本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(197)
- 2018年 7月 20日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
インフレが発生しなかった原因
6月13日に、「米国の利上げ」が実施され、「政策金利(FFレート)」が「1.75%から2%」に変更された。そして、今後も、更なる金利上昇が見込まれているが、一方で、「インフレ率」については、依然として、低い水準にとどまっており、現在、アメリカでは、この原因について、いろいろな議論が出始めている。つまり、「金利の上昇や景気の好転は、本来、インフレ率を上昇させる効果があるはずだ」という議論のことだが、実際には、「いまだに、国債価格が暴落せず、また、本格的な大インフレが発生していない状況」となっているのである。
別の言葉では、「過去の経験則」が通用しない状況となっており、そのために、いろいろな分析が行われているが、今回、興味深かった点は、「IOER(過剰準備預金への付利)」だった。具体的には、「2008年前後のGFC(グローバル金融危機)」以降、約10年間にわたり、「過剰準備預金」に金利が付いており、「このことが、インフレが発生しなかった要因ではないか?」という観測である。そして、この点については、おおむね、私の理解と一致しているが、問題は、やはり、「2001年」に行われた「準備預金」から「当座預金」への変更が指摘できる。
具体的には、この時から、「日銀」の「準備預金」が「当座預金」に名称変更されるとともに、「当座預金の増加が、金融緩和である」と報道され始めたのである。つまり、この前後から、世界的な「金融のコントロール」が顕著になり始めたものと考えているが、現在、「日銀のバランスシート」については、「全体の残高が約533兆円」、そして、「当座預金残高が約393兆円」というように、「国家のGDP」と比較して、前代未聞の規模にまで膨れ上がった状態となっている。
つまり、ほとんどの当座預金に、「0.1%の金利」が付与され、「中央銀行に資金が囲い込まれた状態」となっており、このことは、「実質上の金融引き締め」とも考えられるのである。別の言葉では、「不胎化」と言われる金融政策のことだが、実際には、「国債を買い付けた資金が、再び、日銀に吸い上げられた状況」となっており、このことが、「インフレが発生しない、最も大きな要因」と想定されているのである。
しかし、現在では、「米国の利上げ」により「過剰準備預金への付利」が減少し、また、「預金」に対して「金利」が付き始めており、「資金が、民間市場に流れ始めた状況」となっている。そして、このことが、今後、インフレを加速させるものと考えている。(2018.6.24)
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命懸けの飛躍
現在、「メルカリの上場」や「キャッシュレス社会の到来」などが、マスコミの話題となっているが、少しだけ過去を振り返ると、「2017年」が「ビットコイン」、そして、「2016年」が「マイナス金利」の絶頂期だったことが見て取れる。つまり、私の想定する「金融逆ピラミッド」において、着実に、「金融のメルトダウン」が進展しているものと考えているが、ほとんどの人々は、過去を振り返ることを忘れ去り、単に、目先の変化だけに捉われているようにも感じられるのである。
別の言葉では、「現実」を直視することに対して、一種の「恐怖心」が存在するようにも思われるが、現在の「メルカリ」のように、「商品が、短期間で、お金に替わる」という状況は、人類史上、ほとんど存在しなかった異常な出来事である。つまり、「お金の性質」からは、昨年の「ビットコイン」よりも、よりバブル的な状況となっているのだが、この点を指摘する人は、ほとんど皆無の状態となっている。
かつては、「命懸けの飛躍」という言葉が存在し、「作った商品が販売される」、すなわち、「商品が、お金に替わる」という状況が、実は、「奇跡的な出来事だ」と理解される時代が存在した。具体的には、「19世紀」では、「ヨーロッパ」を始めとして、世界全体が、このような状況だったが、この理由としては、「通貨の残高」が少なく、また、「人々の、通貨に対する信用が、ほとんど存在しなかった点」が指摘できるようだ。
つまり、現在とは違い、「中央銀行」が存在せず、また、「金貨」や「銀貨」などが、通貨として使われていた時代だったからだが、その後の「約100年間」については、人類史上、最も「通貨の量」が増え、また、「価値」が上昇した期間でもあった。別の言葉では、「単なる数字」が「通貨」となり、「世界のコンピューター・ネットワークを駆け巡る」というように、歴史的にも初めての事態が発生しているが、問題は、現在のバブルが弾けた時である。
具体的には、「コンピューターマネー」という「仮想現実の世界」から、「紙幣」という「現実世界」へと、「人々の信頼する通貨」が移行し始める可能性だが、この点については、昨年の「ビットコイン・バブル」を思い出す必要性があるものと考えている。別の言葉では、過去数年間が、人類史上、極めて異例な「通貨の堕落」、あるいは、「金融のメルトダウン」が、世界的に進展していながらも、「この点に気付く人が、ほとんど存在しない状況」でもあったようだ。(2018.6.24)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion7846:180720〕
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