒い。これで本当に夏なのか、と訝しくなる。
ドイツの物価事情やその他気がついた事柄についてはまたあらためてご紹介したいと思う。まだこちらについて幾日も立っていないため、今は生活のテンポの確立もままならない。身の回りを片付け、日常生活に必要なものを買いそろえ、友人たちに連絡を取る。
来週からはもう少し生活のリズムも整ってくることだろう。こちらに居る間にやるべきこともスケジュール化しなければと思っている。
近くのスーパーで買って来て早速飲んだのが以下の写真のビール。
中央がチェコの有名な「ブドヴァイザー」、その右手がクロムバッハが最近売り出した黒ビール、左手は、かつてゲーテが愛飲したといわれる「ケストリッツァー」の黒ビール
もう一枚の写真は、サクランボで、これはこの家の女主人の菜園で採れたもの。すごく甘い。
(2018.7.1記)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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