よくもぬけぬけと、「公務員懲戒 免除を検討」だと! -政治の傲慢をまた見過ごすのか -
- 2018年 8月 9日
- 時代をみる
- アベ田畑光永
暴論珍説メモ
酷暑に加えて豪雨、台風に挟み撃ちされて、気の休まる暇のない日々が続くが、7日の朝刊(『毎日』)で「公務員懲戒 免除を検討」という記事を読んだ時には、怒りよりため息が先に立った。
それによれば、「複数の政府関係者」が明らかにしたそうなのだが、政府は来年の天皇退位・皇太子即位に合わせて、「国家公務員が過去に受けた懲戒処分の免除を行う検討を始めた」そうなのだ。
そんなことが出来るのかと驚いたが、「公務員等の懲戒免所等に関する法律」というのがあって、内閣が定める政令によって公務員の懲戒処分(免職、停職、減給、戒告)を免除することができ、過去にも1989年2月、昭和天皇の大葬の礼など「恩赦」が行われたおりに、合わせておこなわれた例があるという。
公務員への処分が免除されるとはどういうことか。減給処分を受けている最中に免除されれば、減給が停止されるが、期間が過ぎていれば減給分は返されない。そのほかの処分に対する免除は要するに履歴から消されるということらしい。
したがって、執行中の刑罰が減刑される恩赦とは性格がちがうようだ。なぜなら公務員が懲戒処分を受けるというのは、国家、国民に対する義務違反を犯したのであるから、それをなかったことにするのは、一般の犯罪に対する刑罰の減免とは意味がちがう。しかも、安倍内閣がそれを行うのは、われわれとしては断じて受け入れることはできない。
というのは、官僚の不祥事がこの内閣ではとりわけ多いからだ。防衛省のイラク駐留日報消失問題とか厚生労働省の裁量労働制をめぐるデータ改ざんとか、単純に当該公務員の利益とか都合とかによるのでなく、そこに何らかの内閣の政策意図とかかわりがありそうな不祥事が多い。
とりわけ重大なのは、言うまでもなく森友学園に対する国有地払い下げ問題にかかわる膨大な財務省文書の改ざんである。昨2017年2月から3月にかけて、当時の財務省理財局・佐川宣壽局長の主導のもとに本省と近畿財務局において数百頁にもわたる公文書の改ざんが行われた。まさに前代未聞の不祥事である。国税庁長官に昇格していた佐川氏はこの春、「懲戒」処分を受けて辞職したが、関わった官僚からは自殺者も出た。
つい最近の事件だから、詳細は省くが、事件の直接の責任を問われた麻生財務相は「行政文書を改ざんし、それを国会に提出することはあってはならないことで、はなはだ遺憾だ。・・・深くお詫び申し上げる」と一応、頭は下げたが、自身の辞任は拒み、「閣僚給与の12か月分の自主返納」をお詫びの証しとした。
最高責任者の安倍首相も「信なくば立たず、国民の信頼を得るために、行政のトップである私自身が、一つ一つの問題について、責任を持って必ず全容を解明し、うみを出し切っていく決意だ」とのべた。
しかし、こうした麻生、安倍両氏の発言に、国民は名状しがたい自嘲の気分で苦笑するしかなかった。「あってはならないこと」とか、「うみを出し切る」とか、あくまで官僚がとんでもないことをしでかしたのを、その上に立つものとしてきびしく糺すという両氏の態度には開いた口がふさがらなかったからだ。
官僚はしたくて改ざんしたのでもなければ、悪いことと思わずに改ざんしたのでもない。改ざんの目的は不明朗な土地の払い下げに安倍首相夫妻が関わっていた証拠を消すため、その一点だったことは、改ざんの内容から明らかだった。そんな分かり切ったことを、まるでなかったもののようにして、ことを公文書管理問題などというあたりさわりのないところにすり替えたのがつい今年の春であった。
こんなタネの見える手品のような手口でも国民を騙しおおせたと思っているから、安倍首相は来月の自民党総裁選に出馬して、さらに政権の座に居座ろうとしているのだ。そして自民党という政党はそんな総裁を引き続きトップに押し戴くのであろう。
この国を覆うそういうどんよりとした空気の中にいるからこそ、つい最近、悪人役を割り振った佐川氏をはじめ、政治の泥をかぶった官僚たちから懲戒という形だけの汚名をも取り除いてやろう、という政治の傲慢が頭をもたげる。それが「公務員の懲戒免除」にほかならない。
これもまたこともなく、なんでもない政治の所作として過ぎ去っていくのであろうか。
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