青山森人の東チモールだより…「政府計画」の審議が始まる
- 2018年 7月 28日
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- 青山森人
青山森人の東チモールだより 第374号(2018年7月27日)
「政府計画」の審議が始まる
シャナナ、閣僚名簿から身を引く
公金着服と公文書偽造、管理行政の怠慢、権力濫用の容疑で前の公共事業・交通・通信大臣であったガスタン=ソウザ氏らが被告となっている裁判で、7月24日、検察は、ガスタン=ソウザ被告に3年の禁錮刑、執行猶予2年6カ月を、神父であるマルチーニョ=グズマン被告へは1年の禁錮刑、1年6カ月の執行猶予をそれぞれ求刑しました。またソウザ被告の二人の息子へは、2年の禁錮刑、2年6カ月の執行猶予を、その他の被告には公文書偽造について3年の禁錮刑、2年6カ月の執行猶予を求刑しました。判決は9月17日に下される予定です。
この裁判を一貫して批判してきた与党の三党連合勢力AMP(進歩改革連盟)代表のシャナナ=グズマンCNRT(東チモール再建国民会議)党首は当時の首相としてさぞ面白くないことでしょう(マルチーニョ=グズマン神父とは同じグズマンでも血縁関係にはない)。
7月25日、第8次立憲政府がすでに国会に提出した「政府計画」の審議が始まり、新政権としての“仕事”が本格的に始まりました。しかしながらこの新政権の閣僚は未だ全員出揃ってはいないのです。フランシスコ=グテレス=“ル=オロ”大統領(以下、ルオロ大統領)が、汚職事件にかかわっている疑いのあるCNRTの閣僚候補者にかんして新政府に人選の再考を求めており、これはCNRTへの攻撃であると抗議するシャナナ=グズマン氏は自身の閣僚就任を拒み抗議を続けているからです。
7月26日、国会審議に熱が入る一方で、シャナナ=グズマンAMP代表は閣僚候補名簿から辞退するというニュースが流れました。首相顧問大臣に加え、ガスタン=ソウザ氏が就任するはずだった計画・戦略投資相も引き受けようとしていましたが、辞めてしまいました。その意志は数日前から決まっていたようです。インドネシアとの国境画定交渉に専念するというのが名目上の理由ですが、明らかにルオロ大統領への抗議の表明です。タウル=マタン=ルアク首相は、ルオロ大統領に問題とされている閣僚について候補者を変更することで事態を収めようとしています。
『東チモールの声』紙(2018年7月25日)より
左の記事;「ガスタン=ソウザ、3年」と「マルチーニョ神父、1年」が求刑された。
右側の記事;「保留されている名簿、ルオロとタウル、解決策がすでにある」。
国会での「政府計画」を巡る議論において野党は、第7次立憲政府(つまり現野党)が提出した「政府計画」と変わらないではないかと攻勢を強め、これにタウル=マタン=ルアク新首相が対応するという、本来あるべき姿に国会が戻りつつある一方で、シャナナ=グズマンAMP代表がヘソを曲げ続けているというのが現在の状況です。
フレテリンは過去のシャナナ連立政権で起こった汚職事件を前面に押し出すことでシャナナCNRT党首を刺激し、AMPに揺さぶりをかけていると思われます。汚職にかかわった人物をかばうことをタウル=マタン=ルアク首相はしにくいであろうから、そうなればタウル=マタン=ルアク首相とシャナナ=グズマンAMP代表は対立せざるを得ないというAMPの“弱点”を突いているのではないでしょうか。
待たれる国家予算の成立
わたしは26日、デリ(Dili、ディリ)市内の「抵抗博物館」を訪れ、ハマール館長に話をきいてみました。政府が国家予算を決められない状況が長く続いているので企画を立てることができず頭が痛いとハマール館長はお手上げのポーズをして見せました。この場合は文化活動の分野ですが、経済分野となると事態はより深刻です。具体的な経済振興策がとれない状況がかれこれ1年以上も続いているので首都の街を見渡しても、なんとなく活気が萎えているように感じられます。
「政府計画」が国会を通過すれば、いよいよ本年度(もう8月を迎えようとしているが)の予算提出・審議・採決そして発布ということになります。ともかく早くタウル=マタン=ルアク首相がそこまで事態を進展させ「政治的袋小路」を脱して欲しいと大半の国民は願っていることでしょう。政治ゲームはそのあとでゆっくりやってもいいのではないでしょうか。
新政府による「政府計画」の審議がされている国会。
2018年7月26日。ⒸAoyama Morito
~次号へ続く~
青山森人 e-mail: aoyamamorito@yahoo.com
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